第41話 あの忌まわしき・・・

●エルンスト伯爵領  ベ二ス法国との国境付近の村



「ゼロス殿手始めにこの村の井戸から始めるか」


住民たちは今から起こるであろう事態に恐怖して各々家に籠って様子を伺っている


「お前達・・・やれ」


村に2つある内の1つの井戸に革袋に入っていた真っ黒な液体が流し込まれる、住民たちは不安と絶望に震えながらも逆らう事が出来ずただ沈黙するのみ・・・そんな中、村の村長らしき老夫婦がオルンとゼロスの前に平伏する


「恐れながら・・・村の井戸の水を汚されては・・・河まで水を汲みに行かねばなりませぬ・・・どうかお慈悲を・・」


オルンは老夫婦が自分に意見してきたことを許せないのか今にも魔法で消し飛ばしそうなのをゼロスが手で制す


「おい・・老豚・・貴様ぁ我等をエルンスト伯とローファット伯と知っての無礼か?」


「!?め、滅相も御座いません・・・ただこのままだと・・年老いた者が河に水汲みに行くのが・・」


ゼロスは不敵に笑う


「心配はいらぬ、この村に来る前に既に河の源流にも毒の入った袋を放り込んでおいた、これで水汲みの手間は省けたな」


「!?そ、そんなぁ~では我等はどうやって喉の渇きを!!」


「雨水を貯めればよかろう?」


「い、いまは乾季で雨など殆ど・・何卒お許しをぉぉぉ伯爵様」


オルンの馬に縋りつく村長を冷たい目で見て居たオルンは馬の手綱を少し引く・・すると馬は手綱に反応し縋りついてる老人を振りほどいた


「水が欲しいとな?良かろうくれてやろう」


【ウオーター ブレード】


オルンの手から打ち出された水魔法は縦に細長い文字通り刃の様な形状になり老人に命中する


「あ、貴方ぁぁぁ」


夫を心配する老婆は夫の腕を取ると・・・・【パタン】夫は真っ二つに割れ血を拭きだしながら絶命した


「いやぁぁぁぁ貴方ぁぁ」


【ウオーター ハーケン】


今度は横に細長い鎌の様な形状をした水の魔法が老婆の首付近に命中し後ろの家の壁にも命中する・・・


命中した奥の家は横に切れ目が入りそのまま静かに横にズレると中で様子を見て居た夫婦と子供2名の胴体と一緒に地面に崩れ落ちる


老婆の首も切れ落ち、胴体から噴水の様に鮮血が飛び散る


「ほうこれが、中級の水魔法 【水迅】(すいじん)ですか・・初めて見ます」


「おおお、そうかゼロス殿の雷光には及ぶはずもないが水系の中級【水迅】は中々使えるぞ?ハハハハ」


「確か水系の中級にはレアな【氷踊】(ひょうぶ)という魔法をあると聞きました」


ゼロスが水迅の事ではなく氷踊の事を持ち出して、オルンは少し不機嫌になっていた


「ああ、確かに上級の【水星】(すいせい)までは強くないが其れに迫る威力が有るらしいな・・確かシェーンブルン子爵の所の首狩り姉妹の妹のほうが使うと聞いたが?」


「首狩り姉妹ですか・・・確か二人とも派生の中級レア魔法を使うと聞きました」


「ああ、【氷踊】に【溶岩】(ようがん)だったか?確か二人ともヱンチャッター(付与魔術)も使えるらしいぞ」


「それは・・あまりお目に掛かりたくはないですね・・・・」



オルンとゼロスは自分達の軍が使う水だけ確保すると、容赦無く残りの井戸にも毒を投入した


「さてグズグズしておれん、あと2ヵ所も村を回るのだからな」


「はい、早速まいりましょう」


ゼロス達はベニス法国の陽動部隊が通過するであろう予想進路に位置する村のすべての井戸に毒と仕込み河川の上流にも毒を仕込んだ・・毒が有効なのはせいぜい2、3日程度それ以降は薄まってしまい致死性は失われてしまう


ここで、陽動部隊の進軍をより確実にする為にゼロスとオルンは次なる戦術に移る





〇獣人の森  入口



「二人神様、精霊王様、この度は村人を救って頂き有難う御座います、また精霊王様より賜った神具・・・有難く使わせて頂きます」


「うむ、己らも我の為に働いて貰う時が来るやも知れぬ、それまで自己研鑽を絶やす事の無いように」


「「「「御意!!」」」


「ふふふ、すっかり主様の臣下ですねぇ・・・ダキ・・嬉しいです」


「なぁぁっ!ダキぃぃオイラが今日はロン様の膝の上だどぉぉ!!」


二人は大人の女モードでは無く何時もの幼子モードだ・・最初にこの姿を見た獣族の連中は目を丸くしていたが、二人の神格は姿が変化しても変わらないので、直ぐに納得して受け入れていた


取り合えずあの氷の鎌を使う貴族・・・アルシアだっけか?この間の男爵夫婦とは段違いの強さだ・・油断はするなよ」


「は・・い・・・主様はダキがお守りしま・・・す」


「オイラもロン様を守るだぉ―!」



・・・・・・・・・・・


・・・・・・


「なぁミホーク・・・お前の眷属は・・・ちょっとな・・・」


「???ロン様?何か問題でもぉ?」


馬車の後ろのホロの中でダキとミホークを抱きしめ横になっていたが、どうにも馬車を操縦するミホークの眷属が気になって集中出来ない


「そんなぁ~ダキは我慢できません・・・主様ぁぁぁ」


前にオリハが眷属のホムンクルスを召喚して馬車を操縦させて・・・後ろで愛でていたと言う話をついしてしまい


「!?そんなんならオイラも眷属召喚できるどぉ!ロン様任せてだどぉぉ」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・


確かに人型の眷属だが・・・


「ミホーク・・・これはどっから見ても案山子(かかし)だぞ?」


「え?案山子じゃだめですかぁ?」


「・・・・ダメだな・・・」


「うううう・・・それじゃ・・・ロン様に抱いて貰うのは・・お預け?」


「嫌イヤイヤぁぁダキは我慢できません!!」


・・・・・・・・・・・・


という訳で、案山子は引っ込めてダキとミホークが交代で馬車を操縦する事になった、その間後ろでもう一人と・・・まぁ声はダキの風で遮断してるのでホロの外には漏れないから安心だ


・・・・・・・・・


二人と激しい戦いを乗り越えようやく街に到着する


「ロン様・・街に着いたどぉぉどうやって中に入るんだぁぁ?」


「ダキ、幻惑の風を・・・」


「御意、【幻香】(げんこう)」


ダキの翳した手から甘い匂いのする風が2名の門番に纏わりつくと、眼が虚ろになる


「いつもご苦労様です騎士様」


「んんん?何だぁ?ああお前かぁ・・・今度またいい酒俺に流せよ?」


「ぎゃはは、俺は女だぁあ、次来るときは絶対だぞ」


門番の騎士は誰かと勘違いしてしゃべりかける、ダキの幻で都合の良い人物の姿に見えてるのだろう


「はい、次は是非に・・では失礼します」


俺はそう言うと門を通過し、街を通り北の門へと到着する


「!?・・・」


「?どうかしたぁ?ロン様・・先に行かないんだお?」


「主様・・・何か気に・・なる事でも?」


この感覚・・・忘れもしない・・・ローファット領内の教会で13歳のあの日に感じた・・・








「ゼレニスが降臨してる気配だ・・・」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る