ある雪の日

 雪の降る日のことだった。

 ブルーはその日も仕事を終えて、過去の人が埋葬された場所に行くと花を供えた。

 これだけ寒ければ花も凍りついて姿を変えないだろう。


 帰り道に段ボールが落ちていた。

 よく見るとその中に子どもがいた。

 天使かと思った。

 かわいくて小さくて今にも死んでしまいそうだ。

 ああ。

 自分にこんな気持ちがあるなんて知らなかった。

 思わず声をかけていた。


「ハロー」


※※※


「遅い」


 家に帰るとむっすりとした顔でシルヴィーが待っていた。 


「ああ、ごめんごめん。なにか用事?っていうかなにか約束取りつけてたっけ?ごめん、シルヴィー僕忘れちゃってて!」

「なにも約束してナイ。クサい。シャワーして服着替えてコイ」


 いつもの調子でシルヴィーは言う。 


「……なんかシルヴィー怒ってる?」

「別に怒ってナイ。……ただお前が遅いから待ちくたびれたダケだ」

「ごめんー!」


 そう言ってなるべく早くブルーはシャワーを浴びてきた。

 赤い血が排水溝に流れていく。

 今日も疲れたなあ、でもシルヴィーを見ると疲れが吹き飛ぶと思う。



「なにかな?なにかな?シルヴィーが僕に用事ってなにかな?」

「うるサイ。ホラ」


 そう言ってシルヴィーはケーキを取り出した。


「なにこれ」

「……パンケーキのお礼ダ」


 えっなにそれ天使?シルヴィーかわいい。

 とか言ったらへそを曲げて口を聞いてくれなさそうなのでブルーはこらえる。


「あっ雪だ」

「雪みたいだよナ、このケーキ」


 真っ白な砂糖が降り積もったケーキを見てシルヴィーが言う。 


「じゃなくて外!降ってきた」


 しんしんと雪が積もっていくのを見てシルヴィーは嫌な顔をした。 


「シルヴィー雪嫌いだっけ」

「寒いのはキライだ。今夜は泊まっていってイイカ?帰るのメンドーになってキタ」

「ウェルカムだよ!毛布たくさん用意するね!」


 寒空の下、二人はケーキを食べながら仕事の話は抜きで温かい時間を過ごした。


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Bad kitty 錦木 @book2017

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