第2話 俺様、目覚める
俺様がベットから勢いよく起き上がると、父さんと母さんがびっくりして目が点になりながら口をあんぐりと開けていた。
「母さん、父さん、もう心配はいらない。俺様…………いや僕はもう大丈夫だよ」
そういって俺様はその場をピョンピョンと跳ねる。
前世の記憶を思い出して俺様の体調は絶好調だ。
どんな魔法かはわからないが、俺様は生きている。
余名宣告の運命を変えたのだ。
「ガハハハハハ!」
俺様は笑いが止まらない。
医者が呼ばれおずおずと不審なものを見るような眼で医者は俺のことを診察する。
そして医者はとても驚いていた。
「驚いた…………病変がどこにもない、健康そのものです」
「そうらみたことか……熱もなければ咳も出ない。俺様絶好調だぜ!」
父親は言った。
「病気が良くなったのは良いことだが、しかしその口調……」
「あぁん?…………あぁごめん、つい嬉しくなっちゃって」
と俺様は応える。
俺は内心舌打ちする。
父親の前では一応いい子ちゃんぶっておかないとな。
母親はとても喜んでいた。
「よかったわねぇボルちゃん」
「ボルちゃん…………ねぇ」
母親には世話になっているが、母親が少々俺様のことを子ども扱いしているような気がする。
まぁ大人扱いされて働けと言われても嫌だしな。
…………だらだらする貴族生活も飽きてきたな。
俺様は貴族の三男で兄貴どもとは違って大して進路に期待されていない。
役人の下っ端が精々だろうな。
まぁ親が甘やかしてくれたから貯金というか、お小遣いはそれなりにたまっている。
まぁ一ヶ月は宿で暮らせるだろう。
「お父さん…………お母さん、決めたよ」
「決めたって何をだ」
「僕、独り立ちするよ」
「そ…………そうか!」
「あらあら大丈夫なのかしら」
「母さん大丈夫だよ。それにいつまでも家で寝ていたらごくつぶしになっちゃうよ」
「それはそうだけど、病がまた再発するかもしれないし、しばらくは安静にしたら?」
「いや、その時はその時でちゃんと自分で帰ってくるよ……僕はエルモンド家としてちゃんと自立した生活を送って父さんや母さんを安心させてあげたいんだ」
「ボルクス…………そうか、そういってくれるか」
「だからほんの少しだけ路銀が欲しいなぁなんて」
「いいわ、そのくらい私が出してあげるわ」
「ありがとう」
そういって俺はもう一か月分の宿代とお弁当をもらった。
「それじゃあ行ってくるよ」
「くれぐれも気をつけてな」
「危なくなったりお腹がすいたらいつでも帰ってきていいからね」
「あぁ…………心配しないでよ」
一応兄貴たちにも挨拶していくか。
兄貴たちは驚いたが、俺を父母同様に快く送ってくれた。
毎度の事いけ好かないイケメン面だ。
さぞかし女にもモテるんだろうな。
クソが。
うらやましいとかそんなんじゃない。
期待されている奴にだってそれなりに辛いことだってあるかもしれない。
だが、心の奥底で俺のことを見下しているのはよくわかる。
時折、兄の口から俺の陰口が聞こえてきたからだ。
俺様のようにいい子ちゃんぶっているのがはた目からみればバレバレだった。
そういえば家に引きこもって学校にもほとんど行けなくて試験だけで一応合格扱いになったんだっけ。
余命僅かな俺のために特別措置として筆記試験だけで卒業ができた。
おかげで俺様は楽しい楽しい学園生活すらままならずに彼女との出会いや友人すらできずに名前ばかりの学校を卒業したのだ。
まぁそれなりの成績で合格したからその点は問題ない。
それ以外やることないから猛勉強したんだ。
人生最後の学校の成績が底辺だとかっこ悪いからな。
そんなことはともかく、行く当てもないしどうしたものか。
—————とりあえず、王都へ向かうか。
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