第8話

愛玲奈は絶対居なかった。

昨日の夜は。

なのに、なんで。なんで。

朝。

学校に行く途中、ひとりで考え続けた。

自分と一緒に登校した(?)子は誰だったのか。それともそんな人は最初から存在していなかったか。

事故にあった現場を通り過ぎた時、謎の感覚に包まれた。

事故現場に誰かいた気がする。

それも声まで聞こえた気がする。

「••生き・・よ・・・ね」

でも、振り向いても誰もいなかった。

そもそも今日は早く寮を出たものだから、人気なんてほとんどない。

幻聴。不思議な幻聴。

きっと、亡くなった子の声。

みんなの記憶から消えた子の声。

学校についてからも、授業中も、落ち着かなかった。

わからない、ということがモヤモヤしてる。

下校中、部活の後輩と下校している時だった。

事故現場の前を通った時、私は石か何かに躓いて転けた。

その瞬間だった。声が聞こえた気がした。

「…を連れ戻して-」

転けたとき、後輩にめちゃくちゃ心配された。

「大丈夫ですか⁉︎」

「…大丈夫。ごめんね…」

「いいえ!全然…」

私は急いで立ち上がって、後輩に微笑んだ。

「…そういえばここって先輩が事故にあったところですよね?」

「…そうだね。」

「私、ニュースで事故のこと細かく聞いたんですけど、記事には2人の被害者って書いてあったんですけど、もう1人の先輩が誰かわからなくて…」

「そう。私も誰と歩いてたかわからない。」

後輩は驚いた顔でこちらを見てきたが、気をきかせて別の話題を話してくれた。

そして、この日の夜、同じ部屋の寺田さんが亡くなった。

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