第31話 クッピト男爵の憂鬱2

蜘蛛の子を散らすみたいにいなくなった。


「ムール、さっきのはなんだったの?」


「さあ?」


「なんだか邪魔しちゃったみたい。」


「ちょっと可哀想だったかな。」


サーフラが呆れている。


この人達何にも自覚がないのね。



「スーリゲーブよ、作戦は無事失敗したのじゃな?」


商人風の男は首を傾げている。


これって怒られてんの?

褒められてんの?

なんか失敗して喜ばれているって何?


これなら皇帝に怒られないで済むかも。


男爵はほっと胸を撫で下ろした。


「うひひー。」


変な笑いが出た。


出入りの商人が不思議な顔をしているので皇帝からの布告を見せてやるとスーリゲーブと呼ばれた商人の顔が真っ青になった。


「クッピト男爵様やばいところでしたね。でも私思うんですけどあれって本物の勇者だったのかなって。」


「勇者の額当てをつけていたのだろう?」


「それなら本物だ。勇者の紋章のついた装備は勇者以外は身に着ける事が出来ないのだから。」


「勇者には何もかもお見通しなんですね。まさかあんなところで現場を押さえられるなんて。こわー。」


「まさかわしの他にも同じような事を考えている者がいなければいいのだが。」


「そんなに勇者ってやばいんですか?」


「伝説を知らないのか?」


「まあ、聞いたことはありますけど。」


クッピト男爵は恐ろしいものを見たような顔をして言う。


「そんな昔の事でもないんだ。子供を集めて虐待していた上級貴族が領地ごと消えてしまったり、侵略の用意をした国がなくなってしまったり、王家が滅ぼされたりそれはもう人間技じゃないんだ。」


「もしも、勇者が今回の事で怒ったりしたら....。」


スーリゲーブは今になって震え上がった。


まずい、まずい、まずい。


スーリゲーブは友人の商人にこの作戦をお勧めしていた。


「クッピト男爵のご機嫌を取るのにいいと思うぞ。」


とか、どーしよー、どーしよー。


商人は慌てて男爵のお屋敷を飛び出した。


その頃スーリゲーブの友人の商人エジサスは。


「スーリゲーブ先輩いい事教えてくれたー。」


さっそく知り合いの冒険者を募ってダンジョンにいく事にした。




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