第26話 実力主義の最果ての村だからこそ、勇者が許せない

ハイエーナのキャンピングカーをぶっ飛ばしつつ、アタシ達はさらに語り合う。

第二層は先も言った通り休憩所、泊まれる所だ。

高級温泉にロイヤルホテル、普通のホテルにカプセルホテル。

ランクはどんどん落ちて行って、カプセルホテルに泊まるころには三日以内にダンジョンから追い出される。

そうなれば「またお金を稼いでお越しください」となる訳だ。



「第三層はどうしますの?」

「アンタ達には刺激が強いだろうが、娼館を置く予定だよ。あらゆる種族で娼婦をしている魔族はいるだろうからね」

「な、なるほど」

「娼館ですか……」

「男も女も快楽には弱い。そこで溺れちまう馬鹿もいるってことさ」



そう、色欲ともいえるこれは男女共に弱いものだろう。

人間の三大欲求でもあるからねぇ。

無論ただヤルだけの娼館は作らない。

人間だってお気に入りの娼婦や男娼とやりたいだろう。

その為には気に入られなくてはならない。



「そこでは宝石屋や、所謂娼婦や男娼に貢ぐための店を出すよ。金を払えば出来るシステムだが、気分良く抱かれたい、抱きたい奴はお気に入りの娼婦や男娼に貢ぐのさ」

「なる、ほど」

「そういうシステムは確かに……一理あります」

「お気に入りの誰かと寝たい人は特にでしょうね。体の相性のいい女性と寝る為にも気分よくスッキリしたい場合には特にそうでしょう」



流石アタシの曾孫、良く分かっている。

無論外に連れ出してデートするのも娼婦や男娼が了承すれば連れていける仕組みにはするし、その場合時間は3時間いくらで連れ出せるというものにもする。

娼婦や男娼を守るためのシステムだね。

無論彼らには身の危険が迫った場合瞬時に移動できる移動の腕輪をつけて貰う。

これは絶対だ。



「これが第三層。そこでもお金をドンドン落として貰う予定さ」

「では第四層は何になるんです?」

「第四層は鏡通路で今までの自分の行いを鑑みて貰う場所であり、ボス部屋だよ。ただ、鏡通路で精神をゴッソリ持っていきたいからね。自分にとって不都合なことがどんどん現れては消える、目を閉じていても脳裏に見える仕組みにする。部屋全体にカナデの持つ【発狂の始まり】に【降り注ぐ恐怖】に【消えゆく足元】を鏡に仕込んでもらう予定だよ」

「了解です。その状態でタリスの分身と戦うのは相当辛いでしょうね」

「まず勝てないね」



ヒヒヒと笑うアタシに四人は苦笑いと引き攣った笑みをこぼし、さらに言葉を続けた。



「そこから上は魔王領に住む者たちの居住エリアが広がり、一番上がアタシ達魔王の城が鎮座することになる」

「ダンジョンに居住エリアを作りますの?」

「そうだよ。無論ダンジョンで戦える奴が増えたら都度、ダンジョンボスを増やしていくから塔は上に伸びるだけさね」

「なるほど」

「転移門は作るから、魔王城に用のある同盟国はそこからくればいい」



と言っても、獣人国やドワーフ国、エルフ国くらいしかないだがね。

人間たちがお話合いをしたいと言い出した場合は、是非一階から頑張って上に来ていただくしかない。

そのことも伝えると、「ボス戦は辛いでしょうから、魔王城に向かう道中の道を用意して延々と精神的責め苦を味わう通路を用意しましょう」といい笑顔で言ってのけたカナデに「それもいいねぇ」とアタシも笑顔で頷いた。



「その都度ダンジョンは色々変わるだろうが、とりあえずはそんな所かね」

「はい! 案がございましてよ!」

「なんだい?」

「警備にあたるリザートマン達や、魔族にもコンビニとか欲しいですわ」



確かに詰所にいる魔族たちにも食べ物は必要だ。



「ふむ、値段据え置きの魔族専用のだね?」

「ええ。それに娼館や男娼はわかりますけれど、そこで働く者たちには給料はでますかしら?」

「出すに決まってるだろう。そこも含めた値段で冒険者から毟り取るんだから」

「安心しましたわ!」

「塔の中では魔族や魔物への攻撃はご法度、盗みもだよ。それをすれば塔から追い出されて二度と入ることは出来なくなるからね」



そういう安全面はしっかり冒険者に叩き込む必要がある。

数名はそれで嫌でも追い出される必要があるが、一応免罪符として金貨500枚納めた者は1度だけ再度入れるというのは用意する予定だ。

金貨500枚、用意できれば……だがね? ヒヒヒ。

まぁ冒険者なら一年以上ドルのダンジョンに籠れば手に入るだろうさ。



こうして会話をしながら気が付けば最果ての村近くに到着したアタシ達は、車から降りて歩いて向かう。

最果ての村は魔物の脅威があったようだが、アタシが来てからは魔物の脅威が半減したというのもあって、結構歓迎されているんだ。



「おや、キヌさんお帰り。旅は終わったのかい?」

「久しぶりだねぇ。ああ、夫にちゃんと忘れ物を届けに行けたよ」

「そりゃ良かった」



そういって語る村人たちに囲まれて会話をしていると、最果ての村とはいえ一応情報は入ってくるようで――。



「なんでも勇者を殺す程の実力を持つ何者かがいるらしいよ」

「そりゃ凄いねぇ……」

「勇者が殺されるだなんて……一体どうなっちまうんだろうねぇ」

「勇者が弱かったんじゃないのかい?」

「魔王を殺した勇者様だよ?」

「アタシも不思議に思ってたんだけどね。ここだけの話、勇者は不意打ちで魔王を殺したらしいんだ。実力じゃないらしい」

「本当かい!?」



これにはざわついた村人たちにアタシは神妙に頷き、その様子から事実だと知ると「勇者の風上にも置けねぇな!」と村人たちは憤慨した。

実力主義の村だからこそ、不意打ちの様な姑息な真似を許せないんだろうねぇ。

そういうアタシ達も、不意打ちで何度も冒険者を殺して経験値を得てきちまったがね?



「とりあえず長旅だったから、暫くはゆっくりと過ごさせて貰うよ」

「ああ、そうしなさい」

「そういえばアンタの家に住んでる獣人の子は優しいねぇ」

「フェルかい? 気立てのいい子なんだ。仲良くしてあげておくれよ」



こうして一見普通の家に見える家に入ると、中は拠点となっている為とても広い家となっている。

フェルもアタシ達が玄関から現れたことに驚いていたが、ここで休んだら夜中に魔王領へと向かう予定だ。

色々面倒ごとはあるだろうが、いざという時は力でねじ伏せるしかないだろうねぇ。



「さて、英気を養ってから一気に夜に魔王城へ向かうよ!」

「「「「はい!!」」」」



魔王城に着いたら、とりあえず最果ての村と入り口を繋いで出入り自由にしようかね。そっちの方が行ったり来たりしなくていいから便利だからねぇ。

そんな事を思いつつ、アタシ達は暫くの休息を取る事になったのだった――。




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