第5話
エールは多分だが、俺のことを嫌いということはないと思う。話しかけてくれるんだし、最低でも口もききたくないってことはないんだろう。現状を確認するためにも答えずらいだろうが彼女には答えてもらうしかない。
「なあ、エール」
「え?何?」
彼女はとてもいやそうな顔をした。彼女のきつめの顔は少し怖い。クールというよりは氷のほうが正しいかもしれない。若干の恐怖を覚えたが、今の俺はエリオットだということを思い出して勇気を出した。
「俺って周りからどんな評価なの?」
俺は聞いた。さすがに彼女も答えずらいだろうと思ったのだが、一切のためらいもなく答えた。
「嫌われ者」
「あはは、冗談だろ?ちなみにどれくらい?」
「んー、法律がなかったら、顔に唾をかけるかな?」
「おー、教えてくれてありがとう」
彼女は手をフリフリするとまた本に戻った。そして俺はさっきの言葉を訂正しようと思う。エリオットだから自信を持てるのではなく、エリオットが足を引っ張っているということを。
おかしくないか?仮にも主要キャラだぜ?そうか、もしかしたらヒロインと関わることで俺の評価が変わっていく物語なのか?じゃないと、エリスと交流を持たなければならない?そしたら俺の生活は……。
俺がふとエリスのほうに目線を向けるとキャスが声をかけていた。これ伝説のキャスとエリスが出会うシーンなのか?
そうすると、まだこれは新一年生の五月あたりか?なんでこんなことを覚えているかって?そりゃ、記憶力がいいからな。公務員だし。
「がんばれ、キャス……」
俺はキャスを応援してしまった。しかし、後ろからヘンダーソンもヒロインのことを見ている。こ、これは波乱の予感。こんな近くでゲームを見れるなんて。役得だな。
そんなことを思っていると、本を閉じたエールが俺に話しかけてきた。
「だからさっきから何なの?もしかして、エリオットじゃない別人?」
彼女は少し茶化すように言った。一瞬ばれたかともったが、冗談だということはすぐに分かった。俺は冗談で返しておいた。事実なんだがな。
「別人って言ったらどうする?」
「その冗談、面白いと思ってる?まあ、なんも話さないときの君よりましだけどさ」
俺のとっておきの冗談はクスリともしてくれなかった。メリーだったら笑ってくれたのだろうか?そんなことを思ったら、早く学校が終わってほしいような気がした。
「キャス君はイケメンだよねー。でも、配慮が足りないよ」
そういう彼女の目線の先には悪女がいた。彼女は悪役令嬢のシャーロット。ゲーム内での俺の前に何回も立ちはだかって、何回もイケメンを奪ってきた。いつでもタイミングよく出てきて邪魔をするんだ。顔がかわいいだけにもったいないな。
「ヘンダーソンも見てるしな。あれは嫉妬だ」
この場合どうなるのだろうか?キャスと、ヘンダーソンの奪い合いなんて描写はなかった。俺が攻略するときは一人ずつだったし、彼らが奪い合いをするところなんてなかった。
「そうだね、キャスが女の子と話しているところを見て嫉妬してるね」
彼女はなぜか、うれしそうな眼をしてみていた。彼女の言葉の端々に違和感も覚える。少し嫌な予感がした。俺と同じものを感じたからだ。腐女子的な何か。この件については深く追求しないとこにしたが、隣の席だしいつか知ることになるんだろうな、そう思った。
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