第7話 絶世の美女2
え。
我は一瞬耳を疑った。まぁ、確かにそうなのだが……。
「はっ! 間違えました! わわわ、私、コノハナサクヤです!」
彼女は慌ててそう言うと、顔を赤らめ木の陰に隠れてしまった。
同時に「も~、私ったら!」と小さく叫ぶ悔恨の声が聞こえてくる。
一体どういう状況なのか。よく分からないがなんだか可哀そうに思えてきた。我はドウシンと目を合わせ頷き合い、彼女の隠れてしまった木の前まで歩みを進める。
「えっと~、どうもやで、コノハナサクヤちゃん。隠れんでも大丈夫やで~、君ほんまに絶世の美女やし」
「うむ、どう見ても絶世の美女だぞ」
とにかく一生懸命フォローした。ちょっとズレてる感じがしなくもないが、彼女は目に涙を溜め、恥ずかしそうに再び顔を出してくれた。
「ほ……本当ですか?」
我らはぶんぶん頷く。
「すみません。急にこんな。お恥ずかしいです」
彼女が話してくれたには、自分は絶世の美女という設定にされているが、そんな自信はないし相当なプレッシャーなのだということだった。
だからなんとか自分に絶世の美女であると言い聞かせ、思い込ませるようにしていたそうなのだが、いつの間にか癖のように口から出るようになってしまったらしい。
……他の神も案外大変なんだな。
「それは大変やったな~。びっくりさせてしもてごめんやったで~。実際絶世の美女ってのは間違いないけど、それは確かにプレッシャーやな~」
そう言ってドウシンは自然な流れで自己紹介をする。だから我もそれに続いた。
「まぁ! あなた様がかの有名なアマテラス様なのですね!」
コノハナサクヤは驚いて声を上げる。そして憧れの表情を向けてきた。
しかしそういった期待のこもった表情を向けられるのはなんとも居心地が悪いのだ。
「そなたも色々と大変なのだな。……我も、太陽神なんてプレッシャーだ。それと、様は付けなくて良いぞ」
「で、ですが……」
「せやな~。僕みたいにアマテラスちゃん、って呼べばええんちゃう?」
「ええっ? そ、そんな、恐れ多いです!」
「そう? でもコノハナサクヤちゃん、アマテラスちゃんと気ぃ合いそうやし、お近づきの印にええと思うねんけどな~。あ、せっかくやしコノハナサクヤちゃんってちょっと長いしサクヤちゃん、いや、サーちゃんにしよう! サーちゃんと、アーちゃんな! よし、じゃあまずはアマテラスちゃんからいこか」
ぬあっ?
いや我もそこまでくだけようとは思っていなかったのだが。し、失礼ではないのだろうか。いやしかし、我はドウシンのキョンシー。逆らうわけにもゆくまい。えいやっ!
「よ、よろしく頼む、サ、サーちゃん!」
思い切って言ってみた。
すると予想外に、ぱあぁ! と彼女の顔が明るくなった。非常に嬉しそうだ。思ってもみない反応に我も胸のあたりが温かくなる。
「はい! こちらこそです! アーちゃん!」
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