幼馴染とゲーム実況してたら初々しいカップルチャンネルだと思われてバズった
砂乃一希
第1話 幼馴染と書いて夫婦と読む
都立
そこそこの偏差値とそこそこの設備を持つそこそこ人気の高い学校であり近隣の中学校出身の者はこの学校を目指すことが多い。
だからこそ──
「なあ和弘!今日の放課後、時間あるか?」
入学初日にも関わらず積極的に会話が飛び交う。
話しかけられた男子──
声をかけてきた明るい男子は和弘の中学生からの友達である
「千秋、どうしたの?何か今日あったっけ?」
「いや、ハンバーガーでもどうかと思ってな。今日は半日だし昼食がてらどこか遊びに行かないか?」
千秋の提案はありがたいし魅力的な提案だけども今は頷くわけにはいかない理由が和弘にはあった。
「あーごめん。その、今日はちょっと……」
「ん?何か用事でもあるのか?」
「申し訳ないんだけど先に約束しちゃってて……」
その言葉で千秋は誰のことかピンときたらしく納得したような表情になる。
そしてポンと一つ手を叩きニヤニヤと始めた。
こういうときは大抵からかわれるときだと和弘はわかっているため少し身構える。
「それはしょうがないな。友情より愛情を大事にするべきだと思うぜ。俺だって彼女ができたらそうするしな」
「はぁ……俺達はそんなんじゃないよ。ただの仲の良い幼馴染だから」
「またまたぁ。そんな嘘を俺につかなくったっていいんだぜ?俺とお前の仲だろ」
和弘は『本当に違うんだけどなぁ』と内心思いつつ中学のときから何度もこの会話を繰り返してきており千秋も冗談で言っている感じのノリなのでスルーしておくことにした。
そのまましばらく雑談を楽しんでいるとポンと弱めに肩を叩かれる。
「おまたせ、和弘。待った?」
振り返るとそこにいたのは物語の中から飛び出してきたかのような可愛らしい美少女だった。
肩甲骨辺りまで伸ばした明るい茶髪、活発そうに見える少しだけ上がった目尻、形の整った鼻と口、愛嬌のある笑顔とどこをとっても可愛らしい。
「七海、大丈夫だよ。千秋と話してたし全く待ってないから」
「そっか。私の用事は全部終わったからこれでもう帰れるよ」
和弘に話しかけた女の子──
和弘が言っていた先客というのも彼女と約束したからである。
「俺は帰るタイミングはいつでも大丈夫だよ。入学初日だし気になる子とかいれば声かけてきたら?」
「ふふ、実はさっきついでにみんなと連絡先交換してきたんだ〜」
七海が見せてきたチャットの連絡先には見覚えのない名前がずらっと並んでいる。
ただ名前を全然覚えきれていない和弘からすればよくこんなに早くその人数と連絡先が交換できるね、と正直思ってしまう。
「相変わらず2人は仲良いな。流石中学校時代おしどり夫婦として名を馳せただけのことはある」
「「名を馳せてない!!」」
「ほら息ぴったり」
千秋は悪気の見えない屈託なく笑う。
そんな親友の様子に毒気を抜かれ和弘はため息をついて七海に向かい合う。
「はぁ……まあいいや。七海、帰ろうか」
「うん。今日のお昼ご飯はチャーハン作るからね。材料少しだけ足りないから帰りにスーパーだけ寄らせてほしいな」
「おっ!七海の作るチャーハンは美味しいからなぁ……今からお腹が空いてきちゃうよ。荷物持ちは俺がするからついでに何か家で足りないものとかあったら遠慮なく買っていいよ」
「えっと……お前ら本当に夫婦か何かなの……?」
「「幼馴染だけど?」」
「だからさっきからそんな息ぴったりで何言ってやがるんだ!俺は信じないぞ!?信じないからな!?」
和弘と七海は揃って首をかしげその様子を見て千秋が再びため息をつく。
そして呆れたようにひらひらと手を振った。
「ほら、もう帰れ帰れ。イチャイチャする時間が無くなっちまうぞ」
「別にイチャイチャなんてしないけどね」
「またそれ振り出しに戻るだろうが!」
「ふふ、じゃあ和弘。帰ろうか」
「それもそうだね。じゃあ千秋。また明日」
「おう。また明日な」
和弘たちは千秋に挨拶をして教室を出る。
そしていつも通りの道をいつものように2人並んで歩く。
「ん〜!入試のときも思ったけど
「あはは、そうだね。七海すっごく勉強頑張ってたし一緒に入れて良かったよ」
七海は和弘に笑顔を向けながら自分の制服のスカートを確認してひらっと一回転する。
確かに遊星の制服は七海にとても似合っていて可愛らしく和弘も年頃の男子高校生なので一瞬心臓がドキッと跳ねる。
「ほら、そんなにはしゃがないの」
「はーい。あっ!スーパー見えてきたよ!早く行こっ!」
七海は数秒前に言われた和弘の注意を忘れたかのように和弘の手を取って走り出す。
そんな七海の姿に和弘は苦笑しながらも走ってついていくのだった。
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