第11話 エストの顕現式
〇ローファット伯爵領内、ゼレニス教会支部
「緊張するよ・・・ゼス・・」
エストは何時もよりも豪華な装飾を施したドレスコードを身に纏い緊張からか少し頬が赤く熱を帯びてる
控室にて本国から来訪する教会の司祭様の到着をじっと待っている・・・既にトイレも3回目だ
従者であるゼスも借り物とは言え、それなりの身なりで本日はエストの記念すべき日に同席を許された・・・
エストが無理やりラウンドを説得したからに他ならないが・・・
「そう言えば父上は?」
控室にさっきまで居たラウンドの姿が見えないのでキョロキョロしてゼスに尋ねる
「さっき司祭への供物を確認に荷馬車の方へ行かれました」
(供物と言う名の賄賂か・・・領民が必死になって働いた成果を貴族が搾取しその貴族から教会が搾取する・・・これが女神のお作りになった世界・・・)
「エスト様?」
「あ、ああどうした?ゼス」
「いえ・・さっきからお呼びしてもお返事が無かったもので・・・なにかご不安でも?もう一度お手洗いに行かれますか?」
「そ、そうだねぇ――もう一度いっておこうかなぁあははは」
エストは教会内にある貴賓者専用のお手洗いにで用を足して控室に戻る途中・・・
『世界に仇名す者よ・・・我が手を取れ・・』
廊下を通る際に風の音と共に何か聞こえた様なきがして周囲を伺う・・・しかし草木が騒めく音にかき消される
『もし、中級以下の魔法が顕現した暁には私との婚約はご辞退下さい』
前にザビーネ様が屋敷に遊びに来られた際に言われた言葉・・・それがふと頭を過る
今は天に・・・いや女神ゼレニス様のみぞ知る・・・か
控室に戻って来たエストはゼスから手を拭く為のハンカチを渡され、教会の用意した聖水にて手を洗い流し渡されたハンカチで丁寧に手を拭いた
【コンコン】
「エスト フォン ローファット様・・・帝都グランディ ゼレニス教会本部 バウディ司祭様ご到着に御座います」
教会の関係者の人が入口のドアの前で声を掛ける
「エスト フォン ローファット 司祭様のご到着心より歓迎致します」
エストは声のするドアに向かって声を掛ける、エストの言葉を受けドアの前から人の気配が消える
「いよいよですね・・・エスト様・・」
「ああ、ゼスも入口で見守っていてくれ・・・」
「あ、エスト様このハンカチはお持ちください・・・」
エストは使用したハンカチをゼスに戻そうとしたがゼスに手で押し戻される
「これは・・・ミリアの・・・」
「はい、ここに来れないミリア様がせめても、このハンカチを一緒につれていって欲しいと・・」
「有難う・・ゼス・・ミリア・・僕は行くよ」
そう言うとエストは席を立ち、ドアを開け長い通路を進んでいく・・通路には等間隔に女神ゼレニスの像が飾られていた
エストは教会の本堂の入り口の前で静かに自分の出番を待つ・・・
中央の祭壇では教会のシンボルでもある巨大な女神ゼレニスの像の前で、身振り手振りで女神像に向かって長い祈りの言葉を唱える司祭の姿があった
「・・・・・全能の神、女神ゼレニスよ今日この日13歳の成人を迎えし貴方様の使徒に神のお導きを与えたもう・・・」
その言葉の後、エストの側面に立っていた教会の神官が手を前に差し出しエストに前に進むように促す・・
ゼスは此処までしか進めないので、先ほどエストが待機していた場所でエストの様子を心配そうに伺う
中央の祭壇の前、ひたすら女神ゼレニスに祈りをささげる司祭の背後に膝を着き頭を下げ目を瞑る
「今日、この時より新たなる女神の使徒となり、その恩恵を受け賜りし者の名を告げよ・・・」
「女神ゼレニス様の忠実なる使徒、エスト フォン ローファットで御座います」
すると、祭壇の先の女神象の瞳が淡く輝きエストの身体が同じように光り出す・・・
そして何処からか教会内に優しい女性の声が響く・・・
【エスト フォン ローファットよ・・・貴方に贈る天啓は・・・・・】
【有りません】
この瞬間よりエストにとっての生き地獄が始まる・・・・・・
序章 了
後書き:次話から1章が始まります激鬱展開で虐待、暴力、性的な描写があります、もしかしたらレーティングに引っ掛かるかもしれませんがご了承下さい
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