第11章「小鳥作戦」

ペットショップです。


私はそこでつがいの十姉妹(ジュウシマツ)を買いました。

子だくさんで有名なこの小鳥を以前から飼うことを決めていました。


「病室にペットを持ち込んでも大丈夫ですか?」


ペットショップの店長が心配そうな顔で私に尋ねました。


「個室なので大丈夫です。怒られたら家族に持って帰ってもらいます」


病院でペットを飼うことは常識はずれだと思いますが、入院時禁止項目にも「ペット持ち込み不可」がありません。


何より「亡霊が出る。何とかしてくれ」と言っているにも関わらず、何の対策も取ってくれない病院に対しての敵対心もあります。


あと三日の辛抱です。


寂しい個室に生き物がいるだけで、勇気づけられ心が癒されるはずです。


餌と鳥かごを購入し店長に個室まで持ってもらうことにしました。

人の多い受付前を通ることはできません。私たちは誰もいない病院裏の従業員口を通り抜け、エレベータに乗り個室に持ち込むことが出来ました。


店長が帰った後、若い看護婦が昼食と薬を持ってきました。


十姉妹を見つけると「あっ!」と声を出し急いで婦長を呼びに行きました。


「病院内で飼うことは不衛生なので止めてください!」


婦長に怒られましたがそれも想定の範囲内です。


「ではすぐに大部屋か他の個室に移してください」と、私は条件を出しました。


「この病院に亡霊が出る、と他の患者さんに言いふらしますよ。たった三日間だけです。お願いします」


私が真剣な顔で言うと、婦長はブツブツ文句を言いながら部屋から出て行きました。


小鳥たちは窓際でチュンチュンと鳴いています。


私は目の下に小さな黒い点がある方をピーちゃん、ない方をパーちゃんと名付けました。どちらがオスかメスかはわかりません。


仲が悪いのか鳥かごの中で激しく暴れていましたが、やがて暗くなり就寝の電灯と蛍光灯スタンドを消すと静かになりました。


そして深夜の二時になりました。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る