学生トーク「色編」

山田 武

学生トーク「色編」



「──色、についてどう思う?」


「……なんか最近で、一番まともな質問が来たな。逆に怖いぞ」


 いつものノリで聞かれた内容。

 だが最近、妙に手の込んだ質問が来ていたので驚いてしまう。


「ちなみに俺は黒色について語りたい」


「……いや、だからいろいろおかしいって。嗚呼、だからか」


「だからって、何がだ?」


「いや、何でもない」


 よく分からんが黒について語ることそのものが、これまでの首を傾げる質問の内容と釣り合うレベルのおかしい話題へと繋がっていくのだろう。


 色、という話題だけで済んでいたなら、それこそ存在するありとあらゆる色についてスマホで調べて話すだけで休み時間を一気に吹き飛ばすことができただろうに。


「……いや、黒色だけでも結構な種類と名称があるはず──」


「おいおいおい、なんかそれはダメな気がするから止めろ! もっとこう、黒色……というか黒っぽいものを連想できるような話題にしようぜ!」


「なんでだよ…………ハァ、まあいいや」


 あとで何か奢ってもらうのは確定として、言われた通りの内容で考えてみよう。


「黒ねぇ……黒い物を集めてた、とかそういう感じか?」


「なんか普通」


「…………」


「わ、悪かったって。ほら、それだと黒歴史じゃない……っとと」


「黒歴史がいいのかよ……色関係、いったいどこに行ったんだ?」


 どうやら今回の話題は、色だけじゃなく黒歴史まで連想させているようだ。

 ……普段の倍以上考えなきゃいけないし、やっぱり報酬は多めに貰っておこう。


「と言っても、やっぱりあんまり思いつかないな」


「……マジかぁ」


「ああ、精々──子供の頃に張り切って、黒いマントを買ったぐらいしかな」


「それぇえええええ!」


「えっ、こんなんでいいの!?」


 まあそりゃたしかに修学旅行で、しかも某巨大テーマパークで買った物だけど、それぐらいは学生として木刀を買うのと何ら変わらない気がするんだがな?


「ち、ちなみにそれ、今も使ってる?」


「んなわけないだろう」


「だ、だよな……もう捨てて──」


「デザインは気に入ってるし、大切に仕舞ってあるよ」


「最ッ高!」


 とりあえずムカついたので、奢らせる物は質・量ともに最上級にしておこう。

 ……それでも笑みを保つ友人に、おまけの一発ケリをくれてやるのだった。


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