経験値は程よく溜まった。後は勇者狙いうちしつつ金稼ぎだねぇ!!
第20話 【期間限定の不可思議な店・キヌマート】①
近くでキャンピングカーを降りて車を消し、アタシ達はドルの町に入って行く。
活気ある町の様で、近くにダンジョンもある事から冒険者や住民の出入りも多いようだ。
「へぇ……活気のある町だね」
「そうですわね」
「ダンジョンによる効果がとても大きいんです。ドルダンジョンはモンスターも強いけど実入りがいいらしいので、Bランクからの冒険者が沢山います」
「俺は顔を隠しておける装備で良かったよ……勇者のポーターが此処にいたら目立つし」
「そういやそうだったねぇ。勇者は此処に来て経験値をつんだのかい?」
「そうだね、結構篭ってたと思う。篭り過ぎて国王から叱られるくらいには」
「何してたんだい此処で」
そう言うとカナデは、この町には娼館も多い事と、非合法のカジノがある事を教えてくれた。
なるほど、娼館に非合法のカジノ……そりゃ入り浸る訳だ。
「食べ物についてはそれなりに美味しかったと思いますけどね」
「ふーん? トッシュ、この辺りでドルの町くらいの金稼ぎに向いてるダンジョンってあるかい?」
「中々聞きませんね。此処で生活を根付かせる冒険者も多いと聞いてます」
「……カナデ。ここでコンビニ作ったらどうなる?」
「儲かるかと……まさか」
そう口にしたカナデにアタシはニヤリと微笑んだ。
「勇者たちが来るまでの間は、コンビニしないかい?」
「「「え!?」」」
「売る物は無論選ぶよ? 魔王領で街を作るにも金が必要でねぇ……。期間限定の店で出して見ないかい?」
「期間限定ならアリかと思いますが。ただ、そのままコンビニと呼んでいたら恐らく勇者たちにバレるので、名を変えましょう。【期間限定の不可思議な店・キヌマート】とか」
「不可思議な店ってのはいいねぇ」
そうと決まれば……その足で開いている土地か場所が無いか聞きに向かう。
商業ギルドに行くと魔王と言うのが分かっちまいそうで厄介だったが、物は試しだ。
そう思って歩いていると、丁度良く開いている土地を見つけた。
「ん、ここの一角どうしたんだろうね」
「そうですね、でもなんか焦げ臭いです」
「おっと、近寄っちゃいけないよ」
そう声を掛けてきたのは住民のようだ。
なんでも老夫婦が営んでいた錬金術工房が家事を起こし夫婦は亡くなったのだそうだ。
痛ましい事故だねぇ。
「それで、なんで近寄っちゃいけないんだい?」
「そういう事故が起きた土地ってのは借りたり買うのは安いんだが……何かしら悪い事が起きるとされているんだ」
「「「「へぇ……」」」」
「じゃあ、この物件を借りたいって商業ギルドに言えばどうなるかね?」
「喜んで貸すと思うが……事故物件だぞ?」
「構いやしないよ」
そもそもこっちは魔王だ。
たかだか幽霊だの亡霊だのなんだの、屁でもない。
その足で商業ギルドに向かい、火事のあった土地を期間限定で借りたい旨を伝え、無論少し多めに店舗代として土地代を渡すと、喜んで貸してくれた。
「では店はどんな風に作りましょうか?」
「ああ、それはいらないよ? アタシのレアスキルで何とかなるからね」
「レアスキル持ちでしたか! ではご自由にどうぞ!」
「ははは! 店の商品も珍しいから、何時でもおいでーな? 期間限定だけどねぇ?」
そう言って商業ギルドを後にすると、まだ焦げ臭い土地に拠点を作り上げる。
コンビニをイメージしながら最初に線の形で店が出来上がる。イメージ通りならそこにスキルボードを開いて『コンビニ』を選んでポチッと押すと、ドン! という音と共に真っ白などこにでもあるコンビニの登場だ。
前は全面ガラス張り。無論冒険者が突っ込もうが【拠点】なので壊せないし燃やせない。
自動ドアの中に入ると空調も十分。
後は売る物としては――誰よりもカナデが知っているだろう。
「カナデ。アンタがこの世界に来て食べたくて仕方なかった、飲みたくて仕方なかったモノをドンドン裏手で出して行きな。他の皆はそれを陳列する作業を手伝っておくれ」
「了解ですわ」
「分かりました」
「あと店員は同じ服を上に羽織る事。後で出しておくから着るんだよ」
そう言うと【ネットスーパー】から青の羽織を購入し、スライム以外の全員分を台に置いておく。アタシも裏手で色々出しているカナデの元に向かい陳列棚にドンドン売り物を並べていく。
値段はカナデがこの世界で見て知っての値段なのだろうが、少々お高いようだ。
レジは全部で3つ。中にある商品ならピッと光を当てれば金額が表示されるようになっている不思議なレジらしい。
一日係りで全てのアイテムを陳列し、夜になっては一旦店を閉め、中に拠点の入り口を作って仮拠点を用意し、疲れを癒して眠った次の日――。
早朝ご飯を食べてから朝9時に店に入ると、既に沢山の冒険者が「なんだなんだ」とつめかけている。
さてさて……異世界のコンビニがどれくらい通用するか見てみようかね?
オープン時間になると、ワザとらしく内側の鍵を見せつつ鍵穴なんてないが開けるふりをすると自動ドアが開く。
驚く冒険者は後ろに後ずさりしたが、可愛いピアとトッシュが「いらっしゃいませ」と笑顔で言えば男どもは気を良くして、それでもビビりながら入ってきた。
基本的に売るのは菓子類や食べ物系に飲み物系だ。
酒は無いが、食べれば病みつきだろう。
1人が思い切って買ったプリンに芋のフライのお菓子に皆の視線が集まる。
まずは店の外に出てプリンを一口食べたようだ。
途端大慌てで飲み込み「何だこれうめぇ!!!」と叫んでいる。
そうだろうねぇ……異世界の味は美味なんだよ、ヒヒヒ。
更に芋をフライしたお菓子を開けて中を食べている。それはもう無我夢中で。
それを見た冒険者たちはワッと店内に押しかけて来た。
両手に抱える御菓子類。
そこでアタシは拡声器を取り出し――。
「1人3つまで!! 各所にある籠に入れてない奴は売らないよ!! 会計して欲しかったら一列に並びな!!」
そう【一喝】のスキルを使って叫ぶと、冒険者たちは渋々従い、お菓子は3つまで、他も何故か3つまで購入していき、レジに並んでお金を払い出て行く。
陳列棚にはトリスとタリスが瞬時にアイテムを補充して行く為問題はない。
さてさて、この列何処まで続くかね?
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