第17話 曾孫息子カナデは、流石アタシの曾孫だね!!

慌てふためいている曾孫のカナデはいまだに事態が呑み込めていない様子。

耳を引っ張りながら「これでも現実だと分からないかい?」と聞くと、涙を溜めながら「分かった! 分かったから!!」と口にし、アタシはようやく手を離した。



「じゃあ、曾婆様は確かに【現魔王】なんだね……」

「何度もそう言ってんだろ! 馬鹿たれ! で、アンタの事情を聴こうかね? 勇者召喚に巻き込まれた迄は想定内だが、なんで奴隷の首輪なんてされてんのさ。阿保たれ」

「う……実は」



そう言うとカナデは今までの事語り出した。

同じクラスで親しくもない3人と同時に異世界転移させられたこと。

いち早くスキルボードを触った勇者――風間キョウスケにより、彼が勇者であることが判明すると――。



『俺奴隷って持ってみたかったんだよ! カナデ、お前今日から奴隷な!』



その一言でスキルボードを触れる事なく奴隷に落とされた事。

しかし、デバフが余りにも凄くて……余り志向が働かなかった事も語った。

ただ、目の前で繰り広げられるエッチなシーンなどは精神的に辛くもあったらしい。

そりゃ男だからねぇ……辛いだろうさ。そうアタシは思った。


その後もポーターとして仕事をしながら、時折ストレス発散に殴られたり蹴られたりもしたらしい。

痛く辛かったが、お陰で【痛み耐性】が着いたのだと語る。

そんなもの、なんでお前が……と思ったが、更に言葉は続き、魔王を倒す際、不意打ちで倒そうと言い出したのも風間らしい。

一対一では負けると思ったのと、魔族にしては人の良さそうと言うとアレだが、優しそうな人だと思ったからこそ、殺せると踏んだのだと聞かされ、ピアが泣き崩れた。



「俺はそんな奴らの言いなりで……なんて情けないっ!!」

「それで、今回のダンジョンへは何故?」

「魔王も倒したから俺達は元の世界に戻される筈だったんだ。だが、風間たちがそれを拒んで、王族たちも魔王を殺したのだからお前たちはいらないと応戦してきて……」

「酷いねぇ。自分たちに都合が悪くなったら戻すってかい?」

「半ば追い出される形で外に出されたんだ。金は自由に使っていいという了承を得てね」

「……へぇ?」



今、良い事を言わなかったかい?

『金は自由に使っていいという了承を得て』……いいねぇ、実に素晴らしい!!

これは早急に魔王城に戻るべきかね!? いや、まだ金が足りないね……。

それに、勇者にもまだまだ嫌がらせしてやりたいからね。カナデが受けた屈辱はしっかりと返させて貰わないと……。



「でも頭がスッキリしてくると怒りしか湧いてこないね……。俺は別に悪い事をした訳でもないのに奴隷に落とされて……許せない……殺してやる……」

「んふふ……。それでこそアタシの曾孫。安心おし、アンタのスキルもチェックするために一旦仮拠点に行くよ」

「仮拠点?」

「色々アンタは【こっち側】を今から勉強しな」



そう言うとアタシ達はハイエーナのキャンピングカーから出ると、車を消して太めの木を見つけると、そこに仮拠点を立てた。

無論あっちの元居たダンジョンの方の仮拠点は潰してこっちに移動させたのは言う迄も無い。あそこはもう必要ないからね。



「さ、アタシに続いて入りな」

「ちょっと曾婆ちゃん!!」

「はいはい、入って下さいね~」

「後ろつかえてますよー」



こうしてピアとトッシュに押されて木に突入するとそこは玄関で。

靴を履いたまま中を移動しながら向かうと、大きなダイニングの横にあるリビングのソファーに座り、アタシの隣にカナデが座った。



「さて、改めて自己紹介するよ。アタシの孫のカナデ」

「まぁ、本当に魔王様にソックリですのね」

「魔王?」

「ええ、キヌ様は現魔王様でしてよ。ひ孫様」

「嘘でしょ?」



驚くカナデにアタシはステータスボードを出して見せると、中を見てびっくりして固まっている。



「本当に……曾婆ちゃん魔王なんだ……」

「そういうアンタはどういうスキルボードなのか見せな」

「う、はい」

「うーん、曾孫様……カナデ君はなんていうか……キヌ様には頭が上がらない感じだね」

「言えてるわ」



そんな会話を他所にカナデのスキルを見させて貰うと――。



『カナデ:称号・魔王の曾孫』

【スキル弄り(敵のスキルを弄る事が出来る)】【拠点(レベルが上がると色々作れる+個数が増える】【ネットスーパー】【アイテムボックス】【鑑定】【覇気(バリアにも使える)】【一喝(相手をひれ伏せさせる)】【魔王の瞳(相手を恐怖に陥れる)】【悪魔の囁き(都合のいい言葉しか聞こえなくなる・魔王には効かない)】【広範囲マップ】【重火器10】【軽火器10】【攻撃魔法10】【生活魔法7】【料理スキル7】【危険察知10】【悪意察知10】【痛み耐性6】



「……カナデ、アンタ意外とエグイスキル持ってるんだね」

「そうだね……こうして自分のスキル見るのは初めてかも」

「これならアタシの跡も継げそうだ」

「曾婆ちゃんまだまだいけるでしょ」

「何言ったんだい、こちとら104歳だよ!」



人間なら寿命喰らってお陀仏だって言うのに何を言うんだか。

そう呆れていると――。



「キヌ様は人間でありながら魔王ですから、寿命は長いですわよ?」

「長いのかい!?」

「ええ、カナデ様も人間でありながら魔王様の血族。寿命は言わずもがなですわ。それに、獣人もフォルのように神格化したら長寿ですわ」

「だろうね……僕はとても神格化なんてできそうにないや」

「フォル様から祝福を頂いたら神格化出来ましてよ?」

「まだ経験値が欲しいから、神格化するのは不味いって」

「「「確かに」」」



そうアタシ達が頷き合っていると「経験値?」と聞いてきたのでそこらへんも教える事になった。魔王やその配下、そういうものになった以上、人間の冒険者こそが経験値となる敵であり、金蔓なのだと。

無論カナデは驚いていたが、「大手を振って勇者たちを殺せるよ?」と言えばとてもいい笑顔で「そっか!」と答えてくれた。



「今までの恨み、返せるんだね?」

「ああ、存分に返してやんな。利子付けてな?」

「ええ、利子をつけてタンマリと……」

「「ふふふふふ……」」



そうと決まれば装備やアクセサリーだ。

アタシはアイテムボックスから無造作にダンジョンから手に入れた装備と取り出しカナデに渡した。というのも、カナデの服がボロボロだったからだ。



「風呂に入って身ぎれいにして来な」

「ありがとう曾婆ちゃん」

「これからはキヌ様とお呼び」

「場面は合わせるよ」

「ヒヒヒ」



こうして、アタシは大事な曾孫を助ける事が出来たし、取り敢えずは安心する事が出来た。

カナデが風呂から上がればダンジョンで手に入れた白と青を基調とした上下のローブに靴は無いがアタシが用意しておいた俊足の運動靴を手渡した。

さて、アクセサリーは風呂に入ってる間に用は出来た。

スキルチェックの再チェックと行こうかね!

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