異世界人……惑星【エドハルマ】でバイトする
第14話・異世界人が異世界ざまぁ〔仕置き〕で悪党退治①
超異世界女型要塞【プルシャ】姉型が跳躍航行で現れた、前方空間に浮かぶ惑星は変わった地上絵があった。
ピンク色をした丸の中に、尖った部分が中央で接している三つのピンクハートマークも紋が人工的に描かれていた。
その地上絵紋章の大きさは宇宙から見て、惑星の半分を占めていることから、とんでもない規模の地上絵だとわかる。
仮想体プルシャが惑星の説明をする。
「あの惑星の名前は【エドハルマ】……エドハルマ家が全統治している惑星です」
カミュが鉄拳同士を打ちつけて言った。
「惑星を丸ごと統治しているってのは、とんでもない統治力の星だな……あの星に着陸するのか?」
「ええっ、要塞船の休憩を兼ねて……異世界人のみなさまには、惑星時間で一週間──自由に過ごしてください、
惑星に向って下降をしていく、超異世界要塞──白い雲の層を抜けると、エドハルマの町並みが広がっていた。
昭和時代と江戸時代が混ざり合ったような文明惑星だった。
船橋の巨大スクリーンには、プルシャの船影に怯えて逃げていく民衆の姿や、緊急事態を知らせる
メリノが言った。
「なんか、アタイら歓迎されてねぇんじゃないか? 子供がこっちに向って石投げているぞ」
「そんなコトはありませんよ……エドハルマの人たちは、未知のモノに怯えているだけです……パイ、船体の色彩変化を」
「オッケー、この前来た時みたいな色彩に」
要塞船の船体が、黒地に黄色い虎縞模様に変わる。
集音されたエドハルマの人々の「災いの黒船が来たぁ! 呪われた黒船が降りてきたぁ!」の声が船橋に響き渡る。
メリノが言った。
「やっぱり、アタイら嫌われてねぇ?」
プルシャはメリノの言葉への返答を無視して、小山に着陸した。山の山頂にあった山神の
なぜか、女神のメロンが手を叩いて喜ぶ。
「ざまぁみろ、異星の邪教偶像崇拝者ども! 崇拝するなら、あたしの立像で決まりでしょうが」
メロンの言葉を無視して、プルシャが言った。
「滞在時間は、この惑星時間で一週間です……一週間後には離陸しますから遅れないように、乗り遅れたら置いていきますから」
こうして、魔具の手入をするから船内に残ると言うリズムを除いた異世界人たちは、エドハルマの町へと繰り出した。
◆◆◆◆◆◆
メリノ・ウールが浮かぶ大鍋に乗ってやって来たのは、エドハルマの町にある『旗屋』だった。
「〝モフモフ珍走団〟の暴走団旗も、ほつれが目立ってきたから新しい団旗を新調したい」
メリノが持参した団旗を、手に取って眺めていた店主が呟く。
「年季と根性が入った、なかなかの団旗ですな……よござんす、こちらも誠心誠意、気合いを入れて新調させていただきやす……こちらも商売ですからタダで作るというワケにもいきませんので……勉強させていただいて、このお値段で」
店主が弾いた、ソロバン珠の数字を読むメリノ。
「高けぇな……そこまでの金銭は持ち合わせていねぇぞ」
「そう言われても、これ以上の値引きは……あっ、思い出しました。裏の長屋に住んでいる知人の旦那が近くの四つ辻で、道の工事をするので臨時の交通整理を三日間ほどしてくれる人がいたら。紹介して欲しいと頼まれていました」
「交通整理?」
「通行人や大八車やリヤカーや自転車、オートバイや馬などの通行を工事の邪魔にならないように仕切る
「アタイに向いていそうな
◆◆◆◆◆◆
オークの女医、リュウガン・ヤゲンは名医と評判の町医者からの医術講釈を聞き終わり。
出てきた屋敷の門に向って深々と一例した。
「勉強になったぜら、また新たな医術の見聞を吸収できたぜら」
屋敷の外塀の道を歩いていたヤゲンは、道の端で腹を押さえて苦しがっている中年男性と遭遇した。
松の木の下で幹に寄りかかり、苦悶の表情を浮かべている男性の顔には脂汗が浮かんでいた。
医者として無視できずに、男に駆け寄るヤゲン。
「どうしたぜら? オラは医者だ」
「ここまで歩いてきたら、急に腹に痛みが……ぐぅぅぅぅッ、痛えっ」
「ちょっと、触診で腹を触るぜら」
少し着物を脱がして男の腹を触るヤゲン。
「原因がわかったぜら、これは緊急処置が必要な事態ぜら……執刀するぜら」
日本刀を鞘から引き抜くヤゲンの姿に、男は顔色を変える。
「動いたら手元が狂うぜら、これは医療行為ぜら……執刀」
一閃、ヤゲンの持った刀の先端に臓器が刺さっていた。
男が言った。
「痛くねぇ、腹の痛みが消えた?」
「まだ、術式は終了してないぜら」
ヤゲンは抜き出した臓器に
「この臓器がだいぶ弱っていて、発した悲鳴が痛みの原因ぜら……暴飲暴食を少し慎んで体をいたわれば、長生きできるぜら……これでよし、体内にもどすぜら」
ヤゲンは取り出した臓器を、男の体に素手で押し込んでもどす。
押し込まれた部分を触ろうとした男に、ヤゲンが強めの口調で言った。
「まだ、治療は終わってないぜら。開腹した部分は開いたままぜら」
そう言うとヤゲンは、アリのような虫のアゴで切開した部分を噛みつかせて縫合した。
切開した部分は薄い赤い線と、縫合アリの頭だけが残った。
「縫合アリの残った頭は、切開した部分が塞がる頃には乾燥しているから……手で払えば簡単に落ちるぜら」
「あんた、凄い名医でオレの命の恩人だ。この星で困ったことがあったら遠慮なく言ってくれ、恩返しがしたい……オレは【
「極刀組? ヤクザぜらか?」
◆◆◆◆◆◆
ミスジ・ハラミと、要塞船のロボット料理人の源サンは、源サンの古い知人の『カラクリ人形料理人』の店で出された料理を眺めていた。
木目模様の顔をした、カラクリ料理人が江戸っ子調の口調で言った。
『さっさと、食べやがれ。料理がマズかったら料金はいらねぇ!』
出された料理を食べる源サンとハラミ。
天井を向いた源サンが、口から光線を発射しながら叫ぶ。
「うまいぞぅぅぅぅぅ!」
腕組みをしたカラクリ人形の料理人が、自慢気な口調で言った。
『口から光線出しやがったな、どうだオレの料理はうめぇだろぅ──そっちの皮鎧を着た、嬢ちゃんはどうでぇ』
ハラミが料理を食べながら答える。
「美味しいです、和の繊細な味わいが絶妙です……これ、なんて名前の料理ですか?」
『美味かったら口から光線吐きな……その料理の名前は〝本物親子丼〟ってんだ。具材のバリエーションで〝兄弟丼〟とか〝姉妹丼〟なんてのもできるぜ』
「本物親子丼? 詳しく教えてください」
『難しいコトはねぇ、親鳥が生んだ実卵を使って、親肉と子供を煮込んだ料理だ……この店の名物だぜぇ、恐れ入ったかべらんめぇ』
この時、カラクリ料理人の木目顔にかげりが現れたのを、ロボット料理人の源サンは見逃さなかった。
「どうした、木目の色が悪いぞ……心配ごとがあるなら、相談に乗るぜ」
『源には隠せねぇな、お見通しか……実はな、半年前に
カラクリ人形料理人の話しだと、良心的なカラクリ金融人から、店と土地を担保に借金をして女房の部品を新品に交換したらしい。
『やっぱり、女房と畳は新しい方がいい……催促無しの後払いで、問題なく今までは支払ってこれたが。最近、借金の証文が獄刀組に奪われて渡った途端に、来月末までに利子を含めた全額を支払えと通達してきやがった……払えなかったら土地と店を引き渡せと』
「ひでぇ話だな、その獄刀組ってのは」
『まったくだ、獄刀組は、この場所に博打場を造るつもりらしい』
カラクリ人形料理人は、タメ息をもらしてから話しを続けた。
『それだけじゃねえ、オレの娘もついでに引き渡せと言ってきやがった』
トコトコと、全長四十センチほどの、お茶運びカラクリ娘人形が近づいてきて言った。
『お茶でございマス』
ハラミがお茶碗をお盆から取ると、お茶運びのカラクリ人形娘はUターンをしてもどっていった。
途中で一回止まると、クルッとこちらを向いて、カラクリ人形の料理人に向って言った。
『おとっつあん、オカユができたわヨ……冷めないうちに食べテ』
『いつも、すまねぇな、お加代……おまえには苦労ばかりかけちまって』
『ソレは言わない約束でしョ……アタイさえ獄刀組に行けば、この店モ』
少し怒鳴り気味の口調で娘に言う、カラクリ人形料理人。
『バカなコトを考えるんじゃねぇ、おまえは何も心配するな』
店外の通りを昭和のオート三輪と、江戸の飛脚が通過していくのを見ながら、黒いオイルの涙を流した源サンが呟いた。
「本当にひでぇ話だ。この世の中には、神も仏もいねぇのか」
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