第23話 フェンリル
パエリとサーフラお嬢様をおんぶして飛ぶわけにもいかないのでインベントリから馬車を出した。
客車を引っ張るのはゴーレムの馬なので手がかからない。
客車自体も舗装もされていない道を走ると振動が激しくて乗っていられないので少し地面から浮き上がる魔道具を取り付けてある。
摩擦による負荷がないので少しの推力で動く。
ゴーレムの馬だけれど楽なんじゃないかな。
さっそく乗車しよう。
客車内は空間拡張してあるので3人乗っても余裕だ。
3人?。あれ4人いるぞ。
オレと同じぐらいの年頃の女の子がパエリにくっついてフサフサのしっぽを振っている。
そしてピンとたった小さな耳。
でも、これは獣人じゃないね。
まだ動いていない馬車の周りで獣人達が地面に手をついて「聖獣様。聖獣様。」ってつぶやいている。
ゲームだとバカでかい犬が画面左からドーッと走って来るんだけれどリアルではこれか?
かなり意表をつかれた。
「おい、フェンリルお前出てくるのが少し早くないか?まだ大森林で迷うってイベントをやってないぞ。」
「なんだー。ちっこいのが偉そうだな。聖獣様だぞー。」
「こいつこんな感じだったっけ?こいつが従うのは勇者にだけだから他の者に対する態度ってこんなもんなのかも。」
「あら?こんな子が紛れ込んでいるわよ。」
パエリはそう言ってフェンリルを抱え上げると馬車の扉を開いて外に出す。
「お母さんいるー?迷子になっているわよー。」
獣人族達が顔を上げて困惑しているようだがパエリは全く意に止めず扉をパタンと閉める。
「しゅっぱーつね。」
ゲームではあのフェンリルの背に乗って大森林を突っ切ってエルフの里に行くんだけれどな。
扉を開けてフェンリルが客車に入ってくる。
「ようやく会ったんだから置いていかないでよ。碧の貴石を持っているでしょう。」
パエリがオレの方を向いて言う。
「これってゲームのイベントってこと?」
フェンリルはやっぱりパエリだけにくっついてしっぽを振っている。
「この子、パンを食べるかしら?」
パエリの周りを走り回っている様子はまさにワンコ。
白いポメラニアンって感じだ。
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