第40話 法国迎撃作戦


〇獣族の森  中央広場 祭壇


「精霊王様、貴重な力の一端を我らなぞにお見せ下さり誠に有難う御座います」


族長のペペの後ろに控えるルルとダダも同じく平伏する、俺はダキに膝枕してもらいミホークに腕をマッサージしてもらっていた


「いや、この森の獣族の勇姿につい胸が熱くなってな、それより族長、エキシビジョンで俺と戦ってくれた二人に俺から贈り物をしたいんだが?」


「!?主様!!!なりません、我等、守護聖でもロン様より下賜されるといのは特別な事、いくら我が眷属とはいえその様な恐れ多い事は」


俺の言葉に驚きながら答えるダキの耳元を優しくくすぐる


「ダキよ、俺は今を必死に生きる者と、それをあたかも自分達の権利の様に奪うもの・・そんなゼレニスの作り出した歪んだ世界を目の当たりにしてきた」


俺の言葉に驚いているペペと後ろに控えるルルとダダを見て続ける


「我は精霊王にして、この世界の反逆者である、

我がそなた等に下賜するのは、この世界の理不尽に抗う為の牙だ」


俺は髪の毛を2本抜き手に握ると木の小精霊を呼び寄せる


【息吹】(いぶき)


俺の手の中の髪の毛から木の枝が生え複雑に絡み合い、一振りの大木剣と両刃の木斧に変わる


俺はミホークに向かって目で合図するとミホークは跪き俺から大木剣と大木斧を受け取りルルに剣とダダに斧をそれぞれ授ける


キョトンとして目の前の木剣を見つめるルルに俺は近くの木を指さし


「あの木へ打ち込んでみよ」


そう伝えると木剣を手に立ち上がり「うぉぉおおお」言われるがまま大木に木剣を打ち込むと


ミシミシッ


凄まじい切れ味で切りかかった大木どころかその奥にある数本の木も一緒に切り倒していた、ダダもその様子に驚き俺の方をみるので、頷いて答えると嬉しそうに木斧を頭上でクルクル回しながら、ルルの隣の大木へ切り掛かる


ミシミシッ


縦に振り下ろしたダダの打ち込みは、木は綺麗に真ん中から真っ二つに割きルルの時と同様に奥にある木々も真っ二つに切飛ぶ


ルルとダダはお互いに顔を見合わせて驚愕する


「・・・なんという・・・切れ味・・・とても木で出来てる物とは思えない・・・」


「これは神具だぁぁ!!精霊王様よりつかわされた神の武器だぁぁぁ!」


ペペは集落の住民に向き直ると大声で叫ぶ、ルルとダダが俺の寝ころぶ祭壇に駆け寄り武器を置いて平伏する


「このうな神々しい武器を賜りなんとお礼を言えば、子々孫々未来永劫この村に言い伝えます!!」


「武器をそなた等に託したのは、そなたらが自分達の尊厳を踏みにじられそうになった時に抗う為の牙と成す為だ、その牙で見事自分達の誇りを尊厳を家族を友人を守り通して見よ」


「「「「ははぁぁ」」」」


俺の言葉に獣族の一同が平伏する・・・これも俺の復讐の一端だ、搾取する者達よお前達の喉元に突き立てる牙は着実に増えてるぞ・・・クククク





●ローファット伯爵領とエルンスト伯爵領  境界付近


「ゼロス様、エルンスト伯爵様が出迎えにお見えです」


部下の騎士がゼロスの馬の横に付け連絡をよこす


「うむ、斥候にお出迎え感謝するとお伝えせよ」


「はっ!!」


ゼロスの言葉を聞いて馬を駆り先行する斥候に伝令を飛ばす


エルンスト伯爵領に入った所にテントが設けられていてエルンスト伯爵の部下の騎士がゼロスと案内する


「おおおお、ローファット伯爵よく来てくれた、この度は我が救援要請に答えてくれ感謝するぞ!!」


「エルンスト伯の御父上と我が父ラウンドは旧知の間柄と聞きます、エルンスト伯が困っておられるのに知らぬ顔は出来ませぬ」


・オルン フォン エルンスト伯爵 齢34歳の時に急死した父親に変わり領内の治世を取り仕切る


背は高いが痩せており、頬もコケて目元も窪んでいる目は細く、開いてるのか閉じてるのか分からない、髪の毛は青みがかった黒髪で白髪も混じってる、法国の陽動部隊の動向に気の休まらない日々なののだろう


「ふふ、お互いの親が親密な間柄であるのに我等が他所他所しいのも可笑しな話だ、ここはお互いファーストネームで呼び合おうではないか、ゼロス殿」


「おお、これは願っても無い、此方こそよろしくお願い致します オルン殿」


年齢的にオルンの方が年上なのもあり自然と敬語はゼロス、ラフな話し方がオルンという雰囲気で落ち着いた


「では早速作戦を説明します」


・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・


「なるほど、領内の村々と河川に毒をな・・・まぁ下民が幾らか死ぬのは構わないが税収が減るのと我が領内の河川は上流・・下流の別の領内・・・特にヴォルディク侯爵様の領内へも繋がっているが?」


「それには及びません、その策は元帥閣下と軍務尚書閣下の発案です、ですのでヴォルディク侯爵様は1年間のエルンスト伯への税金免除を皇太子様に取り付けておいでです、また河川の汚染による他の領への補填も法国より切り取った領地を充てる事を考えておられるようです」


「なるほど、流石、元帥と軍務尚書と言った所か・・・で、領内深くに誘い込んだ法国へ対する貴公の戦術は?」



「それは・・・・・・・・・・・・・・・」


・・・・・・・・・・・・・


「なるほど・・かなり危険を伴うな…それに作戦が相手にバレないとも限らない・・どうする?」


「作戦に参加するのは、我等と両家お抱え騎士達の少数精鋭を考えてます特に忠義の厚い連中にだけ今回の作戦を伝えて、他の者や従者達には嘘の情報を2通り流します」


「??、何故2通り流すのだ?」


「そうですね、もし法国側がこの2通りの嘘の作戦を耳にすれば、こう思うはずです「どっちが正解だ?」と・・・つまり何れかに正解が有ると思い込みます」


「ふむ・・・確かにそういう心理かもしれんな・・・」


「そして、双方の作戦に対処する為、部隊の編制を二つに割るはずです、となれば当然人数は半減、相手は此方の数十倍の戦力です少しでも戦力は削ぐべきでしょう」


「なるほど、確かに2通りの噂が流れればどっちかが真実と思うか・・最初から2つとも嘘だとは思わないな・・・ゼロス殿は類稀な魔術の才能だけでなく知略においてもオイゲン皇淑に勝るとも劣らない秀才だな」


「そんな・・・我が知略など軍務尚書様の足元にも及びません」


「謙遜するな・・なるほどそれで他の家からの応援を断った訳か」


ゼロスは黙って頷く・・・真意は別にあるのだが・・


「ところでオルン殿は第3王女の事ご存知ですか?」


「ん?第3王女といえば・・・フレデリカ王女だな・・確かもう5年近く城の東塔に籠って出てこないと聞く、上流貴族の中では籠り姫とか呼ばれてるらしいな」


「そのフレデリカ王女の魔法については?」


「いや?確か顕現式も行って無いと聞く、皇宮付けの神官による魔術判定では上級の闇魔法が診断されたとか聞くが・・・実際に顕現式でゼレニス様より賜らないと・・なんとも」


「なんだ?ゼロスはフレデリカ王女に興味があるのか?誰も顔を見た事もないと聞くぞ?一部ではもう亡くなっているのでは?と噂されてるしな」


「いえ・・・実家でお名前を拝聴して少し興味がありましたので・・・お忘れ下さい」


オルンは頭を下げる俺に向かってニヤリと笑うと【パンパン】と手を叩いた、テントの垂れ幕から現れたのは数名の裸の女だった


「近くの村で集めて来た若いメス豚だ、ゼロス殿の行軍を少しでも労わせてもらおう」


女共は皆が絶望した様に俯き震えてる・・・


「それは有難です、ここはオルン殿の好意に甘えさせて頂くとします」


ゼロスはオルンに明日の作戦を告げると、事前に設営させてたテントに戻りオルンからの好意を心行くまで堪能した


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