第5話 祖父母と会う。
そんなわけで、おっかなびっくりの実の両親との対面でした。
両親とも号泣。
あと、アラサーになるかならないかの両親、若いわー。
この世界の貴族の結婚って若いのよ、へたすりゃ16,7で結婚出産とかさー。
婚約者なんて生まれてすぐに決まっちゃうお家もあるらしい。
だからね、先代、つまり祖父母も割と若いのよ。
ハイドファルト領でも、割と国境付近の街に隠居の館を構えてそこで暮らしているんだって。
「ヴァルトレード!」
祖父母はわたしがハイドファルト城に入って三日ぐらいでやってきた。
わたしの部屋に入るなり、おじい様がわたしを抱き上げる。高い高い~って感じに。
「わしの孫娘は絶対に生きてると信じておったぞ!」
祖父様も十歳ぐらいの子供を軽々抱っこしちゃうぐらいに若い。
対面するなり、今世の父親同様に抱っこされた。
祖母も抱っこされたわたしを見て号泣。
どうすりゃいいのよ、この状態。
視線だけはおろおろと、専属侍女となってるマリー嬢に向ける。
「先代様、ヴァルトレード様が驚いております」
「むう、そ、そうか?」
抱っこから解放されて、ようやくまともに祖父母を見上げることができた。
なんて言えばいいのかな。
初めまして? いやーうーん。お久しぶりですっていうのも十年経過してるし……。
「ヴァルトレード、このハイドファルト城に戻りましてございます」
無難……かな?
カーテシーをすると、祖父母は、また感激する。
「うむ! よくぞ戻った、ヴァルトレード!! この祖父が、今後お前にハイドファルト家について教えるぞ!」
「まあまあ、ちゃんとご挨拶もできて、なんていい子なのかしら! この子を預かっていた孤児院にはちゃんと寄付しないと!」
そうなのだ、わたしを十年預かっていたあの孤児院は、ハイドファルト家から結構な謝礼金が贈られたとか。
これで老朽化されてる教会も改築できるよ、やったね、院長、シスター。
あと孤児のみんなにも、いろいろ服とか生活用品が新たに支給されたし、年齢上の子には、いい職場の斡旋とかしてくれるらしい。
他所の領地なのに、そんなことやっていいのかなって、一瞬不安になる。
しかし、なんでもあの孤児院があった場所は、下位貴族の小領地だったらしく、辺境伯爵家からのこういったことは、瓢箪から駒というか、棚から牡丹餅というか、ラッキーみたいなものらしい。
貴族家間のギスギスが生じず何よりです。
「ここに戻って、ヴァルトレードはどうやって過ごしていたか、じいじに教えてくれぬか?」
孫といっても十歳だから、幼児とは違うのにな。
父も母もそんな感じでわたしに対応する。
失われた十年を取り戻したい気持ちなのかもしれないので、そこは指摘しない。
もっとおろおろした方が、その年齢の子供らしかったなと、その時々~例えば夜になって眠る前とか思ったりしたけど、大人しい子であれば問題なしかなとも思った。
「三日前に戻りましたので、おうちの中がどうなっているのか、マリーに案内してもらっていました」
城だしね、迷子になったら大変だしね。
「あまりにも広くて、まだ案内は途中です。それだけではなくて、このハイドファルトの城下町にも馬車で見学に行ったり、アーロンにいろいろ魔法を教えてもらったりしていました」
「ほう、勉強熱心なのだな」
「はい……自分に魔力があるのは、物心ついた時には自覚していたのですが、魔法はどうやって使うのかとか、わたしの属性はなんなのかとか、基本的なことを学んでます」
「ふむ……なるほどの、楽しいか?」
「知ることは楽しいです。でも魔法は実践も踏まえて覚えたいです」
せっかくだから使ってみたいよね。
祖父母が顔を見合わせると、両親もわたしの部屋へやってきた。
「しっかりした子だ。生まれてすぐに、とんでもない困難にあったにもかかわらず、ここまで育った。この子こそ、お前の後継に相応しいぞ」
祖父の言葉に父も同意する。
「はい、そう思います」
「きちんと育てよう、失われた十年だがその十年は無駄ではなかった、この子は自力で十年生き延び、礼儀も節度も自らで身に着けてきた。学習意欲もある。この子ならば魔獣跋扈する『黒き聖域の森』を抑えるに相応しい、魔法使いになるだろう」
しかしその言葉に反対の声をあげたのは、祖母と母だった。
「え? 姫として育てるはずでは……」
「女の子ですよ⁉ 花のように愛されるようにミドルネームをローザにしたのに!」
「は? 婿を取らせればよい! この子が当主でいい!!」
先代当主の鶴の一声。
ハイドファルト家の先代と今代の当主はもりあがり、女性陣が反対を唱える。
女の子で、いままで苦労したのだから、ここは姫として育てたいのに! とか、なんとか。
自分の両親そして祖父母、そしてお家、これが今世ではっきり判明し、わたしの中ではこれからゆっくりいろいろ異世界満喫と思っていたんだよね。
さっそく後継ぎとか嫁とかの話が出るのって、やっぱり貴族なんだなとその喧噪を見た感想だった。
その両親と祖父母のやりとりから距離を作り、マリー嬢の手を引き、部屋をそうっと出る。
「お嬢様、お傍にいないと、せっかくお戻りなったのに、また誘拐されたと大騒ぎになりますよ?」
「すでに別件で大騒ぎでしょ。それより昨日のハイドファルト城見学の続き、お願いします」
「お嬢様、使用人に敬語は使わずともよいのですよ?」
そうなんだ。
「わかった。だから、案内して、自分の住むところが、今までよりも広すぎて、知らないと逆に怖いの」
そう言うと、マリー嬢ははっと思い至るようで、頷いた。
ハイドファルト城の建物探訪を3日かけて終了し、わたしは、城下町へ出たいと希望を出した。
自分が育った孤児院の村よりも、断然都会な城下町である。
どんな店があるのか街のつくりとか、ちょっと見てみたい。
祖父が、わたしと一緒に同行してくれることになったんだけど、同行する護衛の規模を聞いて、ぎょっとした。大名行列じゃん!
「お忍びですから!」
「でも、またヴァルトレードが連れ去らわれたらと思うと、心配なのよ」
母上がその青みがかった菫色の瞳を涙でうるませる。
「ヴェルヘルムやお義父様がヴァルトレードを離さなくて、わたしは、女の子が戻ってきたから一緒に、刺繍したり、可愛い服をつくったり、お花を活けたりしたかったのに」
父上とおじい様があわわと慌てる。
この母上の涙うるうる攻撃でわたしの外出が取りやめは勘弁してもらいたいところだ。
わたしは母上にぎゅっと抱き着く。
生家に戻って、両親や祖父母との交流は微妙なものだった。父や祖父は多分わたしの魔力が自分達のものとかなり近いのを感じているからなのか、距離の詰め方がぐいぐいくるんだけど、祖母や母上はどう感じているのかわからなかったから、これまでちょっと距離があったんだよ……。
だから、こうしたいきなりのハグは効果ある――と思いたい。
一応わたしはまだ十歳の子供。
「母上、わたしは十歳です。いろいろ見て回りたいのです。お傍で育ったとしても、そろそろいろんな方面に興味が出て、ご一緒する時間が減る時期ではないでしょうか」
「だって、だって、ヴァルトレードは戻って来たばかりなのに……」
「母上にもおばあ様にも、いろいろお話するお時間もとります。本日は自分の生まれた土地がどういったところなのか見学したいのです」
「……しかたないわね……」
「母上が、いきなりもどってきたわたしを娘と思って下さったのが、嬉しいです」
わたしの言葉に、母上はめちゃくちゃ感激したようで、戻ってきたら、一緒にお部屋に飾る花を温室でえらびましょうと、約束させられた。
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新しい話をUPしても誰も読んでくれないかもしれない(´;ω;`)
とか思っていたけど、レビューとかブクマとかついてて嬉しいです(´;ω;`)
もし初見の方もよろしければ、お気軽にブクマとかレビューに☆入れてください。よろしくお願いしますm(__)m
明日も12時に……ストックないんですけど。
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