第26話 精霊達に捧げし身

〇円卓の儀場 円卓の玉座にて



「俺の復讐にお前等の力を貸せ」


俺は、あまりにも自己的な要求をその場に居た全員に告げる


(可笑しなものだ・・今までの自分では考えられない思考だ・・・)


誰かの為に…とかでは無く、自分の私利私欲を優先する考えに違和感も忌避感も無い


あの永遠とも思えた、約半年に渡る地獄の拷問は俺の尊厳や身体だけでなく人としての良心まで奪ったのでは無いか?


そんな風に思ってしまい、自分でも何故か解らないが笑ってしまう



「ユリシーズ様、主様・・・発言よろしいでしょうか?」



そんな中、ファリスが手を上げ発言の許可を求めて来る


【構わぬ】「ああ、意見が有るなら今の内だ」


世界樹と俺の許可を受けファリスが席を立ち上がり俺とユリシーズに頭を下げる


「発言をお認め頂き感謝します、主様の受けて来た数々の苦痛と屈辱、我等には想像も出来ないものだったと察します」


「精霊王となられる以前の出来事とは言え、今の主様の怒りは我らの怒り、主様の悲しみは我らの悲しみ」


隣の席でファリスの言葉を聞いていた闇の精霊 パンドラは少し寂しそうな表情をする


「先ほど我等は世界樹ユリシーズ様に精霊王への忠誠を誓いました、ですので精霊王が復讐を望むなら我等がその先兵となりましょう」


「我等の命は精霊王たるオベ・ロン様と共に!」


「「「共に!」」


他の守護聖達もファリスのそれに倣う


【という事だ、我が加護を受けし者よ、精霊王の私怨は我が望みとも一致する】


【世界樹ユリシーズの名において、改めて告げようエスト フォン ローファットは今この時よりその名を捨て】


【精霊王 オベ・ロンとなり、すべての精霊を従えし王となる事を此処に告げる】


「「「精霊王 オベ・ロン様 我らの忠誠、お受け取り下さい」」」


全員が席を降り俺に向かって臣下の礼を行う


「分かった、俺は今この時よりこの地にてエスト フォン ローファットの名を捨て精霊王 オベ・ロンと名乗る事とする」


「「「御意!」」」


「お前達、守護聖は俺の事をロンと呼ぶ事を許可する」


「「「有難き幸せ!」」」


【精霊王よ、七大精霊との契約・・・誰と契約する事に決めたのだ複数の契約も可能だ】






「ユリシーズよ・・・俺はこの場に居るすべての守護聖と契約する」



「「「「!???」」」」」



【それがお前の・・精霊王の決意か】



「そうだ・・俺は俺のすべてを精霊に捧げる、その対価に俺は精霊の全てを従える、それこそが俺の覚悟だ」


何か言いたげなファリスに対し近くに寄り頭をそっと撫でる


「!?主様・・・臣下に対しその様な・・・恐れ多い・・・」


「ファリスよ・・お前は確かに俺の従者であり臣下だが、いまこの時より俺の大事な存在となる」


「あ、主・・・・その・・わたくしは・・」


俺はその場を立ち上がり守護聖全員を見渡し告げる


「お前等の命も心も体も全て俺のモノだ、俺の許可なく命を投げ出す様な事を固く禁ずる、俺の身体を分け与えるのだ相応の命を全うせよ!」


「「「ロン様の御心のままに!」」



そして俺は精霊王として守護聖との契約の儀に移る


「光の精霊 ファリス  お前には俺の右目を与える」「有難き幸せ」


「闇の精霊 パンドラ  お前には俺の舌を与える」「ロン様~♡ 嬉しゅうございます」


「炎の精霊 フィール  お前には俺の右手を与える」 「ロン様 有難く!」


「水の精霊 フィーネ  お前には俺の左手を与える」 「主様!有難う御座います!」


「森の精霊 ミホーク  お前には俺の髪を与える」 「ロン様!有難うだどぉ~」


「土の精霊 オリハ   お前には俺の右足を与える」 「主様、オリハ謹んで!」


「風の精霊 ダキ    お前には俺の左足を与える」 「主様・・・もったい・・なく・・有難う・・ございます・・」









俺は再び自分の体の大半を失う事になる


しかし、今度は俺自身が望んでこの身を捧げるのだ・・・俺はコイツ等と共に生きて行く・・そして俺を否定した世界をこの手で・・・




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