第2話 幼馴染は一番の親友
共にスーパーに行き材料を買って、七海の家に帰ってきた2人は早速向かい合って席に着き七海が作ったチャーハンを食べ始める。
半日授業の際は七海の家で七海が作ったご飯を一緒に食べる、それが2人の日常だった。
「相変わらず七海は料理が上手いね。温かくて優しい味がするよ」
「あはは、温かいのは作りたてだからだよ〜!優しい味がするのは和弘はあまり濃い味付けが好きじゃないからあまり濃くないように意識したからかも?」
「もう、温かいっていうのはそういう意味じゃないのに。七海が俺のことを思いやって作ってくれるから温かいなって感じたんだよ」
和弘がそう言うと七海は照れたように少し顔を赤くして自分のチャーハンを口にいれる。
それが七海の照れ隠しだということを和弘も理解しているので自然と微笑みが溢れた。
しばらく2人の間に沈黙が流れるがそれは気まずいどころか心が落ち着く穏やかな時間だった。
「あ、そういえばあっちの調子はどう?何か変わったことあった?」
昼食を食べ終え、皿を洗っていた和弘がふと思い出し七海に質問する。
しかしその質問を聞いた七海はぐでーっと机に上体を投げ出した。
「全然ダメだよぉ……再生数もあんまり変わらないし登録者もほとんど増えてない……」
「あはは、そうか。まぁ気長にやっていくしかないかもね」
和弘が投げかけた質問は動画配信サイト『ようつべ』にて和弘と七海が一緒に立ち上げたゲーム実況チャンネルのこと。
元々ゲーム好きだった七海が勢いで配信に必要な物を買い揃え、和弘を誘ったのがチャンネルの始まり。
和弘もあまりゲームが得意な訳では無いが結構好きだし、七海とならどんなことでも面白そうだと思ったので協力することにしたのだ。
ちなみに編集は2人ともできるので分担である。
「うぅ……どうしたら人気出るのかなぁ……私たちなりに色々やってみてるつもりなんだけどなぁ……」
七海の弱々しいつぶやきに和弘は考えを巡らせる。
そしてタオルで濡れた手を拭き七海の頭を優しくポンポンとした。
「一度今までと全く違うことをしてみるのはどうかな?」
「全く違うこと……?」
「うん。例えば……今日の夕方にやる配信で顔出ししてみるとか?」
今どき顔出しをしている子どもの配信者も少なくはない。
それに自分たちの登録者は少ないわけだし失敗したらすぐにやめれば顔出しの影響もほとんど無いと言えるだろう。
そう考えて和弘は七海に提案した。
「顔出し……」
「もちろん七海が顔を出すのが嫌だったら聞き流していいからね。他にもできることってたくさんあるだろうし」
「……ううん!やる!私が和弘を誘ったんだし色んなことに和弘と一緒に挑戦したい!」
「そっか。じゃあ今日の配信は顔出しでやろう」
「うん!」
七海はさっきまでの少し落ち込んだような表情とは打って変わって眩しい笑顔を和弘に見せる。
どうやら自分の提案もする意味があったようで和弘はほっと胸を撫で下ろした。
「かずひろっ!ゲームしよ!ゲーム!」
「夕方から配信するでしょ?今もゲームするの?」
「和弘と配信するのも楽しいけど今は二人きりでやりたい気分なの〜!」
そう言って七海は和弘をゲームと小型テレビが置いてある配信部屋にぐいぐい引っ張っていく。
配信部屋と言っても七海の部屋に配信道具とテレビが置かれており防音性が高いわけではないので夜遅くや朝早くに配信することはできない。
ただそれぞれの座椅子が用意されているしこれでもかと七海が色んなものを揃えているので居心地はとても良い。
「今日は何やるの?」
「配信ではこのゲームをやる予定だから違うジャンルのやつがいいよね〜!それだとうーん……あっ!これとかどうかな?」
そう言って七海が和弘に見せたのは色んなゲームからファイター達が集まって乱闘するゲームだ。
このゲームは王道にして相手をふっ飛ばすか落とすかの超シンプルながらコンボは無限大の可能性を持ち一言で言い表せないほど奥深い。
和弘は頷きソフトを差し込んだ。
「いいよ。今日こそは俺が勝つから」
「ふふん。今日も私が勝つもん!」
和弘はゲームの才能が無いのかいつも七海に負けているが好きで負けているわけではない。
今日こそはとリベンジの炎を燃やしていた。
合図と共にお互いのファイターが動き出す。
和弘は重量があり一発の攻撃力が高いファイターを選びそれとは対照的に七海は一撃は小さくとも素早いキャラを好む。
「くっ……!攻撃が全然あたらないんだけど!?」
「ふっふーん!和弘がここで大きな一撃を狙ってくるのはわかってるからね!って嘘!?なんでその緊急回避を読まれてるの!?」
「七海はコンボが繋がったときほど慎重になるからね。このくらいはわかるさ」
「むぅ!絶対負けないもん!」
2人は夕食の時間までゲームに熱中した。
ちなみに勝利数が多かったのは七海だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます