第34話 牙を剥く時
〇ベストパーレ男爵邸 中央ロビー(崩壊後)
俺は、掴んでいたパウルの髪の毛を離すと、後ろを振り返りオリハに向かって目で合図を送る
「御意」
オリハは俺の背後に一瞬で移動すると、ペドラザに向かって手を翳し精霊術を唱える
【腐土】(ふど)
オリハの精霊術によりペドラザの皮膚にカビが生えて来て、その皮膚が爛れてくる
「いやぁぁぁぁ私の身体がぁぁ腐ってるぅぅぅ」
「くくくっ元々性根も腐ってんだぁ丁度いいじゃないか、ぎゃははははは」
身体の半分以上が腐ってしまいペドラザの身体の肉がボロボロと崩れ落ちる、異臭も物凄い
【ヒィィィお前も道連れだぁぁぁアースバレットぉぉぉ】
オリハに対し渾身の魔法を撃ちこむ・・・・が
オリハの身体に石が当たる直前に全て床に落下しオリハには粒の一つも命中しない
「な・・なんでぇ・・?」
「馬鹿かぁ?お前・・オリハは土の精霊だぞ?土の魔法が効く訳ねぇだろうがぁぁククククッ」
「つ・・土・・の・・せい・・れ・・・」
ペドラザはその場に異臭だけ残し腐った肉の塊と白骨になり果てた、その様子を見て居たパウルは恐怖に腰を抜かし足をバタつかせ必死に逃げようとしていた・・・
「さぁ~て・・・あとはお前だけだ・・・パウルだっけ?」
「ヒィィィ・・助けろ・・俺を殺すな・・・お前等を見逃してやる・・いやお前等の望むものをくれてやる!だから・・俺を助けろぉぉぉ!」
俺はその様子を見て、口元を吊り上げニヤリと笑う・・・
「そうだなぁ~じゃお前の運命はこの男爵領の住人に委ねるとするかぁぁ・・くくくく」
〇ベストパーレ男爵邸のふもとの街中央広場
「さぁ街の住人の皆様方!よってらっしゃい見てらっしゃい、本日、皆さまにお見せするのは世にも珍しい首吊り人形だ!」
オリハとファリスが大きな布を捲ると・・・・
首に縄を掛けられ、足元にはバランスの悪そうな丸みを帯びた石が積み重ねてある足場につま先で辛うじて立ってるパウル フォン ベストパーレ男爵だった
両腕は切り落とされ、魔法を唱えられない様に呪言で喋れなくしてある
その眼は恐怖に染まり、プルプルと震える足で器用にバランスを取っている
「さぁさぁ皆さんにご参加いただくゲームは首吊り人形の足場を誰が一番に崩せるか?ってゲームだぁ!」
「ルールは至って簡単!そこの白線からカゴに用意した石をぶつけて足場の丸い石をズラす事が出来れば、首吊り人形が本当の首吊り人形になってゲームクリアってすんぽうだ!」
観客はザワザワしてる・・・それはそうだ今まで自分達を虐げて来た貴族が目の前で死刑囚の様な姿で現れたのだから・・・そんな観客を押しのけ外回りから戻ってきうた騎士達が広場に現れる
「なっ!?ベストパーレ男爵様!!」「きっ貴様ぁぁぁ」
「ショーの邪魔だ・・・【楼閣】」
十数名の騎士は一瞬で砂と化しその場で朽ちた・・・俺はフードを取り街の住人に顔を見せる
「素敵・・・なんて神秘的な人なの・・」「あの男、髪が緑だぞ・・それに左右の目の色が違う・・」
「我が名はオベ・ロン・・・精霊の王にして、この世界の反逆者である! 我はこの世界で力無きものから搾取し続ける魔法使いとそれを守護する騎士達を粛清する為にこの地に来た!」
「我はこの世界の魔法使いと騎士を駆逐し、この狂った世界を作りし悪神ゼレ二スを滅し世界を正しき秩序へと導く!」
「住民達よ立ち上がれ!魔法使いを欠いた騎士など恐れるに能わず、皆の力を持ってすれば打ち伏せる事は容易なり!虐げられた者よ今こそ牙を剥く時だ!」
ロンの言葉はあまりに唐突で人々の理解が追い付かない・・・それもそのはず今まで長年・・いや自分達が生まれる前から貴族に従うのが当たり前、騎士に従うのが有り前の生活だったのだ・・
「主様・・・・」「ロン様・・・」
「オベ・ロン様!俺にやらせて下さい!!」
群衆の中から一人の男が手を上げ前に出て来た
「ああ、君か・・・それと・・」
男の隣には大きなお腹を抱えた奥さんが男性と同じ様に前に出て来て俺に深々と頭を下げる、男は振り返り群衆に向かって叫ぶ
「俺は此処におられる精霊王オベ・ロン様に妻とお腹の子の命を救ってもらった!俺はロン様を信じる!皆見ててくれ!!」
そう言うとファリスの持つ石の入ったカゴから石を掴むと、白線を確かめ握った石を見つめ真っ直ぐパウルの方を睨み付ける
男に睨まれたパウルは涙を流しながら首を横にふり命乞いをする
「これは騎士達に無理やり犯された妻の分だぁぁ!」
そう叫びおもいっきり投げた石はパウルの真下の石に命中しパウルのバランスが崩れそうになる、目を剥き口から泡を吹き出し鼻水と涙でグチャグチャになりながらも必死でバランスを取るパウル
男は振り返りもう一つ石を掴み白線に立つと
「これは、お腹の中の子供の痛みだぁぁぁ!!」
そう叫び思いっきり投げた石は力みからか大きく外れパウルの鼻先に命中する、鼻は折れ真横にひん曲がり大量の鼻血と共にパウルの頭が痛みで前後に激しく揺れる
そのせいでバランスが崩れ足元の石がグラグラ揺れる
「俺も!!母ちゃんの仇を取りたい!!」
そう手を上げたのは10歳にも満たない男の子と女の子だった、二人は手を繋いで白線前に立つと、しゃがんで微笑むファリスのカゴから小ぶりの石を手に取る
「母ちゃんはお前等に連れ去られボロボロにされて川に身を投げて死んだんだぁ!!!」
「お母さんを返せェェ!!」
二人の投げた石は届く事無く転がりコツンとパウルの足元の石に軽く当たっただけだが、その恐怖にパウルの眼はグルグル回り失神しそうになっていた
「俺も!!俺にもやらせてくれぇ!」「儂もじゃ孫娘の仇を!!」「私も夫の仇を!!」
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・
広場には死体に群がるカラスの大群と鳴き声が響き渡る、男爵の足元には住民に返り討ちにあった騎士数名の死体も有った
俺達は少し離れた場所からその光景を眺める
「ロン様これで良かったのですか?お名前を出したら国中に・・・世界中にロン様の事が知れ渡っちゃいますよ?」
「ああ、奴等が俺の事を倒しに来るならそれはそれで手間が省ける・・・仮に逃げようとしてもファリスの目がある限り世界の何処にも奴等の隠れる場所は無いさ・・・だろ?」
「ふふ、主様の仰る通りで御座います」
「よしそれじゃお前等の働きに報いるのに何か褒美を取らさないとな、二人は何がいいか?」
「僕はぁ~ロン様!」「主様のお情けです・・」
「ふふ、わかった今晩は二人とも沢山可愛がってやるぞ」
このベストパーレ男爵領にて起きた、オベリスクのロンと名乗る男による貴族と騎士達へ惨殺事件は、直ぐに近領を通じグランディ帝国首都にまで伝わる事となった
3章了
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