第25話 自らの私怨の為に

世界樹の守護聖達と精霊王として契約すると決め、喜ぶ精霊達、しかし強力な精霊の力を使役するには対価が必要だと言うその対価とは?



「主様の身体です」



「俺の身体?」



「はい・・言い換えると肉体の一部です」



「つまり・・俺の目や足や手って事だな」



「仰る通りです」


酷い拷問により、理不尽に奪われる俺の身体・・その記憶が・・恐怖が・・苦痛が・・俺の中に蘇る








しかし・・・・





俺から、全てを奪ったヤツに・・・俺を否定し裏切ったあの女に・・・俺を、母を無かった事にしたあの男に・・・そして




破界樹 ゼレニスに・・・・・




復讐する・・・・その為なら・・・




「構わない」



「!?主様!?本気ですか?ご自身の身体の一部を我等に与えるという事ですよ!?」



「ああ、わかってる・・・くどいぞ?ファリス」



「あ、主様・・・ユリシーズ様はああ仰りましたが、今のまま我等が御傍にて主様をお守りする事はできます」



「主様のお命は我らの身に代えましても・・・」



ファリスは俺の前で頭を下げもう一度俺に考え直す様に促す、後ろに控える他の守護聖達もさっきまで喜んでいたがファリスの言葉を聞いて少し気まずそうだ・・・


だがパンドラだけが、妖艶な笑みで俺を見つめ嬉しそうにしている・・・


「・・・・だめだ・・」


俺はファリスに手をかざし、ファリスの申し入れを断る



「主様?」



「であれば、貴様らの命は誰が守る?」


「我らは精霊で御座います、精霊王の為に命を捨てる事こそ至高の極み・・次世代の新たな守護聖の誕生の為、喜んで礎となりましょう」





「許さぬ・・・」




「オベ・ロン様?」




「許さぬ!貴様等の身も心も俺に捧げるのだとさっき誓ったはずだ、であるのに俺の望まぬ死を受け入れるなど、絶対に許さぬ」



俺の怒りに反応し小精霊達が体の周りに沢山集まり、激しく飛び回ると俺の背後で七色のオーラを作り出す




「これは・・・精霊王の翼・・・・・ユリシーズ様からお聞きした事がある・・全ての精霊に愛されし精霊王だけがその身に宿すという・・七色に輝く命の翼」



〇世界樹の広場・・・円卓の儀場



精霊の翼が発現した途端にファリスが急に口をつぐみ、黙って俺に頭を下げると契約の場へと案内を始める


「ほぅ・・・ここは又神秘的な・・・凄いな・」


案内された場所は、世界樹の接ぎ木と言われた大木の頂上付近にあり丁度窪みになっている場所に直径数メートルの大きな円形の舞台と、その周りにある七つの椅子


そして神秘的な光の粒子を漂わす世界樹の枝葉達


「ファリス・・ここはどう言った場所だ?」


「ここは守護聖達の円卓の儀場と呼ばれる場所に御座います、色々な世界における精霊達の情報交換であったり、次世代の守護聖の選定を行ったりする言わば精霊たちの最高峰の決定機関で御座います」


【精霊王及び守護聖達よ・・・席に着くがよい】


ひと際輝く世界樹の枝葉が激しく輝きユリシーズの声を伝える


「「「御意!」」


守護聖達はその輝く枝葉に進化の礼をすると、各自円卓の周囲にある席に着く


【精霊王は中央に】


すると円卓の中央から世界樹の枝が伸びてきて、折り重なる様に複雑に絡みあうと椅子の様な形になった


「主様、中央の玉座に」


自分の席についたファリスが頭を下げ手を伸ばし円卓の中央にある席に座る様に促す


「・・・わかった・・・」


円卓に上り中央の席に腰を下すと、周囲の世界樹の枝が七色の光を放ち明るく照らす


【精霊王オベ・ロンよ・・・契約する守護聖を選ぶがよい】


円卓の周囲に座る守護聖の表情に緊張が走る・・パンドラを除いて


パンドラか・・・不思議な女性だ・・こちらのすべてを見通す様な、引き込まれる様な雰囲気だ・・・


「そうだな・・・その前にユリシーズ殿にも守護聖達にも聞いて欲しい事がある・・・俺がここに来る迄の事だ」


【・・・・よかろう・・皆も精霊王の話しを聞くがよい】


守護聖達は黙って頷き俺を見つめる


「俺の生きていた世界、女神・・・いや破界樹 ゼレニスを唯一の神と崇める世界ゼレ二アス、その世界では魔法を使えるモノと魔法使いを守護する者、それと持たざる者で人々は区別されていた」


「持つ者は、持たざる者に対し搾取するのはあたり前、持たざる者は持つ者に歯向かう事は許されない・・・そんな世界だ」


「俺は物心つく事からこの世界の有り様に疑問を持っていた・・人の命は皆等しく尊いのでは無いかと・・・」


「しかし俺の考えは異端でありゼレニアスの世界では許されぬ事・・・しかし俺はその禁を破り一人の持たざる者である少年の命を救う」


「俺はその少年に運命を感じた・・そしてその少年と友情を育めると思っていた・・俺は少年と共に成長し二人の間に確かな絆が生まれた」


「少年と俺の愛した女性、その二人が居れば俺は孤独では無かった、世界で許されぬ俺の思考も二人は笑って聞いてくれ共感もしてくれた・・・そう思っていた」


「事態は急変する、13歳で迎えるゼレニスによる魔法の顕現式・・・そこで俺はゼレニスより無能であり世界に不要だと否定され、世界に害を成す世界の敵だと告げられる」


「その後、友だった男にゼレニスは力を授け、友だった男は俺から全てを奪う・・家も、父親も、婚約者も、愛する女性も、俺の身体も・・」


「俺は絶望し自ら死を望んだが、奪われた体では自らの命も絶てない、俺は世界を呪った、復讐を誓った、俺を否定し持たざる者から何もかも奪う奴等に・・・」


そこまで話し俺は席を立つ





「俺は自分の復讐の為にお前等の力を振るう事になる・・・」







「言わば私怨だ・・だが敢えて言う」







「俺の復讐にお前等の力を貸せ」



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