『春の終わり、幼馴染と再会』
約束の時間までは、多少の余裕はまだある時間帯。
服装選びには別に迷いは生まれず、適当に普段からも着るようなコーデに決着した。
変に気合を入れたような感じの服装を仮にも選んでしまえば、
それはなんとしても回避しなければならない。
途中、
電車のドアが開くと、乗車する人たちが一斉にホームに降り立ち、今度はそこに新たな乗客が追加される。
その間をかいくぐりながら、
山陽姫が丘駅の建物は百貨店であり、駅のホームはその二階に位置する。
百貨店兼駅の建物を出るとそこから少し進めば、緑の芝生が特徴の広場にたどり着ける。
そこが
すると、ステージの脇にそれらしき女性が目に留まった。
その人物は、山陽姫が丘駅の方面と、また別の駅であるJR姫が丘駅の北口から広場前に出てくる人混みの中から誰かを探しているような雰囲気に見えた。
スマホを手に持ちながら、百貨店の出入口を、今度はJR姫が丘駅の北口付近をとちらちらと確認する様子。
そのため、案の定、
しかし
一方の彼女も、
そこで
「……」
「……」
しばし、ふたりの間に沈黙が流れたあと、さきに言葉を口にしたのは再び
「久しぶり、だね」
照れくさそうに
「ああ、久しぶり……」
その仕草に、
「もう、あれから四年、くらいだよね? 私と紅太が中学生になりたての頃だったから」
「そうだな。もうそれぐらい経つか」
「紅太、だいぶ身長伸びたね」
「まあ、明日からは高二になるしな」
恥ずかしさを紛らわせようと、そんなことを口にする。
「昔は同じくらいだったのにねぇ」
と、余りの左手を自分の頭の上に乗せ、「紅太だけそんなに身長伸びててずるいなぁ」と、不満を口にした。
「別に千春だって伸びてるだろ」
と、
「それに、すこし男らしくなったかな?」
自身の頭の上からも手を引っ込めると、
「部活とかなにしてるの?」
「特になんも」
「そーなんだ。中学はサッカーだったよね? たしか」
「二年の途中でやめたけどな」
「なんで?」
「まあ簡単に言えば、周りとのレベルの違いだな」
「そっか」
「今したら一分も無理かも」
あはは、と笑う
「そう言う千春は……」
言いながら、
春らしいピンク色のボリュームカーディガンに、その下はシンプルな白のTシャツ。ボトムスはベージュのワイドパンツ。ピンクとベージュで春らしさである穏やかさを演出し、かわいらしさがしっかりとありつつ大人っぽさも兼ね備えた『春』と名の付く
それに服装をなしにして見ても、
しかし、そんな
「どうかした?」
と、
「いや……千春も昔と比べたら大人っぽくなったなって」
「本当に? 今、ちょっと変な間があったと思うけどなぁ?」
疑うようにすこし目を細めた
「気のせいじゃないか?」
「本当?」
「ほんとに思ってるよ」
「そ、そうかなぁ?」
すこし照れながら、えへへ、と
だから今は、
「まぁ四年だからね。私だっておとなに成長してますともよ」
その言葉に反応してか、
これは男の
「それで、このあとの予定はなにか決めてるのか?」
「まぁ考えてるよ。やっとこうして紅太とまた会えたから、今日は紅太とデートをしてあげようかなと思いましてね」
「僕は別に頼んでないけどな」
「ほら、つべこべ言わずに行こ?」
小さくて暖かな手。昔は同じぐらいのサイズでよくお互いの手を合わせて大きさを比べたりもした。だが今では、
「どこ行くんだよ」
「それはまだ内緒」
前を向いたまま答えた
軈て、駅のホームにやってきた電車に
車内には空席がちらほらと見られ、窓際の席に
その後、扉をしめるアナウンスが流れると、電車はゆるやかに乗客それぞれの目的地を目指して動き出した。
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