第3話 幼馴染と顔出し配信開始
夕食を再び海本家でごちそうになった和弘は七海と共に配信部屋で配信の準備をしていた。
今日は普段は使わないカメラも持ち出しているのでなんだかいつもとは少し違う空気が流れている。
「もう少しで配信開始の時間になるけど大丈夫そう?」
「うん!ばっちり!」
顔出しをするとなっても七海に緊張の色は見えない。
それどころか少しワクワクしているようにも見えた。
「それじゃあ始めようか」
「はーい」
和弘はカメラやマイクがオンになっていることを確認し七海の隣へと移動した。
いつも配信するときは2人並んで座椅子に腰掛けてテレビに向かっているのでカメラやマイクもそっちに持ってきている。
「音の大きさは大丈夫かな?皆さんこんばんは!ナナミンだよ!」
「こんばんは。カズです」
ナナミンとは七海のチャンネル内での呼び方であり和弘がカズだ。
とりあえず手探り状態での顔出し配信なので和弘は隣の七海を真似して笑顔で手を振っておく。
「今日はSNSでも告知していた通り初めての顔出し配信だよ!予想通りの顔だったかな?あ、でもブスとか言うのはやめてね?泣いちゃうから」
コメントが今までに無いくらい動きまくっている。
『かわいい』『美男美女やん』『予想以上に若い』とかそういうコメントが主立っていた。
普段はほとんどこないスパチャも数百円分いただいた。
「スパチャありがとね!それじゃあ早速ゲームに行こ〜!」
もう既にテレビの画面にはゲームが開かれている。
今日の配信は某大手企業が出している野球ゲームだ。
顔と足が大きく関節がない特徴的なキャラデザをしておりVチューバーとかもよく高校の監督になって甲子園を目指すモードを配信していたりする。
和弘も七海も野球未経験者だがこのゲームはかなりやり込んでいた。
「最初は私とカズが同じチームでCPと対決しながら雑談タイム!そのあとは私とカズの真剣勝負だよ!」
「できるだけ質問には答えようと思っているのでどんどんコメントを送ってくださいね。ただ個人情報とかそういう危ないのはNGです」
「それじゃあ早速行こ〜!」
対戦を選択してチームをおまかせで決め試合が始まる。
そして雑談タイムが始まった。
「なになに〜?『お二人はどういう関係なんですか?』だって!カズ」
「俺達は仲の良い幼馴染ですよ。幼稚園に入る前から仲が良くて今もこうやって一緒にゲームしてます」
幼馴染、というワードに心なしかコメントの勢いが増えた気がする。
気がつけばいつもより少し多めの人数が配信に集まっていた。
「次のコメントはえーっと……『幼馴染なんて素敵ですね!2人は付き合ったりとかしないんですか?』だって。あ、ナナミンごめん三振した」
「あはは、大丈夫だよ。私が
「ナナミンは可愛いと思ってるよ。でも付き合うとかはあんまり考えたことないかも」
「ふふっ、だよね。私たち幼馴染だけど一番の親友だもん」
七海は笑いながらホームランをバックスクリーンに放り込む。
和弘は三振してしまったので少しバツが悪くなりながらも再びピッチャーの球を見極めようと画面に集中する。
「次は……『2人は普段もこうやってゲームしたり遊んだりしてるんですか?』普段もカズとは一緒にいるよ〜!登下校も一緒だし放課後は一緒にご飯食べたりゲームしたりしてるよ!あとは私が甘えさてもらったりしてるの!」
まさか七海がそんなことまで言うとは思っておらず和弘は少しぎょっとする。
だが七海のほうは特に言って後悔している様子は無かった。
「わっ!スパチャありがと〜!なになに?『普段どうやってナナミンさんがカズさんに甘えてるのか見せてほしい』……う〜ん、いいよ〜」
「ナナミン本気!?」
「うん。だってお金も貰っちゃってるし別に危ないことなんてしてないからいいでしょ?それにこれも顔出し配信でしかできないよ?」
和弘は驚いて思わず画面から目を離してしまい見逃し三振する。
見つめた七海の顔は別に無理している様子は無かった。
「はぁ……わかった。いいよ、いつも通り好きにして」
「わ〜い!お邪魔しま〜す」
そう言って七海は和弘の膝の間に座り体とコントローラーの間に上半身を入れる。
まるでバックハグのような格好だが七海はこの体勢を気に入っておりゲームするときは割とこんな感じなのだ。
『この2人付き合ってないのに何してるん?www』
『ただの幼馴染です(棒)』
『距離感近すぎやろ笑 そしてナナミンがこんなくっついてるのに全く動揺しないカズに笑う』
「い、いいじゃん別に!友達だってこのくらいするもん!リクエストに答えただけなのにみんながからかうならもう雑談は終わり!ほら、カズ早く対戦しよ?」
「あ、あはは……皆さんあんまりナナミンをいじめないでやってください。拗ねたら後で俺が甘やかす時間が増えちゃうので……」
そう和弘が言うとコメント欄が沸き立ちいくつかスパチャが飛んでくる。
「み、みんなのバカ〜〜〜!!!!!」
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