第5話
「そ……そう。ならば、あなたの要求を受け入れましょう。契約成立よ。それで、『命』はいつ、どんな方法で受け取ることができるのかしら?」
「七菊様と僕との間で契約した内容が履行されたと、僕が確認したときに『命の受け渡しの儀式』を行うことで『命』をお渡しいたします」
「『命の受け渡しの儀式』って、いったい何なのよ?」
「先刻、僕が七菊様にお見せしたでしょう?」
「ちょっ……もしかして、その拳銃で自殺することが『命の受け渡しの儀式』なの?」
「そのとおりです。この|
「そ……そう。わかったわ。わたくしには九賀野家を背負う人間としての使命がある。今、くだばるわけにはいかないのよ」
七菊は、覚悟を決めるため、自分に言い聞かせた。
「それと、七菊様」
「何?」
「念のためお伝えしておきますけど、僕、男の子ですから。良かったら、触って確認してみますか?」
そう言って、少女、もとい、少年はスカートの裾をたくし上げた。七菊は、手で顔を覆った。
「おやめなさいっ。はしたない。あなたが男児だとは俄かには信じがたいことですが、信じましょう。では、なぜ、そのような女児の恰好をしているのです?」
「一般的な男児の服より女児の服の方がしっくりくるからです。まあ、女装は趣味ということにしておいてください」
「わかりました。それと、あなたをお父様たちに会わせるときに名前がないと困ります。何と呼べばいいのかしら?」
「それもそうですね……それでは、僕のことは『
こうして、七菊と零の摩訶不思議な物語は幕を上げた。
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