第16話 元婚約者からの拷問
〇ローファット邸 地下牢
「エスト様・・・エスト様・・・起きておられますか?」
「ミ・・・・リア?」
「はい、ミリアです・・この様な場所で・・お労しい・・」
ミリアの声がする方を見上げると牢の中の天井付近にある換気用の小さな格子からミリアと思われる手が見える
「エスト様・・お力になれず・・でも何とかお助け出来る様にミリア全力で頑張ります・・それと・・これを・・」
そう言うと天井の格子からミリアの手が伸び何やら包みを落した
エストは昨日の拷問であちこちが軋む体を引きずる様にミリアの落した包みの所まで近寄ると
「お腹が空いているかと思い・・簡単なものですが・・!?だれか来ました・・ではまた来ます」
そうミリアの声が聞こえ・・足音が遠ざかってしまった
包みを開けるとサンドイッチが二つくるまっていた・・エストは思う様に動かない腕をなんとか動かし手にとり口に運ぶ
「おい・・じい・・いでぇ」
噛むと昨日折れた歯と切った口の中が痛み再び血の味がする・・・飲み水は岩肌からチョロチョロと湧き出てる水をペロペロと舐めて喉の渇きをしのいだ
包み紙が見つかるとミリアに迷惑がかかると思いエストは包んでいた紙も口にいれ呑み込んだ・・・
食べ物が腹に入り膨れたのと、体中が痛みから熱を帯びているので、石牢の中でウトウトと眠りについていた
「こちらです・・足元をお気をつけ下さい・・」
(ん?誰か・・・来たのか?それにあの声は・・ゼス!?)
「ぷっ!本当にこんな所に居ましたわねぇ」
(この声・・・ザビーネ様・・・か)
うっすらと目を開けると、貴族のドレスコードを纏ったゼスに肩を抱かれたザビーネが此方を見ながら嬉しそうに笑っている
「おい・・・豚・・我が婚約者殿がお見えなのだ挨拶せぬか・・・」
痛む体を少しだけ動かし、上半身だけなんとか起こす
「あははっは、顔だけは好みでしたのにぃこれじゃ見る影も有りませんねぇ」
口元を扇子で覆い、汚い物を見るような目でエストをみるザビーネ・・・あの石橋の上でエストに向けた視線だ
「ねぇ~ゼス様ぁ~私、ゼス様の上級魔法を一度も見て無いので一度見せて頂きたいのぉ~」
エストに見せる顔とは全く別の、甘えるような恍惚とした表情でゼスに抱き付きゼスの胸板を指でなぞる
「はは、婚約者殿は欲張りですね、ここで大きな魔法を撃っては地下牢自体が壊れてしまいますので、一番弱い魔法でご勘弁ください」
ゼスは両手を上げ首を振りながら申し訳ないとザビーネに謝罪するがその顔は楽しんでるようだった
「まぁ・・・残念ですが仕方御座いませんねぇ・・・ではまた今度お見せいただいても宜しいですか?」
「勿論で御座います、わが婚約者様のお望みと有らば」
そう言いながら右手を胸にあて頭を下げる
「では・・・【ライトニング】」
ゼスがエストの方へ手を翳すとエストの周囲に青い電撃が発生しエストを包み込む
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ」
エストは放電する電気の筋に体を纏わりつかせ白目を剥いて絶叫する
「まぁ綺麗~薄暗い地下牢が一気に明るくなりましてよぉ~」
ザビーネは上気した頬をして恍惚な表情で青く発光してるエストを見つめる
「がはっ・・・がぁ・・・・・ヒィー・・」
体中から黒い煙を上げエストは床に倒れる・・・・
「あら?もう死んじゃったんですか?つまらないです」
「ふふ、そんな事はありませんよ少々お待ちください【ショック!】」
今度は右手の人差し指を倒れて痙攣しているエストの方へむけると指先から青い稲妻がほとばしる
「がぁぁぁっぁ」
細い稲妻に貫かれたエストが再び息を吹き返す
「あら?生き返った!便利ですねぇゼス様」
「ふふ、お気に召して頂いて何よりです、電気ショックで心臓を動かす雷光の簡単な応用呪文です」
エストは無理やり心臓を刺激され、口から血を吹き出しながら苦しくて地面を転がった
「ふふ、芋虫みたいおもしろ~い、私も魔法を撃ってみても宜しい?」
ザビーネはゼスに甘えるように上目遣いでおねだりすると
「ええ、構いませんよ?私も『紅蓮』の魔法は見た事ないんで楽しみです・・・あ、そうだ、そしたら豚の髪の毛を燃やしてみて下さいな」
「ふふ、良いでしょう部分的に発火させるのは難しいんですよ?父上でも出来なんですからぁ見ていてくださいねぇ」
【フレイム】「ボッ!」
「熱いぃィィィ」ザビーネが腕を振り下ろすとエストの頭髪が燃え出した
「ふふふ、また地下牢が明るくなりました」
妖艶な笑みを見せるザビーネの顎を持ち上げ顔を寄せるゼス・・・ゼスの顔が近づいてくるとザビーネが瞳をとじる
エストは燃上がる頭部を、何とか消火しようと地下牢の中でとのたうち回りる
そんなエストの目の前で、ゼスとザビーネは熱い口づけを交わしていた
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