第15話 汚される尊厳

「着いたぞ、おらぁぁ――起きろぉぉ!!」【ドガッ!」


「いだっ!?」


エストは乱暴に殴られ目を醒ます・・・・・体が動かせない


「ゼス、ゼスは!?」


「豚がぁ~ゼス様の名を軽々しく口にするな!」【ドガッ!】


再び殴られ痛みで涙が出て来る


「い・・いだぃ・・・何でこんな酷い事を・・」


身動きが取れないなかで誰かもわからない人に殴られる・・・そんな自分の状況が理解できない


「皆で、おこすぞ、せーの!」


エストは何かに括りつけられた状態で起こされた・・・いま居る場所は・・・


「ここは訓練場・・・」


そして自分が縛られて立っている場所は訓練用の木人が並んでる場所だ・・エストは自分の置かれた状況を理解した・・


「まさか!?木人の代わりに!?」


目の前には木剣を持った、若い騎士たちがニヤニヤしながらエストを見て居た


「君達ぃ!僕はエスト フォン ローファットだぞ!こんな事許されるとおもっているのか!?」


エストの言葉に集まった騎士たちはニヤニヤ笑いながら木剣でエストの顎を持ち上げる


「いやぁ~俺らも驚きましたよぉ~昨晩、ローファット家に仕える全員が集められましてねぇ」


「何やらアンタの母親はラウンド様を裏切って、夜な夜な屋敷を抜け出し、あろう事か家畜の豚と交尾していたらしいじゃないですか~?その交尾で出来た家畜がアンタらしいですよ?」


「ぎゃははっは、とんだ売女だぁぁ」


エストは自分を命がけで産んでくれた亡き母親をずっと尊敬し敬愛していた・・それを・・


「貴様ぁぁぁ母上を侮辱する事は許さんぞぉ!!」


「だまれぇぇ!」【ガシュッ】


「ガハッ!」


騎士の打ち込んだ木剣がエストの鎖骨に打ち下ろされる


「何を何時までも俺らの主のつもりでいるんだぁ?あぁぁ貴様はローファット家の者でなく、ただの家畜・・平民の豚だぁぁぎゃはは」


「そうだぁ俺達の主はラウンド様とゼス様お二人だけだぁ」


「っっつ・・ゼス・・ゼスが・・」


【ガンッ】「いだっ!!」


今度はエストの額に木剣が振り下ろされ、エストの額からは血が流れる


「言葉に気を付けろ、ゼス様だ!ゼス フォン ローファット様だ、言い方を間違えるな!」


「よし!お前等もいけぇ」「おおおお!!」


・・「ガハッ」・・「気絶しても関係ねぇ」・・・「もう・・やめてくれ・・」・・・・


・「うでがぁ折れたぁ」・・「いだいぃううう」・・・・


「・・・・・」・・・・・・・・・・・・・・・


それからというもの、日が傾く迄、騎士たちに木剣で打ち込まれエストの身体は肉が裂け血が滲み、彼方此方に痣が出来てしまっていた


その美しかった顔も醜く腫れあがり、痛みを通り越してすでに無感覚になっている


「はっはっはっ・・今日は良い稽古になった・・おい!ハリー!コイツを片付けて地下牢獄の看守に引き渡しておけ!!」


「かしこまりました・・・・」


騎士達の下っ端として、皆からコキ使われる存在となったハリーはぐったりするエストの手足を縛ってる縄を解き抱きかかえると荷車にそっと横に寝かし荷車を押していく


「は、は、り・・な・の」


「エスト様・・お労しい・・お力になれず・・申し訳ございません・・」


荷車を押すハリーの背中は小刻みに震えていた、どうやら泣いてる様だ


「な・・ん・・でぇ・・あ、や・・ま・・る?」


自分の腕で涙を拭いながら、エストの方を向く事無く小さい声で話すハリー


「エスト様・・黙ってお聞きください・・・誰が見てるか分かりません・・」


「・・・」


「昨晩、旦那様がローファット家の関係者を集めて仰いました、エストという豚はローファット家の者にあらず、売女が自分を欺き下賎な豚と交配して生まれた家畜だと・・・」


「そして、エストに関するすべての記録を抹消すると仰り昨晩の内にエスト様に関係するすべてが処分されました・・そしてエスト様はローファット家には存在しなかった者として扱う様にと・」


「・・・」


「その後、ラウンド様は自分の唯一の実子はゼス・・・ゼス フォン ローファットだけだと・・今後はゼスがローファット家の跡継ぎであると・・・その場でゼスが雷光の魔法を皆に見せて・・それを見てみんなは掌を返して・・」


「・・・・」


「私と父は・・エスト様に命を救って頂きました・・・なんとかお力になれればと・・・思ってはいるのですが・・」


「・・む・・り・・し、な・・い・・で」


「!?エスト様ぁぁうううう」


そう悔し涙を流すハリーの気持ちがいまのエストの救いであった・・・しかし・・地下牢の看守にエストが引き渡されると


「ご苦労だなぁ・・あと此処からは俺が引き継ぐよ」


絶対に何か企んでいそうな看守にエストの首についてる鎖を手渡すと、看守は荷車の台に横たわり身動き取れないエストを引きずり落し鎖を引っ張り引きずったまま地下牢の中に消えて行った


「エスト様・・・絶対にお救いします・・・」




ハリーはそう誓うと涙を堪え走り去っていった





〇ローファット邸 地下牢


「がははは・・連中のせいで見た目が汚くなっちまったが・・・まぁケツのほうは綺麗なままだし・・今日は沢山楽しませてもらうぜぇぇ」



「・・・・・・」




エストの地獄の一日は翌朝まで終わらなかった・・・


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る