第23話 決闘、再び!?
「ダメなものはダメさ!!」
アタシはもう何度言ったのか分からない言葉を、また勇者に向かって吐く。
「そ・こ・を・な・ん・と・か!!!」
勇者もまた、もう何度言ったのか分からない言葉をアタシに向かって吐く。
「ダメったらダメなんだよ!」
アタシは、そう言って勇者の胸ぐらを掴む。
このやり取り、もう何回目だよ……。
「いいかいっ!? アタシは、お前を……っ!」
殺すんだぞ!? という言葉が喉元まで出掛かったけど、それを飲み込む。
「いや、何でもないさ……。ただ、アタシに弟子入りするのはやめてくれ」
暗殺で最も危険なのは、
だから、
「じゃあ……。ボクと勝負してください。そして、ボクが勝ったら、ボクを弟子にしてください」
胸ぐらを掴んだアタシの手を振りほどきながら、勇者が言う。そして、こちらをキリっと見つめる。幼さの残る平たい顔立ちが、それでも男でいようとする少年らしさとしてアタシの目に映る。
「……………………あのさ」
アタシはそこで一旦言葉を切る。勇者はキョトンとした顔でアタシを見る。
「
アタシがそう言うと、図星だったのか、勇者は一瞬気まずそうな表情になる。それでも、すぐに表情を取り直す。
「それで、ボクとの勝負、受けるんですか?
それとも、逃げるんですか?」
そして、あろうことか、このアタシに向かって挑発をしてくる。
「いいだろうさ、勇者。そこまで言われちゃこの勝負、受けないわけにはいかないね。……だが、勇者。本当にいいのかい? アタシに勝負を挑んだことを、後悔することになるのかも知れないよ?」
アタシはそう言うと、構えを取る。
「……武器は必要ないんですか?」
勇者は「もちろん勝負をする」とでも言わんばかりの態度だね。
「武器なんぞ必要ないさ。さあ、いいから掛かってきな!」
アタシは発破をかける。
「じゃあ、遠慮なくいかせてもらいます!!」
そう言うや否や、勇者は手に持っている広刃剣を素早く突き出してくる。恐ろしく、素早く鋭い突き。
まさかの一撃に、意表を突かれて避けるのがホンのわずか遅れる。アタシの喉を貫くはずだった勇者の一突きは、それでもアタシの首をかすめただけだった。
コイツ……さっきのガンドロフとの決闘の時、本気を出してなかったのか……。
まさか、受付で最初に会った時から、アタシ狙いで……?
勇者の初撃を躱したアタシの視界に入ってきたのは、ニヤリと笑う勇者。
コイツ……。
アタシはすぐさま反撃の体勢に入る。
ところが、おかしかったのはそれからさ。
「ちょっ、ちょっと待ってください!」
さっきまでの威勢の良さはどこへやら。勇者は、急にあたふたし出す。
「アンッ!? 何だって言うんのさ!?」
勇者の異常なあたふたぶりに気勢を削がれたアタシは、勇者の顔面に向けて繰り出そうとした拳を急ストップさせる。……いつでも殴れる体勢のままね。
勇者は数歩後ずさりして、後ろを向いてしゃがみ込む。
「ステータスオープン。……ええっとぉ。さっき覚えたのが
勇者が虚空を見つめながら、何事かブツブツと呟いている。ステータスオープン? 必中技? 一体、何がどうしたって言うのさ……。
「スキル【
更に、勇者は虚空を見つめてブツブツとつぶやく。
「あのぉー……。勇者?」
どうしたのか気になって、アタシは恐る恐る勇者に声をかける。
「あのバカ神め……。スキル説明しっかりしろよ。ちゃんと仕事しろ、仕事」
まだブツブツとつぶやく勇者。呟きの内容が悪態じみてきた……。
…………えーと。
これ、どうしたらいいのさ……?
だけど、勇者が気づく前に退散してしまえばいいんじゃないのさ。
ってことに気づいたアタシは、そぉっと闘技場を後にする。
勇者は、もうアタシそっちのけでステータスがどうだのスキル説明がどうだのと、虚空を見つめて訳の分からないことををずっとつぶやき続けていた。
……ったく! 何がどうなってんのさ!?
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