ギャンブルで破産した俺が人生30年のやり直しで資産1兆円の現代ドリームを実現する

@lovemoney

第1話 破産

人生とは上手くいかないもので、俺は今、死にたい状況に追い込まれている。

これまでは有名な外資に勤めており、年収は楽に5千万円は稼げていた。それなのに明日からは無収入だ。手元には500ドルばかりの紙幣と凍結されたクレジットカードとキャッシュカードしかない。


なぜこんなことになったのか。

出来心で始めたギャンブルが全てを狂わせていた。

最初は些細な暇つぶしだった。

土曜の夜、西海岸の大都市の郊外にある行きつけのバーで友人らとほろ酔いで談笑していた時に話しかけてきた男がいた。

男はバー<<セブン>>の常連だった。

「ところでお兄ちゃんみたことあるな?有名人か?」

「あー、よく言われるけど、俺は一般人」

「そうか。実はちょっとしたお遊びがしたいんだが、人数が足りなくてな。そちらのお仲間でイスラム教徒はいるかい?」

「いや、いないよ。全員プロテスタントさ」

「それなら良かった。実はテキサスホールデムのプライベートルームのメンバーが足りなくてな、お兄ちゃん達、羽振りも良いし頭も良さそうだ。カードゲームに興味は?」

「遊びで時々。いや、確かに儲かってはいるけど、プライベートルーム?掛け金が高すぎるだろ?」

「普通はな。今回は俺らの仲間内で遊ぶのが目的だからレートは普段より下げるしある程度はこちらで持つよ。それ以上は自分で払ってもらう。勝ち分は全部持って帰ってくれて構わない」

「レートは?」

「25-50、ノーリミテッド。バイインは全員1万ドルスタートでどうだ?」

「高すぎる。素人が1晩で遊ぶ額じゃないだろ?」

「バイインはこちらでもつ。3人分だから3万ドル。巻き上げる気はあるけど、返せなんて言わない、神に誓って」

「マイク!ホセ!どうるする?俺は構わないが、明日早いなら断るぞ」

「健全なカードゲームだろ?せっかくだしお邪魔しようぜ」

「OK、時間だけ決めよう。そのプライベートルームはここから近いの?」

「テーマパークよりは遥かに近い。ここから車で10分のお庭さ」

「あぁ、あそこのカジノ?それならAM2になったら帰るけど、問題ない?」

「オッケー決まりだな!配車をした!お迎えが来たら全員で移動しよう!悪いなマスター、こいつら借りてくぜ!」

「商売上がったりだよ」


これが俺と奴の出会いだった。

その日は7人で卓を囲み、自己紹介とバカ騒ぎを繰り返しながら結局朝まで遊び倒した。最初こそバイインの半分まで削られたものの、終わってみれば3人全員がプラス。勝ち過ぎない程度に盛り上がった良いギャンブルだった。



それからはギャンブル仲間として認識され、よくカジノで会うようになった。

スロットにブラックジャック、ドッグレース。カジノ内にはギャンブルが揃っていた。慣れてきたころに少しずつ負けが嵩み、レーティングへの慣れからアドレナリンが足りなくなった。


「どうした?不景気な顔して」

「最近負けっぱなし。大した金額じゃないけど、面白くはないな」

「負けてる時なんてそんなものだ。気分転換にここ以外の場所はどうだ?」

「どこ?」

「ステイプルズセンター、その前に1カ所寄る」

「分かった、ブッキーだな?」

「大当たり。スポーツは現地で見た方が面白いだろ?」

「それはそう」

「ゲームの勝敗の他に、選手のスタッツも賭け対象」

「とんでもないな、いつ行く?」

「当日券がまだ余ってるみたいだ。すぐ行こう」


知っている選手のスタッツを予想して、大勝ちした。

負けが一度に全部消えて尚、余りある。数時間前とは別人のように最高の気分になった。


こうして道を踏み外した俺は、どんどんギャンブル沼にはまった。

-1が発生したら、2を賭けて。

-3が発生したら、6を賭けて。

-9が発生したら、18を賭けて。

賭けて賭けて賭けて賭けて賭けて賭けて賭けて。

いき行きつく先は違法賭博だった。そもそも自分たちの街ではスポーツ賭博は違法だった。だがそれは州によっては違法とされる大麻程度の扱いで誰もがみな楽しむ娯楽だった。


本当の違法賭博はその先にあった。カジノでは現金かクレジットカードでしか遊べない。仲間内の貸し借りはあっても、カジノにツケなど存在しないのだ。

だが違法ブックメーカーでは違う。社会的信用を担保に、掛け金の上限は定められてなどいなかった。


目の間のどこまでも誠実そうなディーラーはベット金額を丁寧に復唱した。

「300万ドルをアウェイに賭ける。宜しいですね?」

「Yes」


こうして俺は賭け事で破産した。

借金で首が回らないことがバレて、社内規定に接触し解雇された。その情報が銀行やカード会社に知れ渡り、一気に使える金がなくなった。

助けようとしてくれた友人の金も使いこんで、本当に馬鹿な真似をした。家族に合わせる顔がない。


どうしてこんなことをしてしまったのか?

どこかでやり直せる機会があったら、もう二度とこんなことはしないと誓える。

自分は間違えたことをした。後悔と自責の念。責めるべき相手はほぼいない。違法ブックメーカーを紹介してくれた奴だって友人として接してくれただけだった。


どこか自分を知らない人達に囲まれてやり直そう。

手元のお金を使い切る前に移動して、皿洗いから再就職だ。

モーテルに持ち込んだウィスキーを煽って、そのまま意識を手放した。

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