第21話 キツネうどん

「あいつら寝たみたいだな。」


姉弟だろうか少女と幼児の2人で旅をしているんだろうか?


どんな容量のマジックバッグを持っているのか、それだけでもひと財産になるってもんだ。


こちとら一応冒険者のなりをしているが本業はベテランの盗賊だ、これを見逃すてはない。


仲間達5人で屋敷に踏み込もうと近づいた。


バチっと目の前が光った。


全身が麻痺して動けなくなった。


同時に意識が失われた。


「おい、おきろ。」


仲間の声に目を覚ますとお天道様が中天にさしかかって既にお昼近い。


共用の野営地にはもう誰もいない。


あの屋敷の周囲には強力な結界が張ってあって俺達はそこに突撃したってことか?


俺達は屋敷があったはずの場所で仰向けに倒れて夜明けを迎えたってわけだ。


屋敷の主は俺達に気がつきもしなかったて事?


俺達って雑魚なの?


簡易結界の張ってある野営地でなければ俺達は今頃魔獣のご飯になっていただろう。


俺達はなんだか急にやる気が失せたので隠れ拠点に帰って一杯やることにした。


「なんか昨日の夜騒がしくなかった?」


パエリに呼びかけるけど返事がない。


パエリは俺の背中に乗って居眠りをしている。


だいぶ空を飛ぶことに慣れたみたいだね。


って言うか慣れ過ぎ。


よだれを頭の上に落とさないでよ。


大森林と大草原の境界近くの集落にさしかかった。


「なんかいい匂いがする。」

パエリがくんくん鼻を動かす。


食べ物の匂いで目が覚めたの?


「鰹出汁かな?昆布っぽい匂いも。」


「お店があるよ。」


降りて見ると丼に箸のマーク。


うどん屋さんだ。


イヤーっ。

きゃー。

はなせー。


ぎゅー。


「ムール、あんた女の子に飛びかかっちゃダメじゃないの。」


ひっかかれたうえに投げ飛ばされた。


パエリが受け止めてくれたけれど。


「だってふわふわの耳としっぽが生えているんだよ。しょうがないじゃん。」


「しょうがなくない。」


ここって獣人族の里だったみたい。


オレをぶっ飛ばしたうどん屋さんの娘はとってもキュートでプリティな猫獣人族だった。


ついしっぽを掴んでしまった。


その時の彼女の身のこなしっていったら猫特有のなめらかでしなやかで素早くて美しくって。


「ぶっ飛ばされて、なにうっとりしているのよ。ヘンタイなの?」


パエリが呆れている。


さて、気を取り直して顔の引っ掻き傷はヒールで治してっと。


「キツネうどんちょうだい。」


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