第22話 大丈夫

熱々のうどんの出汁をフーフー言いながらすする。


パエリがポトリとテーブルの上に涙を落とした。


多分、元の世界をうどんで思いだしてしまったんだろうな。


オレも思い出さないことはないけどショック耐性のステータスが高いせいかさほどはつらく感じない。


だけれどパエリはレベル1だしどう感じているのかわからない。


まさか異世界でうどんなんて食べられるとは思わなかっただろうし。


「寂しい?」


ってパエリに聞く。


「美味しい。」


ってパエリが答える。


「寂しくて涙が出てんじゃないの?」


「鼻水。」


「ムールがずっと一緒なのに寂しくなんてないわ。」


きっと他の人から見たら茹でタコみたいに赤くなっているんだろうな。顔がすごく熱い。


「ムール、照れたの? かわいいー。」


「あーっ、いたーっ。あんた達ひどいじゃないの私だけ置いて行くなんて。」


なんでこんなところにサーフラお嬢様が?


「私はこのちっちゃいののお嫁さんで勇者の仲間だって父が言っていたわ。」


それ、話しの前半しか聞いていないね。

ワーリク侯爵にはお断りしたんだけどな?


「エリミリア様に送ってもらったのよ。」


あの大聖女なんでもありか?


「サーフラ、あんた勇者について行くのはいいけど、あんたはいったい何が出来るのって大聖女が言ったの。」


「そうか、サーフラにも何かスキルがあるのかもな。」


「ないわ。私は普通のただのお嬢様よ。」


なーんにも自慢になっていない。


「で、ただの普通のお嬢様がどうして来たの?」


「まあムールがいるし、別にいいか?何か多少できたからってなんも変わらないしね。」


「って大聖女様が言ってムール達が絶対ここに来るからって転送してくれたの。」


「大聖女様の言う通りね。」


来ちゃったものはしょうがないってんであまり手がかからないようにインベントリから色んな魔道具を出してサーフラお嬢様につける。


魔力を強化して色んな魔法が使える様になる腕輪。


迷子にならないように目印になるアンクレット。


結界を張るティアラ。


死にそうになった時身代わりになる指輪。


指輪の時だけ「つけろ」って言って指を出して来たので無造作に嵌めてやる。


サーフラが唇を横に広げてにーっと笑う。


その様子を見ていたパエリも指を突きつけて来る。


「パエリはこんなのなくても大丈夫だろ?」


いいからつけろって目が怖い。


まあ、欲しいんならあげるけど、沢山持っているし。


パエリの指にも嵌めてやるとパエリも唇を横に広げてにーっと笑った。


「あんた知らないの?」


「なにを?」


「あんたが私達の指、特にこの指に指輪を嵌めたってことは私達をあんたの妻にしたってことよ。」


「は?そうなのか?」


サーフラが思いっきりうなづいている。


それはー。あー。


いいけど。


オレ幼児だぜ?

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