赤面令嬢はウソを吐くから幸せなのです

uribou

第1話

 僕の婚約者の名はサリー・ドリマ。

 ドリマ子爵家の長女だよ。

 とっても可愛いんだけど、本人には悩みがあるみたいで。


「ねえ、カークは嫌にならないの?」

「何を?」

「私の……赤面症」


 あっ、サリーが赤くなった。

 サリーは恥ずかしがりで、他人と話すのは苦手だ。

 比較的女性とは話すけど、家族と僕以外の男性とは話せないんじゃないかな。

 そんなところも可愛いのになあ。


「嫌じゃないってば。むしろいいところだってば」

「何がいいのよ」


 何って、サリーみたいな可愛い子が僕以外の男と話さないんだよ?

 最高じゃない?


「こんなんじゃ社交も覚束ないし、本当に私はダメダメだわ」

「そんなことないって」

「あるわ。カークは嫡男なのに申し訳なくって」


 確かに僕はベインズ子爵家を継ぐ身だけれども、関係なくない?

 社交を重視してない貴族なんていくらでもいるよ。

 もっと言えば僕は社交が苦ではないし、補い合えばよくない?


「サリーは絶対社交がムリってわけじゃないじゃん」

「まあ……そうだけど」


 サリーは魔女なのだ。

 魔女とは人間の古い形質が色濃く出た、特有の異能を使える者のことで、女性に稀に現れる。

 過去には魔女は人に不幸に陥れるなんて迷信が信じられていた時代もあって、現在でも魔女嫌いの人はいる。

 でもサリーを見れば、魔女だって普通の女の子だとわかるのにな。


 サリーはウソを吐く魔女なんだそうだ。

 例えば僕も見たことがあるけど、赤面症じゃないというウソを吐けば、その日一日は自由に人と喋れたりする。

 とすると恥ずかしがりというより、むしろ顔が赤くなるから他人と面と向かって話せないということなのかもしれない。


「でしょ? 気にすることないって」


 サリーが可愛いのは変わらないって。

 もっとニコニコしてて欲しいよ。


 ――――――――――サリー視点。


「でしょ? 気にすることないって」


 カークは優しいからそう言うけど。

 私自身が前に進まなきゃダメなんだとわかってる。


「はあ……」

「眉毛が下がってるサリーもいいけどさ。ニコニコしてる方が可愛いと思うよ」

「……そうね」

「そうさ」


 確かに自己否定的になるのはよくないかも。

 私は『否定の魔女』なのだし。


 カークは知らないはずだけど、私の魔女の能力には制限があるのだ。

 制限の一つは、自分の認めているものにしかウソを吐けないということ。

 だから赤面症をウソで誤魔化すのはよくないのだ。

 何故なら赤面症であることを認めていなければウソにできないから。


 つまり赤面症をウソで覆い隠していては、結果としていつまで経っても赤面症を克服できないことになる。

 私のウソには一日一回という制限もあるしなあ。

 やっぱり素で赤面症じゃなくなるのが一番なんだけど……。


「うん、笑顔でいることにする」

「うん、可愛いよ」


 カークも笑ってくれた。

 嬉しいな。

 肯定的に生きるというのは、一つのヒントのような気がする。

 私自身『否定の魔女』なのに変なのとは思うけど、能力に頼ってばかりだと能力に溺れることにもなりかねないよね。


「ねえカーク」

「何だい?」

「ありがとう。好き」

「ストレートに来るなあ。僕もサリーが好きだよ」


 もう、顔が赤くなっちゃう。

 カークはいつもニコニコしていて、淑女として不合格の私を決して責めたりしないのだ。

 本当に救われている。


「赤くなったサリーも好き」


          ◇


「いやあ、『否定』のが仲間になってからはありがたいね」

「どうも」

「相変わらず無愛想だねえ。でもいいよいいよ。あんたは可愛いからね」


 『氷結』の魔女が寛いだ様子で言う。

 今日は魔女子会なのだ。

 要は魔女の親睦会みたいなもの。

 貴族の私が魔女連に入ってからは、うちの屋敷で魔女子会をすることになったのでありがたいんだって。

 貴族の屋敷なら魔女が集まっててもガタガタ言われないと説明されたけど、単にクッキーやケーキを食べられるからだと思う。

 『氷結』さんは甘党。


 えっ? 魔女は国中バラバラに、基本的に気ままに暮らしているよ。

 何でうちに集まれるかって?

 それは転移できる『跳躍』の魔女がいるから。

 世話好きの『跳躍』さんが皆を集めてくるのだ。

 『跳躍』さんがいるから魔女子会が成り立っているようなもん。


 しかし今日の魔女子会は特別だ。

 今日の参加メンバーの内、一人を除いてそれをわかっている。

 皆やや皆緊張気味だ。

 リラックスしているのは『氷結』さんくらい。


「『否定』ちゃん、大丈夫?」

「大丈夫です」


 『早耳』の魔女が心配そうに声をかけてくる。

 大丈夫だ。

 私にしかできないことだから。

 問題の人が来た。

 『氷結』さんが気安げに声をかける。


「よう、『時戻』の。元気かい?」

「ええ、お久しぶりです、皆さん」


 『跳躍』さんが今日最後のメンバー『時戻』さんを連れてきた。

 『時戻』さんは文字通り時間を巻き戻せるという、すごい力を持った魔女だ。

 しかし……。


「あなたなんか魔女じゃないっ!」

「な!」


 私は『時戻』さんが魔女であることを否定した。

 これで『時戻』さんは今日一日、魔女の力を使えない。


「ひ、『否定』ちゃん、何てひどいことをするの!」

「おい『時戻』。お前『災厄』の魔女とグルだろう?」


 『氷結』さんの言葉に『時戻』さんが絶句する。

 『災厄』の魔女は隕石を落としたり津波を起こしたりなど、大規模な魔術をいくつも使いこなすという最悪の存在だ。

 自分勝手で魔女子会にも来たことがないから、私も知っているというだけだが。


「そ、そんなはずがあるわけないでしょう」

「ネガティブ」


 『真実』の魔女がウソと断じた。

 ならば『時戻』さんは『災厄』の魔女の仲間だ。

 『氷結』さんが続ける。


「お前、『災厄』の言いなりになって、既に一度時間を巻き戻しているだろう」

「やってないわ!」

「ネガティブ」

「くっ……ええ、巻き戻しているわ。だから何なの?」

「お前は知らなかったかもしれないが、巻き戻す前のことも『記憶』の魔女は覚えているんだよ」

「え?」


 愕然とする『時戻』さん。


「『災厄』のやつが世界に大被害をもたらす悪さをしたことを知ってるんだよ。挙句の果てに死んだから、お前が時を巻き戻して生き返らせたってこともなあ!」

「うっ……」


 最初に『災厄』の魔女について問題提起したのは『記憶』さんだった。

 『災厄』の魔女が一度世界を破滅させかけたが滅ぼしきれずに死に、『時戻』さんによって時間が巻き戻された。

 『災厄』の魔女は生き返ったから、もう一度同じことをしてくる可能性が高いと。


 『真実』さんが『記憶』さんの言うことを本当だと認めた。

 『映写』さんが『災厄』の魔女が暴れているという、時間巻き戻し前の『記憶』さんの記憶を皆に見せた。

 『早耳』さんが『災厄』の魔女の計画の、確度の高い噂を皆に伝えた。

 『時戻』さんは敵だ。


 もっとも『記憶』さんによると、巻き戻し前の世界で私は死んでいた。

 生き返らせてくれた『時戻』さんに恩がなくもない。

 ちょっと複雑。

 

「最後に言い残したいことはあるか?」

「……あなた達は強い力を持ちながら、それを誇示しないでいいの? 私達は魔女優遇の世界を作るの!」

「……ポジティブ」

「身勝手な理想を掲げて殺し回ることがいいとでも思ってるのかい?」

「理想のためならしょうがないじゃない!」


 ふう、とため息を吐く『氷結』さん。


「あたしは『災厄』とは腐れ縁だ。お前より『災厄』と付き合いがずっと長い。『災厄』のことをよく知ってるから言うけどよ。あいつに理想なんかありゃしねえぞ?」

「え? どういう意味……」

「お前は『災厄』に騙されて利用されたんだよ。あいつはただの愉快犯だ」

「ポジティブ」

「ついでに言うと、『災厄』はお前のことを都合のいい道具としか見てねえ」

「ポジティブ」

「そ、そんな……」

「アイススタチュー!」


 『氷結』さんの魔法により、瞬時に『時戻』さんが氷漬けとなった。

 苦しまずに逝ったろう。

 念のためと称して『氷結』さんが首をポキっと折った。

 『時戻』さんの頭が転がる。

 凍ってると血が流れないから、片付けが楽でいいな。


「『否定』ちゃん、よくやったわ」

「うん」

「本番は明後日だぞ」

「わかってる」


 明後日、『災厄』の魔女が王都に現れる。

 『災厄』を仕留めないと、世界が滅びるかもしれないのだ。

 緊張する。


「手筈はいいな? 魔女連は全員王都に潜む。しかし『災厄』のやつに気取られると逃げられちまうから、合図があるまでは隠れたままだ。合図は『伝令』が担当する」


 皆が頷く。

 『伝令』さんは仲間に連絡を伝える能力を持っている。


「『災厄』は『否定』を知らねえ。『跳躍』が『否定』を『災厄』の近くに飛ばし、『災厄』の魔女の能力を否定すれば勝ちだ」


 『氷結』さんの言う通りだが、私もまた『災厄』の魔女を知らない。

 認識が甘いとウソを吐けないのだ。


「『否定』がダメならあたしが出る。皆は各々の能力であたしをサポートするなり、『災厄』を逃がさないようにするなりしてくれ」

「「「「「「「「了解」」」」」」」」

 

 『跳躍』さんが心配そうに話しかけてくる。


「『否定』ちゃんみたいな概念を扱う能力は強力だけど、制限も大きいんでしょ?」

「まあ」


 一日一回しか使えないし、対象をしっかり認識しないといけないし。


「様子見てるね。ムリそうならすぐ『否定』ちゃんを連れて離脱するから」

「お願いします」


 さて、決戦間近だ。

 どうなることやら。


          ◇


 ズゴオオオオオオオオオオオオン!


「あはははははは!」


 『災厄』の魔女の高らかな笑い声と、王宮を吹き飛ばす一撃で運命の日は幕を開けた。

 しかし人的被害はほぼないはずだ。

 何故ならば……。


 『氷結』さん曰く。


『『災厄』は承認欲求強めのバカだ。一番目立つ王宮を壊そうとするに違いないぜ』


 『記憶』さん曰く。


『時間の巻き戻し前、『災厄』は真っ先に王宮を標的にしました。今回もまず王宮を狙おうとするのでは?』


 アドバイスに従い、王家の方々や王宮で働いている方々は既に避難している。

 『災厄』の魔女がおかしいと気付かぬ内にやっつけないと。


「『否定』ちゃん、彼氏さん、行くわよ」

「「はい」」


 『跳躍』さんにより、『災厄』の魔女に普通の声が届くくらいの距離に転移させてもらう。

 何故かカークも連れてってくれと強硬に主張したので、一緒だ。

 危ないので隠れててもらうけど。

 ……心強いと思ったのは内緒だ。


 物陰から『災厄』の魔女の前に姿を晒す。 


「王宮はあなたが壊したの?」

「……あら、どこから出てきたの? そのまま隠れてた方が賢くてよ」

「この爆弾魔め!」

「あはははははは! 私は『災厄』の魔女! 王宮を破壊するのに爆弾なんか必要なくてよ」


 一応名乗りを得た。

 しかしまだ魔女の確証を得られていない。

 認識度合いは足らないと思う。

 もっと決定的な証拠を……。


「魔女? 私の知っている魔女は親切だわ。ウソを吐いてるんでしょう!」

「ウソ? 誇りある私がウソ? あなた、面白いことを言うのね」

「冗談は苦手よ」


 『災厄』の魔女とは初対面だ。

 けど気が高ぶってるからか、イケる、喋れる。


「あなた、貴族なんでしょう?」

「そうよ」

「わたしは貴族が嫌いなの。お望み通り魔法を見せてあげるから死になさい! 不可視の斬撃!」


 どんと突き飛ばされた。

 助かった?

 あっ! 『跳躍』さんが倒れてる!


「あはははははは! 『跳躍』の魔女! あなたが助けようとするかもとは思ったわあ。見事に引っかかってくれちゃって!」

「だ、大丈夫。私は浅傷よ」

「あはははははは! いかに転移だろうと、この距離じゃ逃がさないわよお。仲良く死になさい!」

「あなたは本当に魔女なのね?」

「魔女よお。今の不可視の斬撃を見たでしょう?」

「見えなかったわ」

「あはははははは! 見えないから不可視なんだったわ」

「でもあなたが魔女だと確信できたわ」

「だから?」

「あなたなんか魔女じゃないっ!」


 私の力ある言葉が発動する!

 驚愕する『災厄』の魔女。


「……えっ? わ、わたしの力が……。あ、あなた一体何をしたの?」

「私は『否定』の魔女。あなたが魔女であることを否定した」

「が、概念を扱う能力? そんなバカな……」

「もうあなたは能力を使えない」


 今日はね。

 今日中に処刑されろ。


「あは、あははは。概念を扱う能力なんてものが、術者が死んでまで有効であるはずはない! やっぱりあなたは死になさい!」

「えっ?」


 『災厄』の魔女がメイスで殴りかかってきた!

 何てこと、想定外だ。

 『跳躍』さんと距離が離れてしまった!


「死ねええええええ!」


 やられる、と思ったけど、打撃は来なかった。

 剣がメイスを弾き飛ばしたから。


「やあ、サリー。君のナイトの登場だよ」

「カーク! 出てきちゃダメって言ったじゃない!」

「それは魔女同士の戦闘には、だろう? もう能力の使えない、ただのおばちゃんじゃないか」

「お、おばちゃん……」


 あっ、カークの無自覚な発言に、『災厄』の魔女がメチャクチャダメージ食らってる。

 ガックリと膝をついた。


「カーク、ありがとう」

「いやいや、おばちゃんごとき僕の敵じゃない」

「おばちゃんおばちゃんって……」

「彼氏さん、そのおばちゃん縛り上げてくれる?」

「了解です。おばちゃん、縛るけど悪く思わないでね」


 勝った!

 危機は去った!


          ◇


 『災厄』の魔女による被害が最小限に抑えられたことは、魔女連の大勝利と言ってよかった。

 引っ立てられた『災厄』の魔女は、取調べに関しては何も答えなかったらしい。

 彼女が大それた事件を起こした本当の理由はわからなかった。


 『災厄』の魔女は薄ら笑いを浮かべ、処刑台まで憎まれ口を叩いていた。

 でも『氷結』さんがあるものを見せると愕然とした顔をしていた。

 氷漬けになった『時戻』の魔女の首だ。


 お前が『時戻』とグルなのは知ってる。

 『時戻』は前もって始末した、というセリフを、『災厄』の魔女はどんな気持ちで聞いていただろうか?

 そこから『災厄』の魔女は暗澹とした表情で、首を落とされるまで一言も口を利かなかった。


「やっぱりギロチンの処刑シーンは見なきゃよかったわ」

「ええ? まあ楽しいものではないでしょ」

「けじめだと思ったんだもの。『時戻』さんの首が転がった時は特に何とも思わなかったから、ギロチンも大丈夫かと……」


 全然違った。

 血は飛び散るわ臭いはひどいわ。

 『ポジティブ』と『ネガティブ』しか言わない『真実』さんが、『スプラッタ……』って呟いてたくらいだからね。

 『氷結』さんと『記憶』さん以外は、皆気持ち悪そうだった。


 陛下に褒美をやろうと言われた。

 これは何をもらうか、事前に魔女連の皆さんと決めていた。


「新しい王宮を建てる時に、魔女の部屋を作ってもらうんだって?」

「魔女子会を開くためのね」


 十把一絡げに魔女と括られて、『災厄』の魔女と同一視されても困る。

 魔女連は王国に協力的ですよ、ということを見せておかなければならないのだ。

 今後は魔女子会を王宮で開いて、怪しいことはやってないですというアピールをすることになる。

 ちょっと窮屈になるかなあ。

 いや、『氷結』さんは王室御用達の菓子が食べられるぞと、大喜びしてたけど。


 王宮を新たに建てるって大変だなあと思ってたけど、老朽化が進んでたので、早晩建て替えなきゃならなかったんだって。

 解体費用が安く済んだと、陛下が笑っていらした。


「カークも変でしょう?」

「褒美のことかい? いや、一番欲しいものだから」

「もう、カークったら」


 『災厄』の魔女を捕らえたカークは一躍時の人になった。

 そしてカークが望んだ褒美は、私との婚約継続だったのだ。


「魔女が白眼視される可能性は、魔女連でも理解してただろう?」

「もちろん」

「当然サリーとの婚約がパーになる可能性だってあったから」

「……もしかしてカークが『災厄』の魔女との決戦についてきたがったのも?」

「僕が何らかの爪跡を残せれば、魔女達と協力して『災厄』の魔女をやっつけたという実績が生まれる。イコール僕の発言権は増すからね。『災厄』の魔女を捕まえるのに役立ったのはでき過ぎだったけど」

「カークのおばちゃん呼びは、『災厄』に一番ダメージ与えてたわよ?」


 アハハウフフと笑い合う。

 当然カークと私の婚約継続は許された。

 危機が去って平和になったことを実感できるなあ。


「貴族に魔女が生まれたのはターニングポイントだと思うんだ」

「カークの言う通りね」


 どうしても魔女は胡散臭いものと思われていた。

 過去には魔女狩りがあり、また魔女の反逆があった。

 『災厄』の魔女も昔は見境のない人じゃなかった、と『早耳』さんが言っていた。

 魔女でない者を憎むようになった、何らかの変化があったんだろうけど、私はそれを知ろうと思わない。

 不幸な歴史は終わり、王国と魔女連の協力の時代が訪れようとしているからだ。


「サリーを見れば、魔女ったって可愛い女の子だってわかるからね」

「もう、カークったら」

「陛下の前ではちゃんと喋れてたよ」

「だって……」


 魔女連の中では私が最年少だけれども、一番身分が高い。

 私が代表して報告するのが筋だった。

 ここで私がくじけると、魔女の皆が誤解されるかもしれなかったのだ。

 『災厄』の魔女に勝ったという高揚感もあった。

 必死だった。

 それに……。


「側にカークがいてくれたから」

「ハハッ、サリーは立派だったよ」

「本当?」

「本当さ」


 でも顔は真っ赤だったろうなあ。

 火照ってたのは実感してたもん。


「サリーは色白だろう?」

「えっ? うん」

「色白な人が上気すると頬が赤くなるのは当たり前なんだよね」

「かもしれないけど、私は顔全体が赤くなっちゃうでしょう?」

「子供の頃は確かに顔全体が真っ赤だったけど、最近はそうでもないよ」

「えっ?」


 子供の頃と今って違うの?

 気付かなかった。


「ずっとサリーの赤い顔を愛でていた僕が言うんだから間違いない」

「愛でていたって……」

「赤面症は気にし過ぎだと思うよ。化粧すればわかんないレベルだと思う」

「どうして教えてくれなかったの!」

「だって僕はサリーが恥ずかしがって赤くなるの、可愛いから大好きだし」


 そうだった。

 昔からカークは私のことを可愛い可愛いって言ってくれる。

 気にするなとも言ってくれてた気がする。

 あれえ? 私が苦手意識に甘えてただけ?


「……カーク、いつもありがとう」

「どういたしまして。僕の可愛い魔女さん」


 カークが私のおでこにキスを落としてくれた。


「うん、やっぱり赤い顔のサリーは最高だな」

「カークのバカッ!」

「ハハッ、ごめんよ」


 カークに軽く抱きしめられる。

 顔赤くなっちゃってるだろうけど、これは当たり前だからいいんだわ。

 気にしない気にしない。


 カークと私は、魔女と協力する王国のあり方の象徴となるだろう。 

 信頼によって結びつく未来はもうじきだ。

 王国と魔女連も、カークと私も。

 これからもどうぞよろしくね。

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