第2話 芋の姫と聖人君主とミーティング
次の日はボチボチ授業も始まり多くの者には日常が流れ始めていた。
俺はと言うと昨日の部活見学の事が頭から離れず授業も全く頭に入らないまま昼休みになってしまった。
「享介一緒に食おー! 昨日別棟どうだった?」
「あー、えぇっと、そうだな、いい感じ?」
「そっかぁいいなー俺昨日からもう練習入らされそうなったんよ」
「大変だな」
そんな話をしながら昼食を済ませる、部活の事が気になり五、六時間目の授業もあまり記憶には残らなかった。
「俺ハンド行ってくるわ、享介は?」
「本館の部活まだ見終わってないしそっちも軽く覗いてから決めるわ」
「おうじゃーな」
教室を覗きながら校内を歩き回る、部活の数は多く多種多様な物が取り揃っているが目に留まる事はなく気がつくと校門まで歩いていた。
次の日、学校も四日目となってくるとだんだんクラスの中でグループができ始めていた、陽キャ・陰キャ・バカ・ヲタク・などなど、あと俺のような孤立組。
「おはよお‼︎」
健のようなどこにでも入れる奴。
既に係や生徒会役員などは決め終わり一日中授業がをする日々が始まった、昨日は便利部と言うイレギュラーのせいで授業が頭に入らなかったが一日経って落ち着くと元々自分の学力に対してそんなにレベルの高い学校選んでいないため適当にノートを取っていれば然程苦労するような内容ではなかったのでホームルームまではすぐに時間が経つように感じた。
「明日で金曜日なので皆さんぼちぼち部活を決めて来週の月曜日までに入部届を提出してくださーい、はい学級委員号令!」
「起立、礼」
「「さようならー」」
そしてまた一日が終わる、いや部活熱心なものからすると始まったとも言える。
何かこれと言って趣味は無く運動部に入る気もない俺はどの部活を見ていても入部する気にはならなかった、今までもなんとなく流行っているソシャゲを入れてみたり、なんとなく流行りの芸人のネタを見てみたり、そんな俺のなんとなく人生のツケがここで回ってきたのだろう、気づくと俺は便利部の部室の前に立っていた。
「結局ここか」
そう呟き無駄に緊張して唾を飲み込み鼻から力任せに息を吸い込みドアノブをひねる。
ガチャッ‼︎
ドアノブがわざとらしく音を立てて自分の心情を伝えたような気がした。
「失礼しまーす」
覗き込むようにして顔を出す。
「いらっしゃいませ」
部室には誰もいなかった、全員便利部の活動で出払っているのだろうか、やはり心の内では何か期待していたようで宮下先生やあの男に興味が出ていたのだろう、とりあえず一昨日座った椅子に座り一息つく。
コトッ。
「お茶でよかったかしら?」
「はいありがとうございます」
お茶を飲むと想像以上に自分がこの場所に気を取られ喉の渇きすら忘れていたことを知らせる。
「今回はどのようなご用件で?」
「あっはい僕は依頼人じゃなくて仮入部っていうか見学みたいな感じです」
うん? なんだこの違和感は、俺は今何と会話しているんだ?部室に人影は無い、だが俺の前には確かにお茶の入ったコップが置かれている、この部屋には今俺しかいないはずだ、もう一度部屋を見渡すがやはり人影はない、向かいの椅子には誰かの荷物があるが、荷物? いやこれは、ジャガイモ? 目の前の椅子に置かれていたのは巨大なジャガイモであった、頼むからこれ以上混乱する要素を増やさないでくれ便利部。
「そう、お客様じゃないのね」
そしてその声はもはや気のせいなどと言うものでは言い逃れできないものとなっていた、そうそれは、いや彼女は目の前にいた、自分の脳みそを激しく疑いたくなるが確かにそのジャガイモは言葉を発していた。
「オ客じゃネーナラバいつーもどりー話せばおーけおーけっ‼︎」
また癖強いのきたぁ。
なんなんだ次は土岡先輩だけじゃないのか、と言うか今度はなんだ芋⁉︎着ぐるみか?ロボットか?
「キュに黙り込んでドューしたア」
「えっとあのえとあーいや」
やべぇこれどうすれば正解なんだよ‼︎
ガチャッ‼︎
「ただいま戻りましたぁ‼︎ おぉ、お客さんか?」
「シニーセげけんげけでぃティオしてぃてぃ」
「そうだったんですね先輩」
そうだったんですね先輩だと‼︎
「あのえっと一体どういう?」
「あぁごめんね新入生君、見学だよねもうすぐ宮下先生帰ってくるから座って待ってていいよ」
把握してる、今のは言語だったのか、鳴き声かと思った。
「ありがとうございます、えぇと」
「あぁ名前ね、俺北倉太一、二年生ね」
「佐武享介です」
「あぁ君が土岡先輩が言ってた、開拓し甲斐のある子か、よろしくな‼︎」
開拓⁉︎
「でこっちが秋野麗華先輩、副部長ね」
「失礼を承知で聞かせて頂きたいんですけど、人間なんでしょうか?」
「俺も一年一緒にいてよくわかんないや、帰りのホームルームまでは人の形してるんだけどね」
「えぇ」
「とても良い人だから安心してよ」
「はぁ、よろしくお願いします」
「ポテトてヨンデネ‼︎」
ガチャッ
「ただいまー、あら佐武君来てたのね」
「おかえり!」
「オケェリ!」
宮下先生と土岡先輩、そして背の低い女子が部室に入ってきた。
「佐武君どお? 便利部以外に入りたい部活あった?」
「いえ、これと言ってしっくりくるものは、なのでもう一度こうしてきたわけなんですけど」
「そう、佐武君も入部するって考えて大丈夫かしら?」
「はい」
「じゃあみんな揃った訳だし多分もう新入部員来ないから一回座って自己紹介し直しましょうか」
机を囲むように座ると北倉先輩が全員にお茶を出して回った。
「土岡先輩火曜日以外で放課後いるの珍しいですね! 木曜は桃色さんのゲーム配信じゃなかったですか?」
「ああ、お前もわかってきたな、だが昨日Miss紗璃那からくるように言われていたので学校にくる前に準備を終わらせておいた」
「準備?」
「ああ戦の準備だ、木曜は二十二時なのでな。」
「そうだったんですね」
北倉先輩は聞き上手なんだなと考えているとお茶が出揃い先生が話を始めた。
「改めて、享介君葉菜ちゃん便利部の顧問の宮下です、じゃあ部長から自己紹介していってくれる?」
「うむ、二人とも既に挨拶済みだが改めて、土岡秀樹だ、火曜以外の日は基本的に戦に行くので不在だが今後ともよろしく」
「アティシぽていとぅ副ブチョイでけども気軽にへねしけけてれ!みにーよろすく」
「俺は北倉太一」
説明してくれないんだ。
「二年生だから三年生を支えつつ一年生を引っ張れるよう膳所する、よろしく」
絵に描いたような聖人だな。
「じゃあ一年生享介君からお願い」
「佐武享介です、えっと部活についても学校についてもわからないことが多いので先輩方とコミュニケーションを取れると嬉しいです」
「はい次葉菜ちゃん」
「はい‼︎ 三崎葉菜です、えっとみなさんと仲良くなれたら嬉しいですよろしくお願いします」
なんだかポワポワしたオーラが見えそうな子だ。
「はいみんなありがとう、改めて私から部活の説明をします、この部活は校内の清掃を主に生徒教師問わずお願いされた事をする言ってしまえば何でも屋さんみたいなものです」
「先生‼︎ この部活の本質的な部分は説明しないんですか?」
「太一君は本当に優しいわね、でもそれは仮入部期間が終わってからかな、はいじゃあ説明終わり!今日はもう依頼もないし自由で良いわよー」
「うむ僕は帰宅する」
「はーい気をつけてねー」
北倉先輩は課題を始め芋は窓の外を見つめ始めた。
「ねぇねぇ佐武君、さっきあの女子の先輩なんて言ってた?」
「三崎さんだったよね、僕もよくわかんないんだ、そもそも人間かすら定かじゃないし。」
「よかったぁ、誰も説明してくれないから私がおかしいのかと思っちゃって冷や汗が止まらなくて」
「僕も三年生二人には困惑させられっぱなしだよ」
「よかったぁ、あの連絡先交換してもいい?」
「あぁいいよ」
「先輩方も交換しませんか?」
連絡先を交換し土岡先輩のも北倉先輩に教えてもらった。
「グループチャット作って入れておくね」
「お願いします」
「お願いします‼︎」
「いやー後輩ができて嬉しいなー俺、この部活ここ数年でできたばっかりみたいでさ去年も先輩と俺の三人だけだったんだよね」
「そうだったんですね」
「まぁ先輩も良い人たちだしやってて楽しいんだけどね」
あの先輩と三人きりでどうやったらこの真人間が出来上がるのか疑問視せざるをえない。
その後も世間話なんかをしながら時間を使ってから帰った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます