第2話 救いたい命
エストの乗る馬が暴れ馬と化し、畑で働く子供達に襲いかかる。
「危ない!!」
エストはとっさに馬の手綱を右に引いて寸前で馬の突進を反らす事に成功したがバランスを崩したエストは馬から振り落とされた。
「うぐっっ!?」
背中から地面に打ち付けられて、その拍子に口のなかを切ったようだった。
口の中に不快な感触と共に味わった事の無い液体が溢れる。
「ゴホッ!」
むせ返った拍子に口から赤い血が溢れる。
「エスト!無事か!!」
急ぎ馬を追ってきた父は馬上から飛び降りエストに駆け寄る。
その様子を見ていた、子供達は恐ろしくなり逃げ出そうとしたが、何処からか父の側近の兵隊が現れ周りを囲んだ。
「ち、父上▪︎▪︎▪︎▪︎申し訳ご▪︎▪︎▪︎ゴホッ!」
「よい!無理をするな!」
父は腰の鞄から小瓶を取り出し、瓶の先端を親指で弾くと先端が飛び封が外れた。
「エストこれを!」
父上は俺の口に優しくその小瓶の中の液体を注いだ。
ゴクゴク.....
その液体を飲むと不思議と口の中の痛みと背中の痛みが和らいできた。
「もう大丈夫だ、しばらく此処でまってろ」
父上はそう言うと、顔を真っ赤にして額に血管を浮き上がらせた。
そのまま、兵隊に囲まれてる子供達に歩み寄るとその一人を怒りに任せて殴りつけた。
「ヒッ!」
殴られた少年は兵隊の方へ吹き飛んだが剣を抜いた兵隊に肩口から切り伏せられた。
エストはその光景に唖然としていた。
父の怒りは収まらず他の子供達を尚睨み付ける。
「貴様らのつまらない命を守る為に、我がローファット伯爵の息子が高貴な血を流すなど、女神ゼレ二スが許されるはずがない!」
抱き合い怯える子供達に凄まじい怒気をぶつける
【サンダーアロー!】
父はは子供達に向かって雷の魔法を放つ
「「「ギャーーギ、ギーー」」」
子供達は凄まじい閃光に包まれると身体から黒煙を上げて重なる様に倒れた。
しかし、内一人の少年が少し焦げた片腕の庇いながらヨロヨロと立ち上がる。
「こしゃくな豚が!大人しく神罰に処されれば良いものを!」
【サンダー▪︎▪︎▪︎
再び魔法の詠唱に入る父にエストは無意識に抱きすがる。
「?!エスト?なんの真似だ?下がっておれ!」
エストの頭を抑え下がらそうとするラウンドにエストは必死にすがり付く
「父上、父上、どうかこの少年をお許し下さい!」
エストの必死の訴えに、驚くラウンドは更に怒りを増してエストに怒鳴る
「エスト!いい加減にしないか!我々高貴な者が下民の命を請うなど!恥を知れ!」
怒りからエストの頭を乱暴に抑えるが、それでもエストは引き下がらない。
「父上、どうか、どうか!お叱りは後から、私が!、どうか!この愚かな私のワガママをお聞き届け下さい!」
必死なエストの訴えと怒りに疲れたラウンドはエストを冷たく一瞥すると魔法の詠唱をやめてエストの胸ぐらを掴み片手で持ち上げると自分の目線に迄持ち上げた。
「エスト、この責は必ず取らすからな!覚悟せよ!」
そう伝えると、ラウンドはエストを放り投げ側近の兵隊に何やら指示を出すと自分の馬に乗り一人館の方へ引き上げ行った。
エストは立ち上がり、瀕死の少年の元に駆け寄ると残った小瓶の液体を少年に飲ませた。
少年の身体の傷はみるみる治ったが少年は意識を失ってしまった。
エストは、父の側近の兵隊に少年を自分の馬に乗せる様に頼んだ
兵隊は渋ったがエストの頼みを断れる訳もなく、その指示に従って少年を馬に乗せた。
エストはこの助けた少年をそのまま館に連れて帰った。
《この時の選択が今後エストの運命に大きく関わる事になるとは、この時は解る筈もなかった》
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