第25話 魔王領にダンジョンを作ってそこで生活しよう!

魔王領に戻るまでの間に、アタシ達は仮拠点で作りたいダンジョンを形にしていった。

七つの大罪を模した作りにするダンジョンの最初は暴食や強欲が最もと求められる。

簡単に言えば、金と運を使わねば次の上の階には上がれないシステム。

ドンドン冒険者には金を落として貰わないとねぇ?


ダンジョン専用の通行所を一人一回限りで発行し、そこにダンジョンで使ったお金や運、どの程度のどこに行ったかが分かるシステムにして置けばいい。

このシステムは冒険者ギルドや商業ギルドでも使っているシステムな為、魔王領でも使うことが可能らしい。

なぜ使えるのかというと、魔族や魔物にもそのタイプのプレートがあるのだとピアが教えてくれたので作れるのだ。


一階は受付を済ませてから入れるコンビニがドンと鎮座していればいい。

あの味を忘れられない冒険者たちは挙ってやってくるだろう。

ましてや魔王領に【ダンジョンが出来た】なんて高位冒険者にとっては行きたいと思える内容だろうし、勇者も国王から『魔王領に出来たダンジョンを攻略してこい』等と言わる筈だ。

ドンドンお金を落として行って貰わないとねぇ? ヒヒヒ。



「つまり、一階は受付をする場所があって、コンビニがあるだけではなく、酒屋もあって、えっと、荒くれ物の冒険者を鎮める為にリザードマン達の警備が至る所にあり」

「美味しい食べ物とカジノに、えーっと、ゲイセン? と言うものが出来るんですね」

「そういう事。無我夢中で遊べるものから色々とね。その為には魔族や魔物たちに協力は要請するが、まぁ、嫌だといっても命令させて貰うがね」

「曾婆様のいう事を聞けないという輩がいたら、俺と【お話合い】があるだけですよ」



恐らくカナデの持っている凶悪なスキル。

【発狂の始まり】に【降り注ぐ恐怖】に【消えゆく足元】を使うつもりだろう。

ヒヒヒ……。話の早い曾孫を持つのは最高だねぇ。



無論ダンジョン全体は、治安維持の為に機動の力のあるリザートマン達を使い、警備に当たらせる。

規約違反をした冒険者はカードを剥奪の上、二度とダンジョンには入ってこれない仕組みだ。理想郷にいたいなら、馬鹿な真似をしたいこと……と言うのが嫌でもわかるようになるだろうさ。



「まずはコツコツ第一層から作っていくかねぇ。な~に、牛丼屋やカレー屋はレトルトを大量に買っておくから、温めて掛けるだけさね。とってもラクチンだねぇ」

「俺と曾婆様がいればいくらでもだせますしね」

「金は掛るがね。売り上げの少しは材料を買うために貰うが、魔王がダンジョン経営ってのもまぁ悪くはない」

「寧ろ異世界転生の小説では多いですよ」



そういうカナデには悪いが、アタシにはよく分からない話だね。

そもそも【異世界転生】ってのがよくわかってない。だが【異世界転移】ってのはアタシ達の様なことを呼ぶんだろう? そういう話が多いといっても、「それがどうかしたのかい?」としかいえないね。



「アタシはその辺りよく知らないからねぇ。ただ、冒険者から金を毟り取って、堕落させてやりたいだけさね。多くの冒険者が他のダンジョンにも潜らず、金稼ぎの為だけのダンジョンや近くの金稼ぎ用のダンジョンで金を稼いでいたら、他のダンジョンはどうなる?」

「沢山の冒険者は魔王領のダンジョンにいて、国中にあるうま味の少ないダンジョンは放置されますよね……まさか!!」

「スタンピードが起きますわ!!」

「アタシはそれを狙ってるんだよ。元魔王の弔い合戦でもあるのさ」



不意打ちを使ってまで、平和条約を交わそうとしていたというのに元魔王を殺したという事は宣戦布告も良いところ。

現魔王のアタシは「弔い合戦」くらいしてやっても罰は当たらないだろう?



「でも一つ問題がありますわ。人間の振りをして町を歩いているときに聞きましてよ? 所属しているエリアで一定数の成果を上げないと、冒険者ギルドの名声とランクが落ちる筈ですもの」

「落としてやりゃいいのさ」

「な、るほど?」

「それに、最果ての村も活性化するだろうよ。魔王領に入る手前で一泊する輩もでるだろうからね。それに魔王領が近いだけあってうろついている魔物も強い。弱い冒険者はたどり着く前にお陀仏さ」



そういって珈琲を口にすると、アタシは頗る笑顔でほほ笑んだ。



「魔王領のダンジョンに行こうにも、周囲のモンスターが強いからある程度の稼げる冒険者くらいしか来れない。その上、たどり着くまでも敵が強いという事で二重の苦しみが冒険者を襲う訳ですね」

「その上で、お金がスッカラカンになった冒険者たちは戻って自慢するわけですか」

「理想郷は魔王領にあったと」

「それが筋書きだよ」



こうして理想郷に行きたくてレベルを上げて金を作ってやってくる冒険者を堕落させていき、金を毟り取って行き……気が付けばスタンピードが起こり始める。

そこまで持っていくのが大変だが、ロクデナシ勇者達や、勇者召喚をしてくれやがった国を痛めつける事は可能だろうさね。



「ダンジョンボスはどうなさいますの?」

「トリスかタイス、アンタ達もう一匹分裂できるかい? ダンジョンボスをして欲しいんだよ」

「我、刺激類は共有可能成り」

「我、刺激類も共有可能ですゆえ」

「ならどっちか分裂するなら?」

「ダンジョン出来たら分裂する成り」



どうやらタリスが分裂してくれるらしい。ダンジョンボスとして頑張って貰おう。



「さて、ボス問題は解決……ヒヒヒ。だがトッシュのように運がいい奴もいるかもしれないし、次の場所はすぐに作るが、宿屋は必要だろうから、第二層は宿屋を沢山用意しておくかね。その上で、温泉宿や銭湯と言った娯楽も用意してやろう。甘い夢をみて地獄を見な」



宿屋は高ランクは温泉宿。

次に高級ホテル。

次に普通のホテル。

最後にカプセルホテルだ。

カプセルホテルまで落ちた客は、三日以内にダンジョンから追い出される仕組みにしようかね。

どれだけの冒険者が堕落して怠惰になっていくのか楽しみだよ。ヒッヒッヒ。


人間の三大欲求は「睡眠欲」「性欲」「食欲」だ。

その三つを楽しめるところが第三層と言って過言ではない。

そこから抜け出せる奴がいるっていうなら見てみたいもんだね。





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