『デートの行き先は、思い出の場所に』
「ねえねえ」
「ん?」
ガタンゴトン、ガタンゴトン、と走る電車の中で
「私と離ればなれだった間にさ、紅太は……彼女とかできたりした?」
電車の外に広がる窓の景色を眺めながら、
「なんだよ急に」
「いいから教えてよ」
知りたいの、と
無言の圧が真隣からじんじんと伝わってくるのがわかる。
「さぁ、それはどうだろうな」
と、どっちつかずの答えを口にした
「なんではぐらかすのさぁ。教えてくれてもいいじゃんか。幼馴染なんだし、気になるのは必然じゃない?」
言いながら、今度は逃がしはしないと言う意思を込めて、
無理に話題を逸らそうとしても今回は逃がしてはくれなそうだ。そう言う意思が嫌と言うほど感じた。
「……いたことないよ」
と、そう淡々としたトーンで答えた。
すると、
「なんで聞いた側がつまらなそうにするんだよ」
「べーつに」
「そういう千春さんはどうなんですか? 彼氏のひとりやふたりはいたんだろうな?」
すると、
「どっちだと思う?」
と、楽し気にそう口にした。そんな今の
そんな、
季節の移り変わりを感じさせるような風が、
「……まあ、いたんじゃないか?」
小悪魔から逃げるように、自分の足元へと視線を逸らした
「なんでそう思うの?」
「それは、まあ……」
「それは?」
今回も逃げれそうにはなさそうだ。恐ろしい悪魔だ。
「もちろん、なんとなくだよ」
「なんとなくって……そこはさ、千春はかわいいから、とかが普通じゃない?」
「そんなのが普通でたまるかよ」
「ほんと、紅太は素直じゃないなぁ。私の事めちゃくちゃ可愛いって本当は思ってくれてるくせに」
「はいはい」
「それでどうなんだよ、結局は」
「やっぱり紅太、知りたいんじゃん」
「別に答えなくてもいいけどな」
「ほんと素直じゃないところは変わらないね。今も昔も」
懐かしむようにそう呟き、千春は窓の外に顔を向けると、
「いなかったよ。今まで、ずっと」
と、他人事のように口にした。
その言葉に、
「あれ? もしかして今安心した?」
しかし、無情にも
「なんでだよ」
「ねえねえ、安心したよねぇ~?」と、通路側に視線を逸らす
楽し気な表情でからかってくる
「……」
その様子を横目に、窓の反射越しに見えてしまった
どうして安堵したのだろうか、と。
だけど、それは、すこし離れた窓の反射越しを横目で見えたのに加えて一瞬の出来事だったがために、見間違えと言う可能性は十分に考えられるのだが。
それでも、一度おぼえてしまった違和感は
「あ、そろそろだよ、目的地」
到着するのは、最寄りの公園の名前がそのまま名付けられた、
電車からホームに降りた途端に、生暖かい潮風が肌を撫でるのを感じる。
「ここって……」
「デートの行き先、ここからもうすぐだから」
と、
それはつまり海のある方向。
その先に見えるものと言えば、海を背面にして造られた大きな三角形の建物、さきほどあとにした駅の名前と同じ公園が隣接した水族館だ。
目的地を目指す
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