第4話

「おい、見ろ。エリオットが女を連れてるぞ」

「嘘だけはつかないでくれよって、は?なんだよ、あれ」

「横の女の子可愛くね?」

「あれだよ、メリーさんじゃね?エリオットのところの子だったのか」


男どものうらやむ声が聞こえる。そりゃそうだろ。こんなかわいい子を連れているんだからな。彼女の希望通り、学校に入る前で分かれることになった。貴族と召使が一緒にいることは珍しいため、目立ってしまうらしい。俺からしたら自慢ができいていいのだが、彼女が嫌がるのなら仕方ない。


やはり、メリーとはクラスが違うようだ。このゲームのクラス分けは差別化が図られている。表向きは体育などの活性化らしいが、魔法や運動神経が優れたものが上のクラスに行く、そんな仕組みだ。


校門に着く直前で分かれることになった。メリーはスカートを少しなびかせて、俺の先を走っていった。


「じゃあ、行ってらっしゃい、メリー」

「頑張ってきます。エリオット様もです」


彼女は笑顔だけを残して去っていった。こうして俺は一人ぼっちになってしまったわけだ。あと、うすうす気づいていたわけだが、どうやらエリオットは嫌われているらしい。メインキャラが嫌われてるってどういうことだよ。普通はモテモテとか、そんなんじゃないのか?


気づいた理由は一つ。誰も俺に近づこうとしない。というか、異端を見るような眼をしている。ため息と同時に思わず、声を漏らす。


「攻略しとけばよかったぁぁぁあ」


しまった。俺をつぶやきを聞いたみんなはさっきよりも1メートル離れた。相当な嫌われ者だな。怖い顔してるしな、俺《エリオット》。誰にも声をかけられずにそのままクラスに着いた。


そこには見知った顔がたくさんいた。俺が勝手に見知っているだけなんだが。ていうか俺のクラスの顔面偏差値バグりすぎてないか?ゲームってブサイクを作るほうが難しいんだってな。だからなのか。


俺がこの世界に来たせいなのか、設定が変わっている。一緒のクラスじゃなかったアズのメインキャラが同じクラスになっているのだ。


第一王子のキャス。公爵の一人息子のヘンダーソン。残りの二人は同じクラスではないらしい。彼たちには親近感がある。だって攻略したのだから。彼たちのあんな姿や、こんな姿を知っているわけだ。俺はさっきまでヒロインだったんだからな。


そんなことを思いながら、自分の名前が書かれた席に着く。冷静に周りを眺めてみる。


キャスたちは人気者のようだ。様々な女の子に囲まれている。そうだった。でも彼たちはヒロインの俺のことを見つけて、舞踏会に誘ってくれたりしたんだよな。懐かしいな。


「……イケメン過ぎんだろ、キャスにヘンダーソン」


思わず独り言を漏らしてしまった。慌てて周りを見渡すが、ほとんどの人が他の席に移動していたらしく聞いていなかったのだが、一人だけ聞いていたらしく。赤い髪の眼鏡をかけた女の子がこっちを見ていた。それもあり得ないものを見る顔で。


「違うんだ、これは……」

「いや、いいと思うよ。私はそういうのいいと思う」


彼女はすぐに俺から目をそらして、すぐに本のほうに目を落とした。ボブの髪を耳にかけて、可憐な姿で本を読む。文学少女といえばいいのだろうか?その言葉が似合うそんな雰囲気をまとっている。


名前はエールというらしい。ゲームでは一切出てこなかった女の子だ。事前情報なしということは初対面ということになる。エリオットが彼女と以前から話していたのかということもわからない今、下手に手を出せない。それに俺は嫌われているらしいし。


そんな隣の女の子のことも気になるけど、一番の懸念点はエリスがいることだ。エリスというのはこのゲームの主人公。いわゆる、ヒロインである。関わったらろくなことが起きない。


「エリス……」

「いや、女の子はさすがにやめといたほうがいいとおもうよ」


こぼれていた声をてきかくにツッコミを入れたエールのほうを見たが彼女はツッコむだけツッコんで、また本に戻っていた。


◆◆

星が欲しいです。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る