第24話 精霊術


「・・・すまん、俺は今状況が呑み込めて無いんだが・・・」


全員が俺の方を真剣な表情で見つめている、そんな中で精霊の長たるファリスが口を開く


「発言をお許し下さい」


「え、えっと・・あ、ああ、どうぞ」


「オベ・ロン様がご自身の事をご理解頂く為には、まずはご自身の身に受けた加護の一部だけでも御実感頂くのが一番早いかと存じます」


確かに、いきなり自分が精霊王などと言われ、あの女神ゼレニスと戦うのだと言う・・・混乱するなと言う方が無理がある


「ですので、今から私の力の一部を行使する為の儀式を行いたいのですが、ご協力いただけますでしょうか?」


ファリスの目は真剣だった


「分かった・・・何をするのか分からないが俺に出来る事であれば・・」


「では・・」


そう言うとファリスはその場を立ち上がり、俺の目の前まで歩いてきた


「目を瞑って下さい・・・そして力を抜いて楽にしてください・・意識を集中して・・・」



「!?」



気付くとファリスが俺に口付けをしている、驚く俺と視線を合わせないようにそっと離れると元の位置まで戻り俺の方を見つめ



「これで、私の力の一部が主様にも使える様になったはずです」


「と・・言われてもなぁ・・特に変化は・・」


突然の事で理解が及んで無いが・・・ん??


「ファリス?この周囲に飛んでる小さな光の粒は何だ?」


「はい、それが私の力の一部です、今主様が見ておられるのは我らの眷属でる小精霊に御座います」


周囲に様々な色の光の粒子が浮かんでおり、俺が手を掲げると俺の手の前に集まってくる


「眷属達もオベ・ロン様にご挨拶をしております、出来ればお声がけを・・・」


声かけ・・って言われても・・・


「え、えと・・宜しく・・・」


「「「御意!」」」


ピクッ!!


小精霊に挨拶したつもりが、ファリスの後ろに控えてる他の守護聖達も一斉に返事をしてきてビックリしてしまった


そんな俺の事を揶揄っているのか、慰めてくれてるのか俺の身体に沢山の小精霊が纏わりついてきた


「これは・・・・全ての精霊が・・・主様へ忠誠を誓っております・・・」


ファリスの驚いた様子に首を傾げる俺


「どういう事なんだ?それは珍しい事なのか?」


「そうですねぇ・・・では、オリハ・・オベ・ロン様にお見せしなさい」


「かしこまりました」


先ほど自己紹介してくれた 土の精霊 オリハはキリッとした表情で姿勢良くその場から立ち上がると、手を奥にある岩に翳す


【楼閣】(ろうかく)


オリハの掌が黄色く発光すると奥の岩が形を崩して砂に変わる


「!?これは?岩が砂に!?」


「これが精霊術と我々が呼んでいる物です、先ほどオリハが術を発動する際に掌に集まった黄色い光は土属性眷属の小精霊で御座います」


オリハはファリスの説明に併せて俺に見えるように手に小精霊を集めている


「この様に守護聖とは言えど、自分の眷属以外の精霊を使役する事は出来ませんですから、自分の眷属の小精霊の少ない場所では精霊術の行使には限りが生じます」


「つまり、水の中だと火属性の小精霊が集まらなかったり、洞窟の中だと風の小精霊が集まりにくいとそういう事か?」


「はい、その通りで御座います」


オリハは俺にニコッと笑顔を見せ再びファリスの後ろに控える


「私とパンドラは、ちょっと他の守護聖と異なり小精霊を使役する場所に制約を受けないのですが・・・まぁそれはまたの機会にご説明させて頂きます」





「皆の事・・・そして精霊の事・・全部では無いが理解はした、それで俺は皆と契約するのに何をしたら良いんだ?」


「わぁぁ」


「やったぁ」


全員が喜んでくれてる様だ・・・しかしファリスだけが複雑な表情をしている


「そうですか・・分かりました、精霊にとって精霊王と契約出来る事は史上の歓び・・」


「しかし、契約には対価が必要となります、オベ・ロン様は我等の主であり私達は臣下にして従者・・ですので主から下賜されるモノが必要です」


「それは?」








「主様の身体です」









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