第15話 ダンジョンボスとの戦いと、捕らわれていた獣人女性

――敵はこの闘技場一杯にあるガーゴイルの像のどれか!

間違いない、アタシの勘は昔から外れた事がないんだ。

戦時中もあのエリアは火の雨が降るって感じて近寄らなかったら本当に火の雨が降る。

そんな経験を何度もしてきた!!

ゲラゲラ笑ってる豪快な男を見つめつつ、コイツ明日には死ぬなと思ったら本当に翌日死んでいるという事もザラにあった!!

――アタシの勘は当たる!!

104年生きて来てそれだけは確信している!!

お陰でギャンブルにのめり込んだがね、ヒヒヒ!!


トッシュの弾をダムダム弾に変え一気に狙い撃ちしていく。

ピアも真面目に沢山あるガーゴイルの像を打ち落としては壊して行く。

トリスもスリングショットを使ってドンドン倒して行くが、どれが当たりかは分からない。

数が多すぎる!!



「ッチ! 数が多いね!!」

「こ、この中からなんて無理ですわ!!」

「再生も早いです!!」

「こうなったらこれだよ!!」



そう言って手榴弾を手にピンを取って一気に数か所に投げ入れた途端大きな爆発音には吹き飛び壊れるガーゴイルの像。

それを只管、観客席に投げ続ける。



「わたくし達もしますわ!!」

「OK! 銃を出す感じで手榴弾出せるようにしたからドンドン投げな!!」

「こ、壊しちゃっていいんですかぁぁぁぁ!!」

「ど派手に壊しちまいなこんな所!!」

「ぎゃああああああ! 止めろおおお!! 俺に相応しいエリアが破壊されて行くうううう!!!」



ドッカンドッカン音を立てて爆風を発生させながら壊れていくガーゴイルの像と闘技場の観客席……最早再生すら追い付かず只管に爆発と爆風に晒され見るも無残な形へと変わって行く。数で押せばこっちの勝ちだ!



「あ――っはっはっは!! これだけど派手に壊せば本体にも当たるだろうさ!!」

「我! 我も暴れたい……暴れたいゆえ――!! エキサイティ――ング!!!」



そうトリスが叫ぶと巨大化して只管観客席やガーゴイルの像を【押し潰し】【叩き潰す】で最早収拾など着くはずがない!

トコトンまで壊しつくした次の瞬間【危険察知10】【悪意察知10】が反応し、その場に狙いを瞬時に会わせると『電動ガン』の引き金を引き、ダダダダッ!! と何かにぶつかっては『イギギギィ!!』と言う魔物のような声がする。

無論弾は貫通する普通の弾ではなくダムダム弾だ。

当たればそこが破裂する。



「アタシはね、敵だと思えば一切の容赦はしないんだよ!!」

『ヒギイイイイイ!!!』

「お前さんは生きている間に習わなかったのかい!? 教えられなかったのかねぇ!? 殺られる前に殺れってな!!」



最後にバズーカでロケット弾をぶち込むと静かになり……煙が落ち着くまで周囲に注意を払っていると、穴だらけのガーゴイルが息も絶え絶えに浮かんでいて――ゴトリッと地面に落ちた。

腹に大きな穴が開いてるのはバズーカでロケット弾をぶち込んだせいだろう。



「アタシ達の勝ちだね? まだやるってならもう一回コイツを味わうかい?」

『……ただ……者ではな……』

「当り前さね? アタシはこの世界の魔王、なんだからねぇ?」



そう言ってニヤリと笑うとガーゴイルは息を呑んで砂のように消えて行った。

だが、消えたガーゴイルからは溢れんばかりの金塊の山とアクセサリーが5つ。巻物が4枚出て来て、アタシはホクホクでアイテムボックスに投げ入れた。

残ったのはダンジョンコアだけかい?

そう思い大きめのダンジョンコアを手に取ると溶けて中からダンジョンコアのような宝石が輝く指輪が出てきた。

【鑑定】してみると『所有者・魔王キヌ:ダンジョンコアの卵』とあり、使い方は作りたいダンジョンを作れるという優れモノだったようだ。



「へぇ……面白そうだね」

「ダンジョンコアの卵ですの? でしたら早く外に出ないとダンジョンが崩れますわ!」

「そう言えばそうだったね! キャンピングカーを出すからそこから移動するよ!」

「「はい!!」」



そう言うとハイエーナのキャンピングカーを出し、地響きを起こすダンジョンの中でアタシは更に叫んだ。



「タリスはそのまま中の獣人連れて入ってきな!」

「我! 理解した成り!」

「トリス、手伝ってやんな!」

「我、了解したゆえ!」



こうして全員が乗ったのを確認し、扉にダンジョン傍の木に目印をつけていた仮拠点と繋げそこに移動すると、直ぐにキャンピングカーを消してドアを閉める。

その後揺れる仮拠点でトッシュとピアは震えあがっていたが、アタシはタリスの中から出てきた獣人の女性をソファーに寝かせ、ポーションをぶっかけた。

死んではいないが衰弱が酷いように思える。

3回程ポーションをぶっかけると、ピクリと指が動き、それでもまだ眠ったままだ。


ゆっくり拠点の外に出てみると、巨大な穴がぽっかりと開いていて、正にダンジョンが消えた跡だね。

誰かが来る前に全員出したいが……騒ぎが収まるまでは拠点の中だ。

外の声は聞こえるように設定を弄り、ザワザワと街の住人や冒険者たちが大騒ぎしている声を聴きながら、全員で獣人の女性を見つめた。



「コイツは狐の獣人かい?」

「狐の獣人ですね……尻尾が三つもある事から良い所のお嬢様か、力が強いのだと思います」

「だが、普通ダンジョンに獣人はいるものかね?」

「奴隷の首輪をしてますから恐らくポーターか何かだったんでしょう。何時からいたのかは知りませんが」



その言葉に奴隷の首輪が既に持ち主が死んでいるのか外せる状態になっているのに気づき、首輪を外してやると薄っすらと目を開けた。



「う……ここは……あれから……どれだけの年月が?」

「貴方が覚えている魔王の名をお呼びくださいませ」

「魔王様……トラディスタール魔王様だが……」

「トラディスタール……曽お爺様のお父様ですわ」

「アンタ、随分長く捕らわれてたんだね……。トラディスタール魔王から5代目になるかね? 現魔王のキヌだよ。よろしく」

「5代目!?」



そう言って起き上がった狐獣人の子は身体が光り輝くと尻尾が更に二つ増えた。

ほうほう、お狐様の強いバージョンじゃないのかい?



「凄く神格の高いお狐様なんですね……」

「とはいえ、私はずっと捕らわれていて長い時間を過ごして頂けに過ぎない……。神格と言っても……」

「で、奴隷になった経緯は?」



そうアタシが問い掛けると、狐の女性は次のように語り出した――。






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