第14話 お姫様と仲良くなったかも?
「わたしの誕生日にも関わらず、縁戚の者がお見苦しいところをお見せいたしまた。よろしければ、まだお時間がありますので、楽しんで下さい」
わたしはそう告げて一礼すると、傍にいるご令嬢に話し掛けられた。
「まあ、どこの家でも、一人や二人、ああいった弁えない者がおりますわ。ヴァルトレード様お気になさらず」
ハウゼンベルグ公爵令嬢が声をかけてくれた!
王家傍系のお姫様だ。
いやいや、お恥ずかしい。
金髪に青みがかった菫色の瞳。母上と同じだ。王族の色だなあ。
「ヴァルトレード様のドレスは、クリスティーネ様のお見立てなのですか?」
「はい」
取り繕ってももう遅い! かもしれないけど、一応、お貴族のお嬢様らしくおしとやかモードでお返事する。
相手は王家傍系の生粋のご令嬢だからね。
お声をかけてもらえるまではこちらからお声はかけられないのよ、主催でも。
「やっぱり! 素敵ね」
馬子にも衣裳でーす。
母上のセンスがいいのは、確かなんですけれどね。
「ハウゼンベルグ公爵令嬢にお褒めいただき恐縮です」
「でもやっぱりハイドファルトなのよね」
え、この人からもディスられちゃうの?
「いきなりの魔法実力主義を証明するため『黒き聖域の森』へ行こうなんて仰るんですもの。さすが次代のハイドファルトですわね」
別に貶したりってわけではないのか……な?
「『黒き聖域の森』に臆せず足を踏み入れる者こそ、当主のあるべき姿――ハイドファルト家らしいですが。多分、さきほどのご令嬢のように古臭いとか否定的な意見を述べる方は、たいした魔力は持ち合わせてはいませんよ」
側にいるアッシュクロフト公子は溜息まじりにそう言った。
「王都の魔法学校に行ったらちょっと苦労するだろうね」
「そうね」
どういうこと? 学校に行ったら苦労するとは。
「王都の魔法学校では、年に一回、このハイドファルトの『黒き聖域の森』での討伐が行われるのです」
アルフォンスがそう耳打ちする。
え、そうなの? なんでアルフォンスが知ってるの?
その言葉が顔に出ていたみたいで、アルフォンスは笑顔で答える。
「ヴァルトレード様が来年入学されるのです。お調べしました」
「どうやって」
「この城下町にいるハイドファルトの傍系の方にも、魔法学校の卒業生がいらっしゃいましたので」
あ、なるほど、そういう人もいたのか。
庶民でも魔法持ってるハイドファルトはノイマン王国の魔法師団への就職とかもできるので、魔法学校からスカウトがくるんだって。
「でも、魔力を持たない者は、それなりの、立ち回りをするのですよ。現状、ヴァルトレード様にお声をかける女子がいないのは、そういう証拠です」
うーん。
「どうします?」
どうする言われても……なあ。
「特に何も?」
ガブリエーレ様とノアベルト様は顔を見合わせる。
「先ほどの様に、別にわたしに直接何か暴言を吐くとか、無礼を働くとかしたわけではありませんし……」
「でも、そういう者は自分が常に上に立たなければ気が済まないのよ? 絶対に噛みついてきます」
「でしょうね、そしたら遠慮はしませんよ。これでもハイドファルト家の次期当主なので頭の悪い犬は厳しく躾け直さないと」
拳で殴り合いましょうではなく魔法でカタつけましょうになる。
だってここはハイドファルトだし。
当主の座が欲しくば、魔法でガチンコじゃないの?
こんなことを考えるから脳筋(魔法バカ)とか評価されちゃうんだろうけどさ。
でもハイドファルトの土地だから、これは仕方ない。
「かなり過激な方なのね、ヴァルトレード様」
「噛みついてきた犬を躾けるのは当たり前では? ハウゼンベルグ公爵令嬢はそういった輩にもご慈悲を?」
「気に入ったわ。ガブリエーレよ、エーレと呼んでもいいわ」
王家傍系お姫様から愛称呼び許されるとか、いいのだろうか。
「入学が楽しみね。是非、私と一緒に生徒会に入りません?」
「いいね、俺も推薦する」
「生徒会ですか……」
「めんどくさ~って顔してらっしゃるわね。隠しもしないなんて」
「ガブリエーレ様には気を許していると思っていただければ」
「ふふ、まあ、いろいろ特典はあるのよ?」
「たとえば?」
「ありきたりだと、学生寮の入寮免除とか。タウンハウスからの通学が可能なのよ。わりと強制的に入寮させられるけれど、生徒会員って意外と卒業された方との連絡も密ですからその都合で」
むむ。それはちょっといいな。
魔法学校入学で寮生活ならアルフォンスと離れ離れじゃない?
「あとお付きの侍女や執事を一名だけなら、学校にも入れられるし」
ナ、ナンダッテー!
ちょっとそれおいしくない⁉
いや、「侍女や執事がいないと~あたくし、なにもできいなの~」って人じゃないけれど、アルフォンスが一緒とか何それ、嬉しい。
わたしはアルフォンスを見ると、アルフォンスも嬉しそうに笑顔を浮かべてくれる。
えー一緒に行こうよー。その幻影魔法で、わたしと同じ年ぐらいに化けて、もう執事じゃなくて生徒でさ!
「あと、やっぱり、王都の情報は入るわよね。娯楽やグルメだけではなく――各お家の事情なんかも」
う……アルフォンスの実家を探すのにいいかもしれない……。
アルフォンス本人がそこから逃げてきたっていう可能性も高いんだけどさ。
そしたらずーっとうちにいてくれていいんだけど。
万が一、わたしみたいに実家がアルフォンスを探してました~って可能性もなくはないでしょ? もしそうだったらご両親心配してるだろうし。(今世実体験の身です)
「それがあると社交デビューした時、追々と役立つわけだ」
ノアベルト様がそうダメ押しをする。
「か、考えてみます……」
「前向きに検討してね」
……生徒会……。
「ノアベルトはそろそろ、あちらへどうぞ」
ガブリエーレ様が視線を飛ばしたのは中央で、かなり盛り上がってるご令嬢グループだ。
「やだよ。怖いし」
うん、ちらちらと視線がうるさくなってきた。
ここは一つお願いしたいものだ。
「あらあら、将来有望なアッシュクロフト公子に怖いものなんてあるのかしら」
「女子は怖いよ。あらゆる武器を使ってくる。特に笑顔と涙は男の俺では敵わない。ガブリエーレはそれを俺に使わないから安心なんだよ」
「ふん。そんなもの、逆に貴方が装備して使わずしてどうするのよ」
「男が泣いたらちょっとアレじゃないか?」
「じゃあ、笑顔で。ほら、見本を見せてちょうだい」
ガブリエーレ様は扇でしっしとアッシュクロフト公子を追い払う振りをするが、公子はそれを諾とはしなかった。
カッコイイなガブリエーレ様。
ちょっとこの人好きだわ。
「ヴァルトレードの言うように、魔法でカタをつけるのもありです。特にここはハイドファルトだから。でもね、そうでない方法を身に着けるのも。学校で習います」
「……そうでない方法……」
「王都の学校は小さな貴族社会です。仲良しのお友達を見つけましょうとは……ちょっと違うとわたしは考えてます」
「ヴァルトレード嬢にこうして声をかけてるのは、『お友達になりましょう』ではないんだな。相変わらず腹黒いなガブリエーレ」
「あら、ヴァルトレードには『お友達になりましょう』での声かけですわ。失礼ね」
むう。
貴族家のパワーバランスが学べると、ガブリエーレ様は言いたいわけだ。
「いろんな噂を耳にしても、私は自分の直感を信じます。ヴァルトレード、仲良くしてね」
はは、姫様、恐縮です。
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うう、誰も、誰も読んでくれなかったらどうしようかと思った。
♡や☆や、ブクマありがとうございます。><
連投は明日までとなります。
もーそろそろ、マジで、別の転生令嬢にとりかからんとならんのです。
WEB投稿は。このお話がメインで進めていきます。
よろしくお願いします。m(__)m
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