第2話 立場

 家を出て、学校に向かう道を歩く。幸運なことに僕の学校は歩いて10分くらいで着く近さだ。でもその道のりすらキツイ。当然だ。僕はあまり運動をするタイプではない。しかも能力を持っている周りと張り合えるほど運動神経もよくない。だから部活にも入っていない。


 そうしてしばらく歩いて学校に着いた。下駄箱に着くと周りに視線を感じる。いつものことだ。みんな無能力者の僕を見下している。


 そんなことも気にせずに自分の教室に向かい、扉を開ける。すると一瞬でさっきまで騒がしかった教室が静まり返りみんなの視線がこちらへと注がれる。そして数秒の静寂の後再び教室が騒がしくなった。しかし会話の内容は先ほどまでとは違うだろう。クスクスと僕に向けたあざ笑うような会話が飛び交う。


「ほら来やがった、無能くんだ。」


「チッ、今日もいるのかよ。早くいなくなればいいのにな。」


 クラスメイトの声が耳に入ってくる。いつものことだからか謎に安心感すら感じる。しばらくすると時間になり先生も教室にやってきてホームルームが始まっり5月の今明日からのゴールデンウィークの話が出てきた。午前の面倒な授業の終わらせ、昼休みになった。すると僕の席に2人の男が近寄ってきた。


「なぁ無能、ちょっと金貸してくんね。今すごい金欠なんだわ」


「当然いいよな?あ、もちろんお前に拒否権なんてないから。」


「いいだろ?みーなーと君」


 どうしようかと考え、周りを見てみると他のクラスメイトはクスクスと笑う人がほとんどだった。たまたま教室にいた担任の先生だって、見て見ぬ振りをしている。そう、この学校に僕の居場所はない。僕は諦めて仕方なく財布から3,000円を出して渡すと、そいつらは「ありがとよ」と言って機嫌が良さそうに笑いながら教室を出て行った。そうして昼休みが終わり午後の授業が始まった


 やっと放課後になり僕は見下すような視線背中に感じながらそそくさと教室を出て行った。そうして帰路についている途中の信号で立ち止まっている時に事件が起こった。


 突然道路の向こう側のビルの看板が落ちてきた。

「「「ガッシャッッンッ」」」と激しい音と共に看板の破片がこちら側まで飛んできて僕の頬をかすった。幸いにも下敷きになった人はいないようだが怪我をしている人はちらほら見える。

僕は瞬時にこれは能力者によるものだと理解し、『能力犯罪』この4文字が頭に浮かんだ。能力を使い犯罪行為をすることだがニュースで聞くだけで目の前で起こったのは初めてだ。しかし今はこんな事を考えている場合ではない。僕は能力がない。それは身を守るすべを持ってないことを指す。僕は体を180度回して急いで逃げた———が遅かった。


 気づくと地面に倒れていた。お腹の当たりがとても痛い。いや痛いなんてものじゃない。とても苦しい。だんだんと体が熱くなってきた。息ができない。かろうじて周りを見ると同じように倒れている人が何人もいた。みんな体から血を出している。体が真っ二つに切れている人もいた。それを見て今自分の体に起こってることを理解した。それと同時に意識がだんだんと遠のいていくのを感じた。


「クソが…ッ、なん…で……だよ。なんで…俺ばっかり」


 生まれてなんのいい事もなくここまま死ぬのかよ。

能力もなく、大して賢いわけもなく、運動神経も悪いこんな不平等でいいのかよ…おかしいだろ…。もしも神がいるならば殺してやりたい。そんな事を心で思っていたが現実は実に虚しくついに意識が途絶えてしまったーーー。

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