1章 絶望と怨嗟の果て

第12話 不要とされし存在

前書き

この章から鬱展開、残虐描写、性的な描写が入ってきますご注意下さい





〇ローファット伯爵領 女神ゼレニス教会支部 本堂内





【エスト フォン ローファットよ・・・貴方に贈る天啓は・・・・・】


【有りません】


「え?」


「はぁ?」


「なっ!?」


会場に居た全員が耳を疑う・・・祭儀を執り行ってる司祭すらも前代未聞の事に動揺を隠しきれず右往左往してる


そんな中、エストが声を上げる


「女神ゼレニス様!私めに天啓を賜れないというのはどういう事でしょうか!?」


女神像の瞳にまだ淡い光が宿ってる事からまだ女神がこの教会に降臨してると考えたエストは不敬とは思いながらも女神に答えた


「女神に対し不敬ですぞ!ローファット卿、ご子息を即刻止められよ!!」


女神の言葉を聞いて頭が真っ白になっていたラウンドは横に控えていた神官に指摘され慌てて息子を取り押さえに祭壇の前に飛び出す


「ゼレニス様!」


【エスト フォン ローファット・・貴方はこの世界に仇成す存在、我が世界に貴方は不要、よって天啓を受ける資格はありません】


「エストぉぉぉ!!」


頭を取り押さえられ、床に頭を押さえつけられたエストは、女神象を見上げる・・・ニヤッ


(笑った!?今女神像が笑ったぞ!?)


【しかしこの場には私の寵愛と天啓を受けるに相応しき新たなる使徒が居ます、その者に新たなる天啓と我が神の力の一端を授けます】









「!?」







女神の瞳が激しく輝くと、聖堂の脇に控えていたゼスの身体を眩しい光の柱が包み込む・・・・


「なっ!?これは・・・・え?女神ゼレニス様?・・・私に直接・・・え?・・私に?・・・はい・・・え?・・そ、そんな・・」


「ゼスぅぅ!!」


ラウンドに取り押さえられながらもゼスを包んだ光の柱が見え思わず大声で呼びかける


「・・・エスト・いや・・そうか・・・くくく・・そういう事なら・・・・承知しました・・・ゼレニス様・・・私の・・・・を捧げます・・・私に比類無き力を・・」


するとひと際強い光がゼスを包み込み、膨張し弾けて消えた・・・


「なっ・・・なんだ・・・何が起こった・・・」


【ここに新たなる我の代理執行者たる神の使徒が目覚めました・・・新たなる使徒の名はゼス・・雷光のゼス・・我が神罰の雷となり勤めを果たしなさい】


ゼスの方を見ると、女神の像に向かって臣下の礼をしていた・・・そして・・・


「ゼス・・・髪の色が・・・」


ゼスの髪の色がくすんだ金色から鮮やかな輝く金髪へと変わっていた・・・そして女神象の光も消え女神の降臨が終わった事を告げる


「き・・貴様ぁ・・・どういう事だぁ・・」


エストを取り押さえつつ今しがた女神の使徒に指名されたゼスを怒りの眼差しで睨み付けるラウンド


【サンダーアロー】


ラウンドは教会内だという事も忘れ、ゼスに向かって魔法を打ち込む


俯いたままでスッと立ち上がったゼスは


【ライトニングジャベリン】


なんと突然魔法を詠唱するとラウンドの放った雷の矢よりも強力で青み掛かった無数の雷のヤリで自身の前に壁を作りラウンドの雷の矢を打ち消した


「なっ!?ば、ばかな・・・雷光・・だ・・と?」


其れを見ていた司祭も本来であれば教会内で私闘に及んだ事をとがめるべきだが、それも忘れ驚きと興奮で叫ぶ


「雷光の魔法!?雷系統の上級魔法の顕現だぁぁぁ!!」





神官たちも騒めき状況が理解できてない様だった、そんな当人であるゼスは俯いたままツカツカとラウンドがエストを組み伏してる祭壇の前まで近づいてくる





自分の目の前にゼスの・・親友靴が見えたのでその顔を見上げる・・・・




「やぁぁエストぉぉ・・・これが俺の力・・最高だぜぇ~これが魔法の力・・・女神の力かぁ・・あはははは」


ゼスは顔に手をあて思いっきり笑い出し教会の天井を見上げる


「聞いてるかぁ~女神様ぁぁさっきの条件、よろこんで受けるぜェ!」


「ゼス・・?本当にゼス・・なのか?」


「き、貴様・・なぜ平民のお前が魔法を・・・何かの間違いだ・・こんなの・・こんな事・・」


エストを組み伏せながらも俯き落ち込むラウンドにゼスはしゃがみ込み顔をのぞき込む


「ラウンド様、ものは相談ですが・・・・私を養子として迎えないですか?」




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