ハイプリエステスの肖像

remono

ハイプリエステスの肖像

これは夢の中に落ちてきた話である。真実かどうかはわからない。

だが真実らしくもあるのでここに書き留める。


語るのはタロットでおなじみの二番目のカード、女教皇である。

このカードには色々と逸話が多い。

当然ながら、ローマ教皇に女性がなったことは未だ無い。少なくとも公式見解では無い。

ではなぜ女教皇と訳されるのか。


私の知るところに依ればそれは女性の偽教皇ヨハンナの民間伝承から生まれている。発生あるいは文書で記載されたのはたしか13世紀ぐらいだったはずだ。しかし有りもしない女教皇がただの民間伝承だけで発生する物だろうか。


タロットの骨子はキリスト教の発生以前、あるいはキリスト教の外から持ち込まれた概念であり、2番のカードだけキリスト教の枠に入らなかったとも考えられる。確かに女性の高位祭司などはキリスト教以外の宗教では普通に見られるし、最高祭司が女性であるというのもあり得る話である。それをキリスト教が取り入れるにあたって何らかの作為が必要だったとも考えられる。つまり、偽伝があるからカードが生まれたのではなく、カードがあるから偽伝が生まれざるをえなかったと。


ここからが夢で見た話である。夢の中で女教皇は一人のおてんばな娘だった。魔術師の元で働き、その知恵をいくつか学び、そうしてその魔術師を殺して自らが知者であると騙った。人びとはそれを信じ女を神のようにあがめた。慢心した女は圧制者として人びとに君臨した――というのが夢のあらすじである。


この話に依ると女教皇は魔術師の殺害者、あるいは知恵の盗人と呼ぶべきだろう。あるいは魔術師の妻、なのかもしれない。


そうすれば男女の知恵者(魔術師、女教皇)と男女の権力者(女帝、皇帝)が次の5番目のカード、法王で統一される。キリスト教的に美しい構図のように見える。

だがそれも完璧ではなく6番目のカード、恋人によって崩れ去る運命を秘めている――というのはうがった見方だろうか。


最後に断っておく。これは夢の中に落ちてきた話である。真偽の程は不明である。

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