第5話 上級冒険者

「はなしなさいよー。」


オレが少し目を離した隙にパエリがでかい男に腕を掴まれて宙ぶらりんになっている。


「孤児の女か?いい値で売れそうじゃねえか?。」


人さらいか?


「兄貴ー。こいつ売る前に遊んじゃいましょうよー。」


4人の男達が集まってくる。


「あーん、そんな事したら値段が下がるだろうが。」


パエリを捕まえている男が下っ端みたいなやつを睨む。


「おまえ、パエリをはなせ。」


ぎゃはぎゃはと男達が笑う。


「子供、おまえ誰にものを言っているのかわかってんのか?」


「心配するな、ぼうずも一緒に売り飛ばしてやるから。」


「誰なんだおまえ。」


リーダー格の男が突然剣を抜いてオレの目の前に突きつける。


「オレはなB級冒険者のキリルだ。おまえB級冒険者がどんだけ希少かわかってないのか?」


確かに冒険者の多くはC級止まりでそのC級でも希少なぐらいでB級になると世界が違う。


ただ普通ならそれなりに人格者なんだけれど。


「子供はおとなしくしていな。」


「おめーら、なにしてんだー。離してやれよー。俺らの後輩だぜー。」


さっきの2人だ。


叫びながらキリル達に飛びかかっていく。


この2人は状況がみえてないのかな?


無謀だなーとか思って見ているとあっさりキリルの剣のひとふりで吹き飛ばされてしまった。


「ふん。クズみたいな奴がなに邪魔してんだ。」


あんな人達でもオレ達を庇おうとしてくれた事にちょっと驚く。


パエリはキリルに吊り下げられたまま。


オレはなんだかムカついてきたので突きつけられた剣を手で払う。


キーンっと音を立てて剣が折れる。


キリルが目を見開く。


ぴょーんと飛び上がってパエリをつかんでいたキリルの左手親指を手刀で叩く。


親指が弾け飛ぶ。


そのままキリルの頭を踏んで飛び上がり連れの4人の頭も踏んで回る。


「ムールってすごく身軽なのね。猫みたい。」


呑気な事を言っているパエリを受け止めて着地する。


パタリパタリとキリルとその一味が倒れる。


加減はしたので死んではいないと思う。


キリルは倒れたまま動かない。


ちょっとやりすぎたのでちぎれたキリルの指を拾ってきてくっつけておく。


自称先輩がオレを見て固まっている。


「ムール、力持ちなのね。」

「でも、もうおろして。」

「幼児に抱きかかえられているっておもしろ過ぎない?」


こいつは危機感ってのが全然ないんだな。


かけつけた衛士達が困った様にオレとキリル達を見比べていた。


自称先輩の人達と近辺の露店の店主達の話しを聞いてキリル達を連れて行った。


「ムール、パンをだしてちょうだい。お腹が空いちゃった。」


まあ怖がっていないのはいい事なんだけれど、少し調子に乗ってないか?


「ムールってばー。」


お姉ちゃんが幼児に食べ物をたかるってどうなん?


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