第3話
「エリオット様、登校の時間になります」
俺が部屋の以上に広いベッドで二度寝をかまそうかとしていたところにメリーが呼びに来る。彼女は学生服を身にまとっている。この制服はヒロインたちが通っている学校のもである。
エリオットはヒロインと同じ学校に通っていたのか?名前を聞かなかったから違う学校なのかと勝手に思っていた。
「エリオット様、いつも通り出発いたしますので」
メリーはそういって当然のように俺の部屋から出ていこうとした。待て待て。
「一緒に行かないのか?」
「え、え!?私とですか?」
彼女は丸い目を大きく見開いて少しだけ後ずさりする。あれだな。上司と一緒に行動するようなものか。俺も嫌だったわ。そんなことを思い出して即座に撤回する。これはパワハラだもんな。
「すまない。嫌だったよな」
「すみません。嫌なんてことはないんです。ただ、私なんて横にいたらエリオット様の評価に関わるかと」
そういって、彼女は遠慮した。身分はやっぱりしっかりしているんだな。ヒロインは平民ということで周りの奴にいじめられるという設定がある。しかし俺が住んでいた日本にはそんな文化はないし、一番の理由は俺、男なんだよな。
「こんなかわいい女の子を横に連れてたら恨みを買うからって心配してくれてるの?」
「きゃわ!?…そういうことでは決して」
「じゃあ、いいじゃん。俺はメリーと一緒に行きたいな」
彼女は俺の言葉に渋々うなずいた。可愛い女の子と登校できるとか、もう俺の前世の幸福の半分は超えただろ。そもそもエリオットは同い年のメイドがいてなんで一緒に登校しなかったんだ?
素朴な疑問が頭をよぎったが、もっと大事なことを思い出した。学校がどこかもわからないじゃん。それこそ、メリーと行かなければ。俺が学校用のカバンらしきものを探していると、メリーは俺の部屋を勢いよく飛び出た。
「少しだけ、そこで持っていてもらえますか?すぐ帰ってきます」
俺はしっかりと乙女ゲームで見慣れたバックを身に着けて、メリーの帰りを待っていると勢いよく、俺の部屋のドアを開けた。
「……お、お待たせしました」
彼女は先ほどのショートカットの髪を後ろでくくって、かわいらしいヘアピンをつけてきた。彼女は何も言わず、俺の後ろに回って俺が先に行くのを待っていた。眺めのスカートのすそを強く握りしめて。
緊張しているのだろうか?まあ、上司との登校だからなあ。なんか緊張を緩和できるものはないだろうか?俺はなけなしの俺の女の子をほめる言葉をひねり出したが、そんなものなかったので、ただ思ったことを口にした。
「あの、その、可愛いね。それ」
「えへへっ、ありがとうございます」
彼女はくしゃりと笑う。その句機関のまま数秒がたった。一向に前に進まない俺に疑問を持っているのだろう。やばいって。俺はメリーを見つめているだけで何も言うことはできない。
「ど、どうかしました?」
「一緒に登校するって、横で歩くことじゃないのかい?」
「いいんですか?それはエリオット様が、勘違いされ……」
彼女は俺が言った言葉通り、横に並んだ。俺の部屋のドアを閉めると、俺の顔を見ずに彼女は卒業式の時のように行進のようにして歩き始めた。
「さっきなんか言おうとしてたけど、大丈夫?」
「な、何でもないです」
そういって笑った。ふと思ったんだが、もう一回勉強しなきゃいけないのか?もしや、もう一度大学受験も?いや、ないよな。俺は設定上、騎士だしな。
一方、そんな光景を見ていた年配メイドの会話。
「いま、うちのメリーとご主人様が並んで歩いていたのが見えた気がしたんですけど?」
「そんなわけないじゃない。あの人は貴族の中でも身分にはうるさいんだから」
「そうかしらねぇ……」
「そんなことより、庭の掃除をしてきてください」
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