色男

久石あまね

君には僕はふさわしくないよ

 高校生までは地味だった。


 しかし二階堂達也は大学生になると茶髪にし、服をオシャレにしたらモテだした。


 様々な女の子が達也のもとを訪れ愛情表現をした。


 さり気ない雑談を持ちかけてきて達也の本心を探ったり、香水を振りまき達也の性欲を掻き立てようとしたり、ボディタッチをして達也をその気にさせようとした。


 そして達也は味をしめたのか、女の子が近づいてくるとわざと関心のないふりをしてあくびをしたり、無表情で話したり素っ気なく振る舞った。


 そうすると女の子たちは目を伏せ悲しげな表現をしたり、逆に一層気丈に振る舞い明るくなったりするものもいた。


 一日に2回も別の女の子から告白されたこともあった。


 達也はその時、必ず、「君みたいな素敵な女性に僕はふさわしくないよ」と言うのだった。


 そう言うと女の子たちはより一層達也にアタックしてくるのだった。まるで自分こそが達也にふさわしいと言わんばかりに。


 そしていつの間にか、達也は一人の女の子と付き合うようになった。


 名前は麗奈。


 髪は黒髪ロングでウエストがきゅっと細い、そんな女の子だ。


 麗奈は美人だったが、ひとつと欠点があった。それは百ます計算ができないということだった。


 百ます計算ができないということは当然計算ができないので、買い物も不自由している。


 しかし麗奈は天才的に人の感情を理解する能力に長けていた。


 いや、人の考えていることを透視できた。


 麗奈と話していると自分の心が見透かされているようで、達也は混乱したが、次第に慣れてきて、麗奈と話すと心がリラックスして安心した。


 麗奈は達也にとってかけがえのないものパートナーになっていた。


 やがて達也は麗奈と結婚して子どもが出来た。


 今では仲良く、三人で暮らしている。


 しかし麗奈は人の考えていることを透視できるせいか、人の醜い感情にも気づいてしまい、生きづらいとよく言うようになった。


 麗奈はたしかに生きづらそうだが、達也はそんな麗奈に寄り添いながら、子どもを育てた。


 子どもはすくすくと育ち、やがて大人になった。


 達也と麗奈はおじいちゃんとおばあちゃんになった。


 ふたりは毎年伊勢神宮に参拝し、山の中で、ひっそりと農業をしながら暮らしている。


 「麗奈、かわいいよ。大好き」

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色男 久石あまね @amane11

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