第3話 不審者侵入

俺は今、きっと暫く止むことの無いものと戦っていた。そう、『腹痛』だ。今担当している先生は素直に言えばきっとトイレには行かせてくれる。しかし問題はそこじゃない。今は能力値検査中だ。そこで、能力値Dの奴がトイレに行くと、ほぼ必ずサボりだと言われるだろう。まだ数人に言われるだけなら構わないのだが、1番避けたいのは、楓真に疑われることだ。アイツの事だ、きっと1度疑ったら、俺の弁解の余地なく決めつけるだろう。そうなった暁には、俺の筆箱の中身が寂しくなってしまうだろう。俺はかなり文房具にハマっている故、かなり値の張る物ばかりだ。それがアイツに奪われるのは流石に避けたい。しかし、もう我慢の限界だった。

そこで俺は1つの解決策を思い付いた。サボりを完全に認める事になるが、楓真を連れてトイレに行くことだ。多分あいつは、誘えば食い気味で了承してくれることだろう。よし、作戦決行だ。


「楓真〜。僕ちょっと腹痛でトイレ行きたいから、一緒にサボr...」

「まじ!?行く!!絶対!!今すぐ!!はやくいこう!!」


作戦成功だ。


「落ち着け。とりあえず、先生にトイレに行くことだけ伝えてから行こう」

「おっけー。おれ先行っとくで!」

「はいはい」


こうして俺は安全にトイレに行け、楓真はサボることが出来た。win-winだな。








「「「「「「ん??」」」」」」


能力値検査も終わりに差し掛かった頃、放送がかかった。


『校内に、不審者侵入。刃物と思われる物を所持しています。職員、生徒は、いち早くグラウンドに避難してください。繰り返します........』


「不審者!?やばい!どうするんだよ!」

「グラウンドに避難しないと!!」

「不審者が強かったら終わりだよ!やばいよ!」


生徒の焦りの声がそこら中から聞こえる。教師として、私がみんなを誘導して安全に避難させないと行けないのだが...


「皆さん落ち着いてください!!先程放送があったように、グラウンドに避難します。決して離れたりしないで下さい!」


とりあえずみんなを落ち着けるように声をかけるのだが、私も私で、落ち着いては居られなかった。数分前にトイレに行った長谷川くんと伊藤くん。きっと今の放送は、不審者には聞こえないよう、授業を行っている教室や体育館にしか聞こえない放送になっている。だから、あの二人が行っているトイレには今の放送は聞こえない。だから、あの二人は、素早く避難することができない。もしかしたら、不審者と対峙してしまうかもしれない。それが、不安で仕方なかった。

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