第9話 不穏な影

ゴブリンの巣にいた盗賊の装備を見て違和感を感じる。


きれいすぎる。


持っている剣が上等すぎる。


盗賊風の服の下に着込んでいる帷子に貴族の紋章が入っていたりする。


なんでかよくわからないがどこかの国の兵士がゴブリンを装っているって事か?


だけど、それはムールには関わりの無い事。


捕まっていた人を解放して村に戻る。


あとは村の自警団に任せる事にした。


「ムール、ご飯は?」


パエリはいつも食べる事しか言わない。


「パエリのインベントリにパンをいっぱい入れただろう?お金もあるはずだし?」


パエリのメニュー画面を見るとどっちも無い。


「あ?あれっ。どこにやったの?」


「村のはずれの集落に子供がたくさんいたからあげた。」


うーむ。


パエリが嬉しそうにしているからいいか。


「じゃあフエツの街の食堂に行こうか?」


「お肉食べていい?」



来た。


多分ゴブリンに化けていた奴らの一味だろうか?


パキッと瓦が欠ける音がした。


深夜、屋根の上に着地した奴らがいる。


兵士がゴブリンのフリをしていたことを知られたくない奴らだ。


パエリはいつの間にかオレを抱き枕にして寝ている。


猫やぬいぐるみじゃないって言っているのに。


宿屋の中での戦闘は他の宿泊客を巻き込む恐れがある。


パエリの腕を掴んで持ち上げて浮遊魔法で窓から外に出る。


ムールがパエリを持ち上げるというよりパエリに抱えられているように見えるのは体の大きさの違いでしょうがない。


奴らが屋根の上をぴょんぴょん刎ねてついて来る。


街の防壁を越えたところで進行方向から攻撃魔法が打ち込まれる。


挟み討ちにはまってしまったようだけど問題ない。


避けられるし、障壁が受け止めるし、この程度の攻撃ならどうってことない。


こっちからも攻撃魔法を撃ちこんでやる。


3人ほど魔法使いがいたようだけどすぐにおとなしくなった。


飛行していると目前に灯りのついていないお屋敷が現れた。

廃屋敷のようだ。

彼らのアジトってところか?


急にパエリが暴れ始めたので廃屋敷の正面に降りる。


「高い所は怖いって言ったじゃない。」


まだ眠っておけば良かったのに。


「私パジャマのままじゃない。髪の毛もボサボサだし、ちゃんと整えてからにしてくれないと。」


「そんなに悠長な暗殺者はいないよ。」


「えーっ、私達狙われてんの?誰に?」


ゴブリンに化けていた者の装備についていた紋章を見る限り帝国の兵士。


目撃したオレ達の口封じをしようとしているんだろう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る