第10話 帝国の陰謀

「おまえはなんだ、なぜ我々の邪魔をする?」


廃屋敷の中からいい身なりの貴族っぽい人が出て来た。


胸に勲章がごちゃごちゃついている。

コスタドガル帝国の貴族様って丸分かりだ。

誇り高い貴族様はコソコソするのは苦手のようだ。


だけどそれは言いがかり、オレ達はただゴブリン狩りに行っただけだから。


「おまえ達が何をしようとしているかなんて知らん、面倒くさいから付きまとうな。」


追跡して来ていた暗殺者の1人がビクッとする。


「レイビシ伯爵におまえって。」


あー、名前言っちゃうんだ。

陰謀を企てているって言うのにダメじゃん。


「お前のような小娘....え?」


「伯爵?何が?」


いや、しゃべってんの俺だから。


なんかみんなパエリしか見てないっぽい。


レイビシ伯爵がパエリの額に浮かぶ紋章にたじろぐ。


「あーっ。ここここれは勇者の紋章!」


暗殺者も含めて一同びっくりした。


「あーっ、あああああなた様はゆゆゆ勇者様?」


「まままままずい。撤収ーっ。」


えー。

パエリ何にもしてないじゃん。

オレは無視なん?


レイビシ伯爵一味はまさに蜘蛛の子を散らすように 誰もいなくなった。


「?。」




「ムール、お腹すいたー。」


パエリってば、そればっかり。


ちょっと行儀が悪いけどパエリはベッドの上でこっくりこっくりと半分眠りながらパンを食べている。


「寝る前に食べると虫歯になるよ。」


「うーん、眠る前に口を濯ぐ。」


夜中に起こされたんだから仕方ないね。



「オレさー、今朝方さー、怖いもん見ちゃったんだよー。」


露店の準備をしている男が隣で雑貨を売っている男に話している。


「オレ最近小便が近くて夜中になんべんも起きて便所にいくんだけどよー、オレんとこ便所が離れにあってよー、外に出たんだー。」


「ふーん、歳とると小便近くなるって言うもんなー。」


「んでよー、見たんだ、あれ。」


「幽霊って言うかレイスかなー?赤い髪で、赤い目してふわふわと宙に浮いているんだけどなんかスーって路地を曲がって行った。」


「そりゃーもうぶったまげたよー。」


「おかげでパンツ脱ぐ前に小便しちゃってべしょべしょ。」


「お前も見たんかー。」


なんか2人の話しに割って入る奴がいる。


「オレもよー遅くまで居酒屋にいて帰ろうと思って扉を開けたところで見ちまった。


「なんか炎の様に赤い髪がブワーって逆立っていてよー。」


「赤い目でギローって俺を見たんだよー。」


「気がついたら居酒屋の前で寝てた。」


「夢じゃなかったんだ。」


見たんかー。


パエリが高い所は怖いって言うもんだから地面ぎりぎりの高度の飛行で宿屋に帰ったんだ。


真夜中だから大丈夫だと思ったんだけどな。


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