第3話 勇者と一緒

なんだ息苦しい。


スライムに襲われているのか?


柔らかいものが顔に押しつけられている。


うう、息が、息が出来ない。


し、死ぬ。


はっと目を覚ますとパエリがオレを抱き枕にしている。


オレは床にクッションを置いて寝ていたのだがいつのまにかパエリがベッドに拾い上げたようだ。


こいつにとっては小さな子供かもしれないが中味は多分同じ年頃の思春期の男の子なんだがな?


いろいろ嬉しいが、所詮、体はちっちゃい幼児と少年の間程度なのでちっちゃなあれは役に立たない。


それどころかないのと一緒、オシッコするぐらいしか役割がない。


昨晩村の宿屋に行くと、


「あんたちっちゃいんだからお姉ちゃんと同室でいいわよねー。」


と一方的に宿の奥さんに決めつけられてしまった。


まあ、どう見てもオレの方が小さいんだけど。


部屋の鏡でこの世界に来て初めて自分の姿を見た。


金髪、碧眼、白い肌。典型的な外人だ。


見た感じ男の子なんだか女の子なんだかよくわからない。


ぷよぷよの子供。

そりゃ抱き枕にされちゃうね。


しかもこの金髪碧眼ってのはこの世界の貴族の典型的な特徴でもある。


なんとかパエリの胸を押しやって起き上がる。


「おきたの?私お腹すいちゃった。」


「なんでオレを抱き枕にしてんだよ。」


「ん?あったかいからよ。柔らかいし。」


子供は体温が高いらしいしな。


「オレはぬいぐるみや猫じゃないぞ。」


「照れてんのー?かわいいーっ。」

って抱きついてくる。


晩御飯を食べさせて、宿に泊まらせてってオレがやっているんだから完全にオレの方が保護者のはずなんだけどな。


宿の奥さんは「いいお姉さんねー。」

「お姉さんの言う事を聞いていい子にするのよー。」


って傍目からはそうとしか見えないんだ。


理不尽だ。


パエリにクリーンをかけて、髪をブラシでといてツインテールに結ってパジャマから勇者の服に着替えさせて...。


ん?オレはお母さんか?何してんだ。


とはいえ放って置けないし。


宿の食堂でパエリと一緒に朝ごはんを食べる。


もちろんお金はオレが払う。


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